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trance world  作者: 篠田幸彦
プロローグという名の前戯
4/11

消化物を戻しても完全には特定できない。

「ん……もがっ!?ゲホッゴホッグァァ」


口内の異物感とそれに伴う不快感に唐突に襲われて、汚い咳払いと共に目が覚める。


「俺」はとりあえず口に手を突っ込んでその異物を取り出してみることにした。


「……なんだこれ。汚いなぁ……」


口に入っていたのは黄色っぽく劣化したのか元々なのか分からない4枚ほどの汚い紙がぐしゃぐしゃになってボール状になっているものだった。


よく見ればインクか何かで文章が書かれているようだが、文字が滲んで全く読めなくなっていた。


でも、人間の口内に入ってたものなので大したことは書いてないだろうと踏んで、とりあえずゴミに捨てようと俺の中で答えは固まった。

……やっぱり汚いし。


そう思ったら善は急げ(善……?)だ。

立ち上がった瞬間に、何かが背中をぞわりと撫でた気がした。そして同時にこう零れた。


「……ここ……どこだ?」


道が全く分からないのだ。

それどころかどこもかしこも見覚えがなかった。

青と白のレンガの道、白い街灯に白い噴水。

街ゆく人々はみんな灰色……白……黒で身を固めている。


こんなものを、俺は知らない。

こんな場所を、俺は知らない。

こんな人たち、俺は知らない。



じゃあ、ここは何処?


もう俺の中には、ゴミを捨てようなんて思考回路は

どこかに飛んでいってしまっていた。








宛もなく歩くのは危険だと聞いたことがある。

でもそうしないと一生戻れない気もした。

一生帰れない、戻れないのは嫌だ。

……何処に?


どこに帰る?どこが目的地?そもそもどこに住んでいたっけ。あれ…………そういえば



「俺の姓名ってなんだっけ……」



きっと俺は今日、全てを失った。


……そんな気がしたんだ。

夕方のニュースです。


○月✕日未明、社台坂市八女町在住の姫原定斗さんが帰ってこないと、母親の姫原宣美さんから通報がありました。

警察は定斗さんの行方を捜索していますが、未だ見つかっていません。


姫原定斗さんを見かけたり、何かしらの情報をお持ちの方は、画面下に記載されている電話番号まで連絡をお願い致します。

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