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「初めまして。神崎昭人と申します」



金色の髪をしたイギリス系ドイツ人に挨拶をした。



「ああ、リチャード・グリーンだ」




26歳の俺は商学部を卒業して、イギリス系外資企業に就職。海外事業部で学び、4月から専務秘書に抜擢された。目の前の人物は、イギリスに本社を置く大企業の直系親族の一員。


イギリス人の母親とドイツ人の父親を持ち、母親が創業者一族。オックスフォードを卒業し、本社で実力者として君臨。30歳の若さで日本とアメリカ、インドと各国支社を飛び回っている。


この企業は、日本に30年程前支社を作り、多岐に渡り事業を展開している。俺はある目的を持ち、この企業に就職した。勿論、専務秘書となるべく、功績をあげ、着々と作戦を立て、戦力的にこのポジションに着任したのだった。



「君は、大層優秀だと聞いている。拘束時間が長いが、休憩時間は私室を使ってくれ。仮眠室が2部屋ある。左側が私だ。君は右側の部屋だ」


「はい。分かりました。宜しくお願いします」


俺は、今回3回目になる、このやり直し人生に気合いを入れて、返答した。






*****************






「しっかりしろ!救急車を呼べ!!ああ酷い…」



救急車…?なんの為に?



何があったのかと…直後に痛みに呻き声を上げた。声が出ない。手も動かず冷たい空気の中、生温かい何かが触れる。



「……か、はっ」



次から次へと口から血が溢れ出し、呼吸を遮られ噎せ返った。



「……っ……ふっ」



気道に血液が入り込み、肺を塞ぎ呼吸が出来ない…。身体が切り裂かれる痛みが…段々麻痺してきた…。



「おい、救急車まだか!?」



周囲の人の会話が聞こえる…。



俺は頬に次々と落ちる雪の冷たさを感じながら、そうか…刺されたのだと思い知る。



(ははは、ついてねぇなぁ……)



俺はリチャードがいるレストランに目を向けた。




騒動に気が付いたレストラン従業員達の騒ぎに、中から客が次々と飛び出して来る。その中にリチャードが俺の姿を探している声が聞こえる…。



「昭人!!昭人ーーーー!!」



倒れた俺を見付けコートを落とし絶叫している。血相を変え俺に駆け寄ってくる。



「昭人!!昭人……っ!!」



(……ああ、嬉しい…俺の手を握ってくれるのか)



俺はほっと息を吐き生まれて初めて神に感謝した。2度目の死は、リチャードではなく良かったと笑みを浮かべる。




(……これ、死ぬな。3回目でリチャードに又会えると良いなぁ)




腕も脚も動かず呼吸もろくにできず、弱い心臓の音。今回の生も酷く痛く苦しくはあったが、不思議と死への恐怖は無かった。今度こそ…今度は幸せになりたい。貴方の傍で…。




「しっかりしろ!!誰か!助けてくれ…私を置いて逝かないでくれ…。お願いだ…頼む」






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