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メイベルの秘密?


「お帰りなさいませ。旦那様」

執事がそう言って出迎えてくれた。


サロンに行くと、メイドがブルーノに手紙を持ってきた。

「顧問弁護士からです」


ブルーノは手紙を開いた後、私を見た。

「メイベルの顧問弁護士はハーパサロという人みたいだよ。どうする?会ってみる?」


私は頷いた。

「では、ここにきてもらおう」

ブルーノはそう言って執事をよび、弁護士宛に、こちらに来てほしいと手紙を出してもらった。


するとすぐに返事が戻ってきたようだ。

「一時間後に来るって」

私は頷く。

多分、ブルーノのおうちの権力の力が働いたのかもしれない。


「ねえ、もしもの為に弁護士さんにもこの前のラブラに書いてもらった守秘義務の書類なんかはもらわなくていいの?」


かなり詳しい事を知っているはずだから漏らされた困る。

この世界の常識がわからないので念のため聞いてみた。


「彼らは職業柄、守秘義務があるから大丈夫だよ」

ブルーノは今から来る弁護士に何を聞こうか考えている様子だ。


「わかったわ。その紙、わたしにも貰える?」

「クロも欲しいのか?なら一枚あげるよ。相手が署名したら、そこで魔法契約が発動して、複製がこちらと相手に渡るよ」

そう言って紙をもらった。


「クロ、説明してなかったんだけど。俺は、ヘイスティングス家に産まれたから、いつもブルーノ・ヘイスティングスと名乗っている。ただ、本家であるアシュバードン侯爵家の一家が旅行中の事故で亡くなって、数年前にアシュバードン侯爵家の爵位と資産を受け継いだんだ」


「ん?どういう事?」

突然何の話をされているかわからずに聞き返した。


「つまり、この家に来てもらう来客には『アシュバードン侯爵』と名乗っているから、メイベルの顧問弁護士にもそう名乗るよ」

私はわけもわからず頷いた。


そもそも日本に住んでいた私は爵位がわからない。

貴族だって事はわかる。

でも侯爵、男爵、…他に何があるんだっけ?

そして何が偉いんだっけ?

全然わからない。

だから、適当に返事をした。



一時間後、やってきたのは、背の小さい、ポッチャリしたおじいちゃんだった。

茶色のコーデュロイのジャケットを着て、紺の蝶ネクタイをしている。それがキャラクターみたいで、なんとも可愛らしい。


私は話を聞いてもよくわからないのでブルーノに同席してもらった。

「一年ぶりのご対面ですな。メイベル・イスト様」

そう言っておじいちゃんはテーブルの上にいくつかの書類を広げた。


「ええ。今日はお呼びだてしてごめんない。今日聞く事に関して、アシュバードン侯爵様に同席してもらうことにしたんです」

私の言い訳におじいちゃんはにっこり笑った。


「そうですか。一年前、遺言を書こうか迷っていらっしゃいましたが…、その後体調はどうですか?」


その言葉にブルーノが反応した。そして薬をチラッとだけ見せた。

「実は体調不良のせいで、メイベルは一時意識が戻らなくなり……。全ての記憶が曖昧なのです。病気の事を、メイベルから聞いていたんですか?」

ブルーノの質問に弁護士は頷いた。


「ええ。心臓が悪いと聞いていましたよ。でも、ほら。メイベル様は治療が終われば、海外の別荘に住む予定を立てていらっしゃったから心配していませんでしたよ。しかしそんなに悪くなっていたとは…」

そう言って弁護士は困った顔をした。


「今は回復してきました。……この事は弁護士さんは守秘義務があるから誰にも言いませんわよね?なので、資産状況を…」

私の様子にびっくりした弁護士が紙を出してきた。


「これが、メイベル様から管理を任されている財産目録です。海外の邸宅が一棟。それから、貴族街にある屋敷が一軒。国内の別荘が一軒に、ここから1日離れた所にある領地です。あとはプライベートバンクの信託財産の監視も依頼されていますが、こちらは順調に増えてますよ」


「二つ質問をするが。一つ目の質問は、メイベルは爵位を継いだはずだが、何故貴族名鑑に登録されていないのだ?もう一つは、メイベルはかなりの寄付などをしてくれているがその資金はどこから出ているのだ?」

