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恐怖の贈り物

本日2回目の投稿です

可愛らしいホテルの制服を着た女性がスイートルームまで案内してくれた。


部屋ではコリンヌが慌ただしく働いていた。


「2人ともちょっと待ってて。まだ書類が!」

「コリンヌ、企画書の写しを。それから、決算書に署名したから急いで送ってくれ!」

カーネギー氏の声が聞こえる。

「はい!ただいまやります」


すると、主賓室からカーネギー氏が慌ただしく出てきた。

「今日はそこまでしたら終わりだ。私はパーティーに行ってくる。パーティーを途中抜けて戻ってきて、残りを仕上げる。君は終了してくれ」


カーネギー氏は燕尾服に蝶ネクタイをしている。先程見たイデオン・サーストンより背が高くスタイルがいい。

確かに結婚したい男性ナンバーワンだ。


私達を見るとにっこり笑った。

「2人とも、ゆっくりしていけばいいよ」


私はカーネギー氏は、私たちの視線が服装に行っている事に気がついたようだ。

「今日はこのブラクストンホテルのパーティー会場で、アバーエフの祝賀会があるんだよ。先日のポロの国内リーグで優勝したからね。カーネギー産業はスポンサー企業なんだ」


アバーエフ、アバーエフ……。

イデオン・サーストンの所属するポロチームだ!

