残さず食べましょう。
膝から崩れ落ちた彼の後ろには、ボクが立っている。
「ねぇ」
そう声をかけてみる。
……反応はない
「ねぇ、聞いてるの?」
もう一度声をかけてみた。
……やっぱり反応はなかった。
痺れを切らしてボクは、彼の肩に手をかけて
グイっとこちら側に彼の身体を強引に動かす。
ごん
返事の代わりに、彼の頭と本棚からなかなかいい音がした。
ボクはそれに気を良くして……
××するのを後回しにした。
本棚から、さっきまで彼が読んでいて彼が崩れ落ちた元凶を取り出して、ページをめくる。
ぱら
ぱら
ぱら
姫原定斗 と書かれたページを破いてクシャクシャに丸めて、彼の口に突っ込んでみる。
相変わらず反応はない。これが放心状態とでもいうのだろうか。ちょっとボクにはわからない。
準備が出来たので彼をゆっくり持ち上げて、
……と言っても重たすぎたので右足から引き摺って、
図書室の窓に近づいて、カーテンを勢いよく開いた。
シャーーーーーーと音を立てるカーテンレールが、
今からのボクの行動を賞賛してくれている気がした。
すっかり上機嫌なボクは、精一杯の力を振り絞って……
ぽい
彼を5階の図書室から投げ捨てた。
お仕事が終わったとでも言うように手をぱんぱんと音を立ててみる。
きっと今頃彼ははもう『ここ』には居ないんだろうなあと思いながら。まぁボクがやったんだけどね。
でもこればっかりは本当に感謝して欲しいなぁと思う。
世界の理を無視してまで君を救ってあげたんだからさ。
ルール通り、「いつもどおり」殺さなかっただけマシだと思う。
……いやまぁ
「君だけが」殺せなかったんだけど。
だからさ
ボクの『演目』に付き合ってよ。
……姫原定斗君。
そう思いながらボクは、彼の『本来あるべきの着地点』を上から見下ろして、綺麗に笑ってみせた。
???
代々(姫原が住んでいる)この町、社坂市八女町に居る
市をあげての信仰対象。
毎年決まった時期に子供を生贄に捧げさせて食い荒らす。
気に入った子供に番号を振ってキープしておいて、あとからそのリストをその辺の大人に見せておけば、大体もってきてくれるので、そうしている。
たまに時期がズレたり、リストが見つかっておらずに生贄が来ない時はよく我慢できなくなって自分で取りに行く。
正体は自由奔放なやりたい放題の、ガキンチョの姿をした怪異。
だがしかし市内一体を守っているので誰も異論を唱えられないし、そんな感性も持たされていない。