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危険な駆け引き

本日3回目の投稿となります

しばらくあるくと、大きな建物が見えてきた。

目の前に来ると、そこに『カーネギー産業』と看板が出ている。


ブルーノに迎えに来てもらおう。ここでは帰り方がわからない。

『今迷子になってカーネギー産業の前』と手紙を送ると、『そこで待っていろ』と返事が来たので、『側の建物のカフェにいる』と返事を送った。


それからカフェに入った。


先ほどのカフェではコリンヌに紅茶を全部飲まれてしまったから喉が渇いた。

席につくと、メニューを見た。ウインナーコーヒーがある。珍しいと思って頬が緩んだ。

この世界の人はあまりコーヒーを好んで飲まないのか、コーヒーかカフェラテの2種類しかない。


でもウインナーコーヒーがある!

珍しくてそちらを頼んだ。


待っている間に、紙袋を膝に乗せ、虹色の薔薇を眺めた。

それからメッセージカードをよく見ると、開封できるようになっている。

よく見なければ気がつかない構造だった。

コリンヌはボスに怒られたせいで花束をあまりよく見ずに開封しなかったのだろう。


開封すると、文字が浮かび上がった。

『私が誰か知っていて助けてくれたのかな?』

はい、と、いいえ、の文字が浮かび、『はい』を触った。


きっとカーネギー産業の役員だ!

『君だけに秘密の提案がある。17時30分 ダナハービルのカフェにて、本日しか無いメニューを頼んでほしい。それが合図だよ』

その文字が浮かび上がった後、消えた。


ダナハービルって有名なのかな?

しかも、17時半って今じゃない?

私はカフェの時計を見た。

確かに17時半だ。

本日しか無いメニューって?


もう暗号だらけで私にはわからない……。


しばらくしてコーヒーが運ばれてきたが、カップとソーサーの間に不自然に小さな紙が挟まっている。


不思議に思って紙を開いた。

すると魔法で文字が浮かび上がった。


『情報提供者の依頼を受けてくれてありがとう。今後、情報のやり取りは毎週水曜日、こちらのお店でウインナーコーヒーを頼んでほしい。そこにメモを挟む』

もしかしてここがダナハービルのカフェ?

私をコリンヌだと思ったのかな?

紙袋に入れたプレゼントの花を持っているからかもしれない。


あー!

今日しかないメニューってもしかして、ウインナーコーヒー?


そのメモを見て一方的だと思った。

まず、水曜日ほ今日でコリンヌは学校がある。

だからこそ早退させても不自然じゃないと思ったのかしら?


これはコリンヌの状況をある程度調べていて、お姉さんが子連れで帰ってきている事などを知っているのかもしれない。

子供ってお金がかかるらしいってよく聞くもの。


これはコリンヌが危険だ。

…でも見た目は違うのに?

……コリンヌも私も、大人しい服で、きっちり髪は結い、金髪だから?(私はクリーム色でコリンヌよりだいぶ色が薄いけど)

しかも、この秘書顔メガネのせいで、いかにも、な感じに見えているのかもしれない。


ちょっとイラッときたので仕返しをする事にした。

ナプキンに魔法で文字を書く。

初期魔法らしいけど、メイベルはサインをねだられるとこうやって書いてたらしい。


練習してよかった!あの厳しい先生に感謝!


『まず水曜日は無理。それに、私にはパトロンがいるの。だからお金には困ってない。パトロンは今姿を見せるわ。自分は姿を見せずに私に危険な事を要求するけど。貴方は何を提供してくれるの?』


それを挟んで、ウインナーコーヒーのおかわりを頼んだところでブルーノが来た。


しかも、今日は、きちっとした服装だ。

タイミングがいい!

