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お土産は何にする?

本日3回目の投稿です

感傷に浸ってないで、今からの事を考えよう!

とりあえずメガネとセカンドクローゼットの服。

感情に浸りすぎて忘れるところだった!

あぶないあぶない!


そう思ったらホテルに着いた。



ホテルのスイートルームに行くと、ダイニングルームでカーネギー氏がミネストローネを飲んでいた。

そこにエプロンをしているコリンヌの姿がやけにハマる。


夫婦みたい。

そう思ってクスッと笑う。


「ねぇ、クロは朝ごはん食べた?もしよかったらクロもミネストローネ飲む?」

コリンヌの屈託のない笑顔がなんだか可愛い。

「ええ!頂くわ」


そして食べたミネストローネはすごく美味しかった。

「美味しい!コリンヌ天才!」

私が言うとカーネギー氏も笑った。

「ボスったら、最近、朝のスープを飲んでから仕事をするの」

コリンヌの言葉が新婚の奥さんみたいで何か微笑ましい。


「我が秘書の料理が美味しくて、外食する気持ちにはなれないんだよ」

そう言って優しく笑うカーネギー氏は、最初に会った数日前よりも優しい笑顔だった。


「なんか楽しそうですね。それでは例のものです」

そう言って保存袋を渡して立ち上がった。


「じゃあ。夕方にライザと来るわね」

「ええ!楽しみにしてるわ」

そう言って別れた。


馬車の中でメガネをとって、ブルーノの宮殿に戻ると、もうブルーノは出かけた後だった。


色々な事が頭の中を占拠するので、今日はサックスの練習に没頭した。

涼木鈴の思い出も。

ブルーノの曖昧な態度も。

全て忘れたくて無心で練習した。


気がつくともう、ライザとの約束の時間が迫っていたので、メガネをかけてセカンドクローゼットの服に着替えて、急いでカフェに向かった。

ちょうどライザの仕事が終わるところに滑り込めた。

「遅くなってごめんなさい!」

「大丈夫、ちょうど終わるところだよ」

そうライザは言って笑った。


「ねぇ、コリンヌは外出できないから、お土産買ってかない?何がいいと思う?」

ライザの提案にうーんと、考えてみたけど思いつかない。

「ホテルで食べれない物って何かしら?あっ!前にライザに連れて行ってもらったカレー!」

わたしは思いついたとばかりに言ったらライザはポカンとしていた。


「カレー?あっ!わかった!ガイダ料理だ」

「そう!それそれ」

「でも、コリンヌのボスがまた何か用意してくれてるとかあるんしゃない?」

ライザの言う通りかもしれない……。

「そうね。そういえば、コリンヌ、お部屋で料理してたよ」

「決まりだ!食材を買いに行こう!」


ライザの提案で食材を買いに行くことになった。

「この近くにあるから」

そう言ってカフェからブルーノのラボの方角に歩き出した。


歩いてラボに近づいて行くと、すごく大きいのがわかる。

ここの所長を務めるって、ブルーノってすごい人なんだよね。


「ここだよ」

そう言われて入ると、沢山の野菜が並んでいた。

野菜の見た目は日本と変わらない。


ライザと一緒に野菜を選んだ。

「クロは料理できるの?」

「まあ出来るけど、こっちに来てから一度もしていないわ」

「私も、できないわけじゃないけど、あまり上手くない」

ライザは恥ずかしそうに笑った。


そんな話をしながら、食材を買った。

お店を出てから気がついた。

「この袋を持って、ブラクストンホテルに入れる?」

私の質問にライザはあっと言う顔をした。

「恥ずかしくて無理だわ」

「鞄を買いましょ。安くても、見た目がいい物」

私の提案に、ライザはお店に連れて行ってくれる。


そこは、古道具屋さんだった。

「ここだったら何かいいものがあるかもしれないと思って」

ライザは悪戯っぽく笑った。

確かに、無職の私とカフェで働くライザだと、買えるものが限られてくる。


店内を野菜を持ってウロウロしている時だった。

奥の機械が山積みになったコーナーにブルーノらしき人が見えた。


声をかけようと思ったら、女性と一緒だった!

2人は楽しそうに機械を見ている。

「これなんかいいと思いませんこと?」

そう言う声が聞こえた。

「うーん。ちょっと違うな」

ブルーノの声が聞こえた。

やっぱりブルーノだ。


「ところで、そろそろ行きません?宝石を見るならお店が閉まってしまいますわ」

「そうだな。じゃあ服装を変えるよ」

そんな声が聞こえてきた。

「所長、素敵ですわ」


商品の間からブルーノが見えた。

かっちりした服装をしている。

そして横の女性は淡いグリーンの巻き髪の綺麗な女性だった。

マーメイドラインの高そうなドレスを着て、ブルーノと腕を組んでいる……。


私といえば、セカンドクローゼットのちょっと流行遅れの服に、野菜を抱えて古い鞄を探している。

なんか惨めだ。


「宝石店に寄ったら、約束通りディナーに連れて行ってくださいよ?」

女性は楽しそうにはしゃいでいる。

「わかってるよ。君の希望通り、ベルタホテルを予約してあるよ」

「まあ!ありがとうございます」

そう言って2人でお店を出て行った。



胸の奥がズキズキ痛む。

ブルーノと、部下の女性が……。

確かに、メイベルとしてラボに行っても、誰にも出会わない。

だから、ブルーノと同僚との関係なんて知らなかった。

そっか……私が一方的に勘違いしていたのね。



結局、心のどこかで期待していたんだ。


確かにキスしかしていない。

しかも、唇に触れるキスしか……。

この国ではキスは普通なのかもしれない。

何も言われてないし、一緒に寝ても、手を出されていない。

そもそも、メイベルを妹だと思っているって言っていたもの。

いつもと同じ……か。



私は深呼吸をして自分を落ち着かせる。

さあ、鞄を探そう。


「何かいいのあった?」

ライザの声がした。


結局、ライザが見つけた型がかなり古いクラッチバッグにした。

これも魔道具で、ぎりぎり野菜が全部入る。

ちょっと色褪せて、型が古いからすごくお安く買えた。


ライザと馬車まで戻ろうとした時、馬車通りの反対車線の宝石店から、先程のグリーンの髪の女性とブルーノが仲良く出てきた。

そして、腕を組んだまま、隣のホテルに入って行く。

女性の手には紙袋が見える。

あのサイズの袋だと、指輪かな……。



もう変に勘違いしない。

キスも、抱きしめるのも、妹だから。

私はメイベルだもの。



「クロ、突然立ち止まってどうしたの?」

呼び止められてびっくりした。

「ああ。なんでもないわ。急ぎましょ」


馬車に乗ってライザと他愛もない話をした。

「今日は、持っているドレスの中で1番いいものを着てきたの」

ライザは興奮して言っている。

「私もよ!」

私もセカンドクローゼットの中のいいドレスを着た。


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