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転生者です。わかってください!

本日2回目の投稿です。



「私は死んで、メイベルは死にかけだった?」

私の問いにリトルは真面目な顔をして頷いた。

「そういう事。メイベルに持病はないはず。だったら殺されたとしか思えない。メイベルの体の何処かに殺されそうになった形跡があるはずよ」


そう言われて、服を捲ったが傷口は見当たらない。

しかし、腕を捲って驚いた。

多数の注射の跡があるのだ。


「…メイベルって持病があったの?」

「さっきも言ったように無いと思うわ」

「じゃあ、腕の沢山の注射の跡って……。メイベルってヤバい薬やってたとかないよね?」

「ないはずよ。ねぇ。注射の跡ってダメなの?」

リトルが聞いてきた。

「まあね」

「じゃあ、とりあえず信頼できる人に相談しましょ。メイベルの死因と、スズキスズの事について。誰に相談したらいいのかな?」

リトルは考え込む。


「その人は私がこのメイベルちゃんとは別人だってわかってくれるかしら?」

私は不安になって聞いた。

「うーん。また趣味の悪い遊びだと思われるかもしれないけど、わからないわ」


「趣味の悪い遊びだと思われる可能性が……、、あるよね?普通はそうだよね」

そんな私の返事を聞かずにリトルは顎に手を当ててブツブツ言っている。

そして、うーんうーんと唸りながら、ふわふわと漂っていた。


しばらくしてから、渋々といった感じで私の前に来た。


「相談する相手が決まったわ。今から連絡する人は、必ずしもメイベルに好意的ではないの。ただ、悪意も持っていないから、メイベルを殺した犯人ではない可能性が高い。そして、1番冷静に話を聞いてくれるわ」

「わかった。どうやって連絡すればいいの?」


教えてもらったのは手紙の書き方だった。左手の小指の指輪を押して回してそれから言われた通り紙に文字を書く。

文字を書けるか心配したけど、何とか書くことができた。


「スズキスズ、字が下手ね。読みにくいわ。でも初めて書いたんだから仕方ないか。まず、書き終わった手紙を四つ折りにする。そして掌に乗せる」


言われた通りすると、紙が鳥の形になった!そして勢いよく飛んでいったのだ。


「これって誰にでも送れるの?」

ただ紙に書いたものが鳥になって飛んでいくなら、本当に誰にでも送れるのではないかと疑問に思った。


「送れないよ。手紙の最初に書いたのが、相手の送り先。最後に書いたのが、メイベルの返信先。この2つがないと手紙は送れないの。しかも、あの鳥、どこにいてもちゃんと飛んでくるのよ!」

得意げに話すリトルを見て思った。


「それって、メールアドレスみたいなものね。でもスマホの代わりになる物はないんだ。だから、直接紙でやり取りするのね」

「スズキスズの言っている意味がわからないわ。スマホって何?」

「うーん。掌に乗るくらいの箱でね…って説明が難しいから辞めておくわ。ところで、何でリトルは私をフルネームで呼ぶの?」

私の疑問に対してリトルはびっくりした顔をした。


「これ、フルネームなの?短い!ファーストネームは?」

「スズ」

「成程!じゃあファミリーネームがキスズかぁ。」

「違う!涼木がファミリーネーム。涼木、鈴」

「よくわからないわ。何か難しい。名前の切れ目がわからないからいいじゃない?スズキスズで」


そう言っていると手紙が羽ばたきながら戻ってきた。

気になったのは、鳥の体がピンク色のグラデーションになっている事だ。


「あの手紙の鳥、何でピンク色のグラデーションなの?」

「ピンク色に染まっている手紙は、送った手紙の返信って事よ。真っ白な手紙は、返信ではない手紙よ」


受け取った手紙を開封すると、ただ『迎えに行く』とのみ書いてあった。


「ただ『迎えに行く』とだけ書いてある」

手紙をリトルに見せると苦笑いをした。

「信じてない可能性が高いわね。でもとりあえずそのスリープウエアから着替えてよ」


リトルに言われて先ほどの部屋に入った。鏡があるならきっと服があるはず。

でも、沢山の布がハンガーに掛かっているけど、肝心の服も下着も見つからない。

「ねぇ、何を着ればいいか教えてよ」

私の声に対して返答はない。そこで、部屋に戻ってリトルを見た。


「指を鳴らせば着替えられるわ。ただ、私はこの部屋の事しかわからないし、他の部屋には行けないの。ゴーストだから。それに私、色が見えないし、服の事もよくわからないわ」

リトルの言葉を聞いて指を鳴らしてみたけど、私の好みとは程遠いなんとも言えない派手な服に変わった。


「これは……この国では普通の服なの?」

「わからないわ」

「じゃあ今から来る人を待たないといけないわけね」

私の落ち込み用にリトルは申し訳なさそうにする。

「まぁその通りね。……男性だけど……」



今まで恋人らしい恋人がいた事がないので、異性に服の相談をした事がない。

だから異性に服のことを相談するなんてどう切りだしていいかわからない。

狼狽えている私の様子に気がつかないリトルは、テーブルの上に座った。


しばらく経ってからだった。

突然、入口のドアが開いて赤毛の男性が入ってきた。


「メイベル。さっきの手紙はなんだ?」

突然の事に私はびっくりして動けない。

「何で入ってこれるの?」

私の質問に男性は鼻を鳴らした。


「さっきの手紙に、この部屋のパスワードが書いてあったじゃないか。もう、訳がわからない。どこが『私は死んだ』だよ。しかも、アート文字で書いてきて。ある意味、俺を試してるのか?」


男性は冷めた目で私を見た。

でも、それどころではない。

なになになに!このイケメン!!