そして、いつもは普通に下ろしている前髪を後ろに流して固めている。


「早かったわね。相談したいと思ったんだけど。今度のパーティーのドレスやアクセサリー。どうしたらいいかしら?」

私の質問にブルーノはにっこり笑った。

「じゃあ、我が家の専属メーカーを明日、屋敷に呼ぼう。クロはちゃんと着こなせるかわからないけどな」

そう言って私の頭を撫でたあと、向かいの席に座った。


「ところで、今日は何かあったの?」

ウインナーコーヒーを待ちながらブルーノに話しかけた。

「この近くで研究発表会があったんだよ」

「新しい魔道具の?」

「そう。今回は聞く側だったから、1日疲れたよ」

「まさに、貴族の装いね」


新聞やタブロイド紙を調べている時わかった事だが、貴族にしか許されないない装いがあるらしい。

しかも、襟に付いている社章のようなバッヂで貴族の爵位がわかるらしい。


「本で読んだんだけど、それは侯爵のバッヂ?」

私はブルーノの襟を指差した。

貴族に向かって指差しなんて無礼すぎるはずだ。

普通なら怒られるだろう。

でも、ブルーノなら怒らないと思ってわざとやった。


「そうだよ。クロは物知りだな」

そう言ってブルーノは笑った。

やっぱり怒られなかった。


その時、ウインナーコーヒーのおかわりが来た。

「はじめて見る飲み物だね」

ブルーノはウインナーコーヒーをじっと見た。

「一口、飲んでみる?」

そう聞きながら、挟んである紙をサッと取る。


「どうやって飲むんだ?」

ブルーノがそう聞くので、ブルーノ好みに砂糖を2杯入れてかき混ぜる。

「どうぞ」

そう言ったら、ブルーノはまずコーヒーをじっと見て迷っている。

私から視線が逸れたところでメモを開く。


『シンブロス産業の役員の椅子と、重要情報1つにつき銀貨5枚、情報改ざん1回につき金貨1枚』

と書いてあった。


このカフェには他に客はいない。

店員は若い男性だ。

コリンヌから聞くおじいちゃんはいない。

……もしかして、顔を変える薬で店員になっているのかな?

私とブルーノの会話も聞いている?


ブルーノが一口飲んで、顔をしかめている間に、ナプキンに

『その条件じゃ受けない。パトロンとの方が有意義』と書く。

ちょっと揺さぶらないと。

ブルーノからカップを受け取ってコーヒーを飲み干すとソーサーに挟んだ。


「おかわりするけど、ブルーノも何か飲む?」

「じゃあ紅茶だな」

店員を呼んで、おかわりをお願いした。

本当に私達の会話を聞いているのか確かめたい…。


「ラブラのパーティーはナントカ伯爵の迎賓館でやるつもりかな?」

「ああ。映画監督のアーサー伯爵所有のだろ?」

「迎賓館って簡単に借りれるの?」

「嫌。なかなか貸してはもらえないよ。だからこそ、ラブラの本気度を見るわけだよ」


「招待状のリストはいつ頃届くのかしら?」

「うーん。早ければ今週中だよ」

「どんな人がリストアップされてくるの?」

「多分、伯爵以上の貴族籍のある有力者、それから有名俳優に歌手、映画監督。あとは、クロが希望している、モデルのクリストフ・ヘルソン。実業家のダニエル・カーネギー

。スポーツ選手のイデオン・サーストンだな」

「私の希望の3人には必ず出席してもらわなきゃ」


ダニエル・カーネギーの名前が出た!

食いつけ!

お願い、食いついて!


「パーティーには商売敵が来ないように配慮するの?」

「ラブラならそうすると思う」


これでシンブロス産業の関係者が呼ばれないとわかったでしょう?

話を聞いているなら食い付くはず!


この話を聞いて『コリンヌはパーティーで新しいパトロンを求めるのかもしれない』と思うか。

はたまた『パーティーはコリンヌの希望する参加者をねじ込めるという事はこのパトロンはかなり骨抜きだ』と思うか。


どんな返事が返ってくるかしら?

普通に考えたら、金持ちのパトロンがいるのに、危ない橋は渡らないはずよ。

しかも、そのパトロンは有力者を集めたパーティーをしようとしているように聞こえる。

そこにカーネギーは呼ばれるが、自分は呼ばれない。

さあどうする?


その時ウインナーコーヒーと紅茶が運ばれてきた。

メモが挟まっている。


サッとメモを取ってブルーノに気づかれないようにメモを見る。

『シンブロス産業の議決権と、役員の椅子。役員報酬は2倍。工作活動は先ほど提示した金額の3倍を渡すが、そのパトロンへの顔繋ぎを要求する』


食い付いた!

やはり会話を聞いているのね。


『乗った。紹介は後日』

ブルーノが紅茶を飲んでいる間にメモを書く。


金持ちのパトロンがいるのにこの服装。

つまり、夜の顔は違うと思ったに違いない。

ごめんなさいコリンヌ。

ただ、若くてイケメンの金持ちと付き合っている女性に『自分に乗り換えろ』とは言えないと思っているはずだから、危害を加えられる事は無いはずだ。


急いでここを出よう。

流石に3杯目は辛いけど、この世界の人はコーヒーが苦手なせいでカップが小さいからなんとか飲める。


一気にコーヒーを飲んでブルーノに早く帰りたいと促した。


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