ブルーノの疑問は最もだ。


「爵位の件ですが、メイベル様が希望した時に引き継ぎます。覚えてますか?」


「あまり興味が無かったから忘れたわ……」

私は体調の悪い演技を続ける。


「そうですか……。貴方様の位は、隣国のプリンセスです。貴方様のお父様が隣国の前国王陛下の弟様だったので、かろうじて王位継承権があります」

びっくりして声が出なくなりそうなので、下を向いて頷いた。


「ちなみに、この国の領地については、あなた様のお父様の血筋の方からの相続になります」

そして簡単な家系図を書いてくれた。


「何十年も前の事ですが。隣国の王室の血筋の方が、セントルート侯爵家に嫁いだのです。そして、メイベル様が18歳の時、今代の当主様ご夫婦が事故で亡くなりました。残念ながらお子様のいないご夫婦で。生前、ご夫婦はメイベル様の事を一方的にご存じだったようで、遺言でご指名されて資産と爵位を受け継ぎました」

これもまた驚いた!


「しかしながら、隣国の法律で『王族が他国の爵位を継ぐのは婚姻の時のみ』となっておりまして、プリンセスであるメイベル様は、この国で侯爵を名乗れないのです」

私もブルーノも黙ってしまった。

まさかプリンセスとは!


「もう一つの質問ですが、寄付などはメイベル様が自ら作られた個人資産からおこなわれていますよね?私が管理してる資産は、主に相続で受け取った資産です。海外の邸宅は、相続の資金で買ったものなので管理させてもらっております」

ごもっともな話だ……。


「しかしながら回復に向かっているなら安心しました。では、私はこれで」

そう言って財産目録を置いて帰って行った。


こうして弁護士との面談は終わった。



私がプリンセス?

いや。ただの会社員だ。

困ったなー。


ブルーノも困っている様子だ。

「メイベルは伯爵家ではなく侯爵様の資産を受け継いでいたんだ。しかも、隣国のプリンセス? 知らなかった。メイベルからは伯爵家の邸宅を引き継いだとしか聞いていなかった」

そう言って、座っていた豪華な椅子の背もたれに全体重をかけて、天井を見ている。


「メイベルから、伯爵家の資産を受け継いだって直接聞いたの?」

私の質問にブルーノは頷いた。


メイベルはなんでそんな嘘をついたんだろう。

爵位の上下はあまり詳しくない。

それに、顧問弁護士は心臓のことは知っていたが、長生きできると説明していたし、海外に移住するつもりでそちらにも不動産を買っていた。

じゃあ、魔物に噛まれたのは?

いつ?

そしてメイベルの資産はどこにあるんだろう?


知れば知るほど謎は深まる。


ブルーノはため息を付くと、こちらを向いた。

「クロは今の話をどう思う?」


「うーん。今の話から推測するに……。推測ですよ?私の想像力を働かせると、隣国の王室でメイドをしていたお母様が当時の王弟殿下に無理矢理迫られた。妊娠に気がつかないお母様はこの国に逃げてきて、メイベルを産んだ。そして、ブルーノが見たように侯爵家でメイドをしていた。……昼ドラみたい」

私はそこでお茶を飲んだ。


「昼ドラとは?」

ブルーノはポカンとして聞いてきた。


「昼ドラの話は忘れて?まとめを話します。プリンセスとは王位継承権がありますよね?きっと、その王族は沢山のメイドに手を出して、結婚していないのに生まれた子供が沢山いるんですよ!」

私は勝ち誇ったように言った。


でも自分の言葉に引っかかる。

「……メイドの子供?」

頭の中で色々な物事が渦を巻いてきた。


「ヴェロニカって、もしかしたらメイベルと同じように、メイドの子供なんじゃないの?父が同じ。母は隣国の王室でメイドをしていた……」

私は閃いたとばかりに、ブルーノを見た。


そんな私を見て、ブルーノは何かの決意をしたようだ。

「わかった。ヴェロニカの母の足取りと、メイベルの母の足取りも調べる。それから、メイベルの個人資産がどこにあるかも」

そう言った後、執事を呼んだ。


「アシュバードン侯爵家の諜報力を使って、ヴェロニカの母について。それからメイベルの母について調べよ。それから、メイベルの個人資産がどこにあるかも調べてほしい。それから、先日指示したメイベルの専門家を」


「かしこまりました。侯爵様の指示とあらば、必ずやお調べいたします。それから、以前ご指示を頂いた通り、メイベル様の研究結果の専門家を呼びます」

そう言ってスッといなくなった。

なんだ?メイベルの専門家って。


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