背は高く、髪は赤毛が少し脱色されて金髪っぽくなっていて、目の色は淡いグリーン色だ。

少しソバカスがあるその顔は、スマホの待ち受けにしたいくらいカッコいい!


私は見惚れてしまってぼーっとしている。


「何?どうした?おかしいぞメイベル」

ここで、初めてリトルが口を出した。

「よく来てくれたわ、ブルーノ。ここにいるメイベルはもうメイベルじゃないのよ。中身はノーマルのスズキスズって異世界人なの」

その説明を聞いて、懐疑的な目で私を見る。


「はじめまして。涼木鈴です」

とりあえず自己紹介をして間を持たせる。

「メイベルのくだらない悪戯だな。じゃあ、何か異世界人らしい事してよ」

ブルーノさんと呼ばれた男性はそう言った。


「え?異世界人らしい事?例えば……なんだろう。歌を歌ってみます」

そう言って、大好きなアーティストの歌を、振り付きで踊った。


「なんだ?その変な動き!しかも、聞いたことない言葉だな。即興で作ったのか?」

廃滅的にダンスの下手な私の動きでは伝わらなかったらしい。本当はもっとカッコいい歌と踊りだけどね。


「じゃあ、外国人にウケる日本の折り紙というやつをしてみます。何か紙をください」

そう言って、リトルに紙のありかを聞く。

それから鶴を折った。


「おお!すごい」

あまり関心していない。

ダメだ。伝わらない。

そこで、私は思い切って腕を捲った。


「私はメイベルじゃないけど。みてこれ! メイベルって薬やってたの?この腕の注射の跡。ありえないくらいあるでしょ?これって殺される時、多量の致死薬を投与されたんじゃないの?」

私の態度に、初めてブルーノはまじめに対処しようと思ってくれたようだ。


「メイベルは薬はやってないよ。この腕は確かに異常だな。とりあえず、ラボで検査する。歌と踊りのあたりからおかしいとは気がついていたよ」

ブルーノはすぐにでも出発したそうだったが、私はここで本題を伝えた。


「あの。この服、普通なの?なんだか…ね?」

ブルーノは私の言葉に頭を抱えた。それから、自分のジャケットを肩にかけてくれた。

「じゃあ、これでいい?リトル、行ってくるよ」

ブルーノはそう言うと私を連れ出してくれた。


「地下の駐車場に行くぞ。メイベルは目立つからな」

地下に行くと、そこには馬車があった。

「早く乗れ」

そう言われて馬車に乗り込む。

「すごい!馬車って初めて乗るわ」

「はぁ?じゃあ普段はどうやって移動してるんだよ」

「自動車かバスか電車」

「なんだ?その乗り物は」

ブルーノの疑問には答えられないので、黙る事にした。


「メイベルの中の人。…誰だっけ?まぁとりあえず聞いてほしい。リトルには謎が多い」

「?ゴーストだから?」

「私から言わせてもらうと、リトルがゴーストなのかわからないんだ。確かに、リトルはメイベルの持つ絵画から出てくる。これはゴーストの特性だ。ただし、決められた範囲しか動けないのはゴーストだけでは無い。自動巻魔道具もだ」


なんだ?それ?よくわらがない。

そのため私は曖昧な返事しか出来なかった。

「もしも、リトルがゴーストだったとして、メイベルの他にも契約者がいるのかもしれないから信用してはいけない。もしも、リトルの別の契約者がメイベルの脅威だった可能性もある」

私は意味が分からず無言になった。


「じゃあ話は戻って、ほかの服に着替えたい時はどうすれば?」

「頭の中になんとなく着たい服をイメージして、『着替えを』と思って指を鳴らしてごらん。指を鳴らすとクローゼットが服を着せてくれるよ」

ブルーノは冷静に言っているが意味がわからない。

「クローゼットが服を着せてくれるの?」

私は聞き返した。


「そう。クローゼットの役割は服を選んで、持ち主に着せること。服は自動的に増えるし、持ち主の希望に沿って変化していく」

「へえ!じゃあ私が亡くなったら?どうなるの?」

「もしもメイベルが亡くなったら、クローゼットは相続されるか、遺言の内容によってはオークションにかけられる。そうやって高値で取引されて代々引き継がれていくんだ。ちなみに価値が無いとみなされたクローゼットは中古魔道具店に沢山売ってるよ」

「すごい!画期的!では、指を鳴らせばいいのね」


パチンと指を鳴らすと、私の服は柄物のお洒落なワンピースに変わっり、それに合わせて髪型も変わった。

「凄すぎ!さっきよりは自分の好みだわ」

「そんなおとなしい服もあったんだな」

「これのどこがおとなしいわけ?」

私の質問にブルーノは反応しない。


「馬車って全く揺れないのね!驚いたわ」

「昔は激しく揺れたけど、今は改良されて揺れないし、音も静かで、防音もしっかりしている」

ブルーノは車体を触って笑いながら説明してくれた。


ブルーノの後に続いて馬車を降りて街並みを見た。

まるでヨーロッパのような街づくりだ。

広い通りの歩道には、机や椅子が並べられ、そこでお茶を飲みながら話す人々。


海外旅行をしないまま亡くなったので、一度は行ってみたかった光景が広がっている。

「前を向け。ここは機密情報の宝庫たから、シールドが張ってあって外からは見えないけど。念のためだ」


前を向いてまた違った意味で驚いてしまった。

昔写真で見たような、ゴシック様式とでも言うのだろうか。大きな建物が目の前にあった。

「ここが研究所ですか?」

「そうだ。中に入ろう」

そう言うが早いかブルーノは私の歩く速度など計算に入れてないかのようなスピードで歩いていく。


今まで手を出さなかったジャンルに挑戦中です。

もしよかったら引き続きお付き合いください。


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