だから、このホテルに居たんだ。


ライザは何も言わず黙っていた。


コリンヌは部屋から出てきてドアを開ける。

「いってらっしゃいませ」

そうにこやかに言うと、カーネギー氏も優しく微笑んだ。

「行ってくる」

そう言って、コリンヌの頭をポンポンと撫でてエレベーターへと向かった。


「なんだか秘書とボスって感じがする!仕事中のコリンヌってカッコいい」

ライザが言った。

その顔を見て少し安心する。


「お土産を持ってきたの」

そう言ってクラッチバックから野菜を出したらコリンヌが笑い出した。

「さすがに、野菜の入った袋を持ってホテルの中をうろつくわけにはいかないでしょ?」

ライザは真面目な顔をして言ったので、私も笑った。

「ねぇ、コリンヌ。料理を教えてくれない?」

そこからライザの提案で私達は料理をした。


私はハンバーグを作る事にした。

「へえ!ミートパテは作るし、肉団子も作るけど、そこに玉ねぎを入れたり卵も入れたことないわ!煮込みソースに味が付いているから、そのまま丸めていたの」


「パンを細かくしたパン粉がつなぎなの。卵だけじゃダメなの」

私の説明を詳しく聞きながら、コリンヌはメモしている。ライザは驚きながら手伝ってくれた。


「これ、ハンバーグって言って、まあ……郷土料理かな?でも、これと野菜炒めと、目玉焼きしか作れないのよ」

そう言うとライザは笑っていた。


コリンヌは私がハンバーグを作る間に手際よく料理を数種類作っていた。


出来上がって3人で食べると、皆ハンバーグに感動していた。

「美味しい!自分で作った料理で美味しかったのは初めて!」

ライザはおかわりしていた。

「ちょっとライザ!これ以上食べると太るよ?」

そう言っていたら、ちょうどカーネギー氏が戻ってきた。


「いい匂いがするな。コリンヌの料理か?私にも欲しい」

そう言って1人掛けのソファーにドカッと座る。

するとコリンヌが笑いながら料理をもってきた。


「今日は、クロの地元の郷土料理もあるわ。ハンバーグっていう料理らしいわ」

そう言って複数の料理を並べると、カーネギー氏は嬉しそうに食べ出した。

「パーティーなんて。何も食べれないよ。ただ、シャンパンを片手に談笑するだけだ。やはり、コリンヌの料理は美味い。それにこのハンバーグも美味いな!」

そう言ってあっと言う間に食べてしまった。


カーネギー氏はその後、燕尾服のポケットから高沢のプレゼントを出してきた。

「魔法のポケットみたい!」

ライザが言うとカーネギー氏は笑った。


「アイテムボックスだよ。パーティーに行くと色々なプレゼントをもらうが、手に持ちたくはないのでね」

そう言いながら本当に沢山出てきた。


「欲しい物があったら持って行っていいが、食べ物は絶対ダメだ。何が入ってるかわからないから食べずに捨てる事」

「わかりました」


そう言った時、ライザがちょうど香水のようなお洒落な小瓶の蓋を勢いよく引っ張った拍子に、手元が狂って落としてしまい、瓶が割れた。


その瞬間、カーネギー氏はこわばった顔で、シールドを張って私とコリンヌを守ってくれた。


魔法でベルを鳴らして大声を出した。

「すぐに客室係を呼んで部屋を清掃してくれ!惚れ薬がこぼれた!」

すると、どこからか声が聞こえてきた。

「すぐにクリーニングいたします」

その声を聞いて、少しカーネギー氏は安堵したようだ。


「香水や瓶も開けちゃダメだっていえばよかった。私の落ち度だ。ライザ!気持ち悪くないか?」

「ちょっと……」

ライザはなんだか辛そうだ。

「我慢してくれ!吐くともっと惚れ薬を吸い込んでしまう!」


その時、客室係と先程のマネージャーのネイサン・ナガーさんが入ってきた。


「申し訳ありませんが、皆様、息を止めてください。そして、カーネギー様、シールドを解除してくだい」

マネージャーはカーネギー氏とは違うシールドを張ってくれた。


「まだ、もう少し息を止めててくださいね。では行きます」とマネージャーが言うと、客室係の女性が何か魔道具を出してスイッチを押した。


すると大きな波が出てきて、私達を含め部屋中を綺麗に洗い流した。


全く濡れなかったが、波のせいで髪型が崩れてボサボサになった。メガネが外れなくてよかった! 


「皆様、失礼いたしました。気持ち悪くはありませんか?」

マネージャーが聞いてくれた。


「大丈夫です」

ライザが答えたのでみんなが安堵した。


「マネージャー、ありがとう!惚れ薬がこぼれたのは主に服だが、念のため部屋ごとクリーニングしてもらった。この服は着て帰れないから全員にドレスを見繕ってくれ」

カーネギー氏の言葉に私達はびっくりする。


「そんな!私の落度なのに!」

ライザの言葉にカーネギー氏は笑った。


「外出できない我が秘書の友人達をもてなすぐらい大した事はない。我が秘書であるコリンヌも、我慢してここにいてくれるから私は安心して業務に打ち込める」

そう言ってコリンヌを見た。


「私は着替えがあるから、それを着る。では、3人にドレスをお願いする」

そうカーネギー氏は言った。


「お部屋から出られないお嬢様方に、今、ドレスショップをお持ちします。この後、専門の者が参りますのでお待ちください。それから、カーネギー様。これは元々、このような物を持ち込ませないようにしなかったこちらの落ち度でございますから、お嬢様方のドレスはこちらでご用意いたします」

マネージャーはにっこり笑った。


「この小瓶はこちらで処分いたします」

そう言って厳重に魔法で封じた袋に入れて、マネージャーと客室係の女性は部屋を出て行った。


程なくして、ホテル内のドレスショップの店員がやってきて色々なドレスを見せてくれた。

問題は値段がわからない事だ……。


コリンヌは開き直ってドレスを選んでいる。それを見て私達も値段のことを考えるのはやめた。

お互いに何が似合うかを話し合う。


何着も試着して、店員の女性のアドバイスを聞いて決めた。

私達がドレスを決めたので店員の女性は戻って行った。


「ボスにこれからもちゃんと尽くすわ」

コリンヌはそう言って笑った。


ドレスを贈れと言ったカーネギー氏もすごいけど、無料で提供してくれるこのホテルもすごい!


ドレスを選んだ後は、シールドを張りながら、カーネギー氏がもらったというプレゼントを見る。

2人はシールドが張れないみたいで、それは私の役目になった。


「こうやって見ると何もかも怪しく思えてくるわ」

「ご自分で刺繍したハンカチよ!どう考えても、男性にチューリップってありえないわ」

「こっちは靴下よ!あら、名刺が入っているわ……これにも魔法がかけてあったりして!」

「やだわ!ありえない!女性用の下着よ!」


「今までボスはどうやって処分していたのかしら?開けない方がいいプレゼントばかりだったわ」

コリンヌはそう言って笑った。


このろくでもないプレゼントの山を見て大笑いした。



そして、コリンヌが映画の準備をした。

「ルームサービスで映画がみれるのよ」

なんと、メイベルが出ている映画だった!


やはり白黒だったけど、VRのように臨場感があった。

メイベルの役は、病弱な主人公の恋人。

悲しい恋物語だった。

「やっぱりこの映画好きなの!」

ライザが言うと、コリンヌも同意した。

「もう涙なくしては見れないわ」


エンドロールが流れ出したところで、カーネギー氏が主賓室から出てきた。

「私はそろそろ帰ろうと思うが、2人を送って行こう。かなり遅くなって危ない」

時計を見ると12時を過ぎていた。


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