弥勒が目指す最強 ①
パーティも終わりに近づき、ミケとリュウはその場にうなだれていた。
「うちなんかなぁっ……」
「……」
ミケは間違って城崎が頼んだウーロンハイを飲んでしまい酔っていた。リュウは酒を飲まされ、酔ってしまっている。
城崎もすっかり酔っているようだ。弥勒と私はまだ飲み足りないという感じだが。
「酒強いんだな」
「まぁな。他の奴からはザルだって言われてる」
「すごいな」
私は体質なのか酔うことはそんなにない。
だから飲むときは結構飲むほうだと思う。弥勒もそんな感じじゃないだろうか。もうこの場には未成年の人以外は酔っ払いしかいなさそうだ。
「兄さま、あそこでお父様が酔いつぶれております」
「……父さんなんで酒飲めないのに飲むかな。すいません弥勒さん。俺らはこれで」
「ああ。父によろしく伝えておいてくれ」
そういって八十家の人は帰っていく。
ほかの人もそろそろ帰ろうとしているのか、弥勒に挨拶をしにきていた。弥勒もありがとうとそれぞれに述べる。
そして、気が付くと会場には私たち五人しかいなくなっていたのだった。
「さて、俺らも解散するか。お前ら三人送ってってやろう」
「頼む……。飲みすぎた」
「ひぐっ……ひぐっ……」
「…………」
「幽音は……俺とまだ飲むだろう?」
「ああ、望むところだ。限界まで付き合ってやろう」
弥勒おつきの人たちが三人を連れて行った。
会場には私と弥勒の二人が残っている。私はワインを傾ける。
「俺が女と二人で飲むなんて誰もが信じられないだろうな」
「女が嫌いなんだったか」
「ああ」
「それは今もか?」
「もちろんだ。俺が持つ地位と金にしか目をくれない女ども。俺を騙そうとメイクをして言葉を巧みに操ってくる。そんな相手しか見たことがない。だから……俺はお前と猫原が新鮮に思えるんだ」
弥勒はワインを揺らしながらそう語った。
そりゃ女と言わず誰だって地位や名声、富は欲しいものなのだと思う。金がなくちゃ生活できないし生活水準を上げるためにはやはり金。
だからこそ弥勒に近づこうとする。それを弥勒は悟りすぎており、女が嫌いとなっているのだろう。
「幽音は……本当に俺の金や地位には興味なさそうだな」
「まぁな。今の生活でだいぶ満足だ」
「お前はむしろ欲がないな」
「そうか? 欲張りだと自分では思っているが」
「俺に何かを求めないことが無欲なんだよ」
そうなのか。
「だから、お前みたいなのがいてくれて非常に助かってる。ナックルのことも迷惑かけたな」
「いい。気にしてない。あいつにも理由があるんだろ? 女が嫌いになった理由。それを考えたら怒る気にもなれん」
「そうだな。確かに理由がある。俺は語れないがいずれあいつが話すだろうさ」
「その時を楽しみに待ってるとするさ。ワインお代わりだ」
「すごい飲みっぷりだな」
「飲むと決めたらとことん飲むのが私だ。酒をよこせ」
「欲張りだね」
さっきは欲がないとか言ってただろう。
ウエイターさんがワインを持ってきて私はワインを開ける。弥勒も飲み干したのでミロクのグラスにも注いでやった。
「ま、これからも頼むぞリーダー。私はお前を信用している。なんで最強になろうとしているのか、私からは聞かないでおいてやる」
「……気づいてたの? 最強を目指す理由があるって」
「そりゃあな。物事には理由がある。お前を見ていて最強を目指すということを言うような柄じゃなさそうだと思っている。最強だなんて小学生が考えるようなことだしな」
「……そうか。幽音は敏いんだな」
「馬鹿ではないさ」
私がそういうと弥勒はうつむいた。
「その、じゃ、聞いてくれ。もう知られてるんなら話してやりたい」
「おう。なら聞いてやろう」
弥勒は私の目を見る。
「俺には兄がいたんだ」




