逃げていたのは私だった
本日4回目の投稿となります
階段を降りようとした時に腕を掴まれた。
「ちゃんと話をする前に何故逃げるんだ」
ブルーノの声に私は立ち止まった。
振り返る勇気がない。
「俺の気持ちを弄んでいるとしたら、メイベルよりもスズの方がタチが悪い」
「……この世界の男性は基本的に距離が近いのかと……」
「そんなわけないだろう?スズの世界では、未婚なら何をしてもいいのかもしれない。でも、この世界ではちょっと違うんだよ」
私の世界だって違うけど、過去に合コンの話をして誤解させているのかもしれない。
ごめんなさい。
「好きだと思わないとキスしないし、第一こんなに大切にできないよ」
そう言って後ろから抱きしめられた。
「メイベルは一国の王女の立場にある。だから、スズは王女なんだ。そんな相手となると簡単にはなんでも進められなくて曖昧な態度を取ってしまった」
「えっ?立場の問題?」
私は小さな声で言った。
「ああ。外交問題だよ。この前、スズに好きだと伝えたけど、君は次の日何事もなかったかのように過ごしたね」
……いつも酔っていたからわからない。
そんな自分勝手な部分にまたガッカリする。
「ごめんなさい。お酒を飲むと記憶が……」
そういうと、ゆっくり手を離してくれたので、ブルーノと向き合った
「好きだよ。なかなかスズには伝わらないのかもしれないけど」
「そんなことない。私も好きだよ」
「今日から禁酒だね」
そう言われて優しくキスをくれた。
「ここから先は外交問題だから手を出さないよ。ただ、毎日、抱きしめて寝たい」
「うん」
そう返事をするのが精一杯だった。
誰かに愛を告白したのは初めてだった。
鼓動が早くて自分じゃないみたい。
幸せすぎて泣きそう。
「聞きたいことがあるの。……緑の髪の綺麗な女の人と宝石店を出入りしてたよね?……それからホテルに入って行ったのを見たんだけど……」
ここは確認しておかないと。
意を決して聞いた。
「彼女は部下だよ。宝石商に顔が効くんだ。だからメイベルの無くなった指輪を探していた。もしかしたら、指輪を解体して宝石だけでも売りに出ている可能性もあると思って」
「わかった。それは信じるわ。じゃあホテルに行ったのは?」
「彼女は宝石商に橋渡しをしてくれる。その報酬が毎回、豪華なディナーなんだよ。これは彼女の希望だ。スズ以外、目移りはしないよ」
そう言ってまたキスをされた。
疑わずに信じたい。
「一国の王女であるメイベルに結婚を申し込む方法を模索中だから、待ってほしい。真偽はわからないが、メイベルには婚約者がいたとかいないとか。よくわからないんだ。あまりにも王女としてのデーターが少なすぎて」
「うん。待ってる」
「その表情、可愛すぎるよ」
この日から、ブルーノに抱きしめられて眠る事にした。
ちょっと筋肉質のブルーノの体温が伝わる。