剣道を始めた理由
王都を目指して歩くこととなった。
王都は平原を出てまっすぐ行けばあるということだ。馬車も使わずただひたすら歩く。歩いてるとき、お互いの現実での話をしていた。
「ミツネってなんで剣道始めたん?」
「きっかけは些細なことだ」
私が剣道を始めた理由。
「小学校の時に誘われたからだ」
「あら、興味があったからというわけじゃないんやね」
「ああ。小学校の時歩いてると剣道連盟に入りませんかというビラを配っていてな。どうしても入ってほしそうにしていたから入っただけだ」
きっと存続が危うかったんだろう。私の目を見て君入らないかと言われたのでしょうがないから入ってやった。そしたらのめりこんだというわけだ。
中学一年生の時は私に勝てる奴はいなくなり、そのまま次は剣術などを学ぶことにした。多分そのころには剣の道にはまっていたんだと思われる。
「そういうキャトラはどうなんだ?」
「うち? うちはまぁ、親が言ったからやな」
「親?」
「うち、割と親がろくでなしなんよ。昔から射的得意やったからアーチェリー選手になれって言われてなぁ。子供やったから拒否とかできんかった。で、小さいころからやらされてたんよ」
なるほどなぁ。私は割と自主的に入った形だがキャトラは違うのか。
「ま、楽しいしええんやけどな。こうなったらリュウも体操の世界に入った理由いいや」
「僕? 僕はまぁ、昔体操選手に会ったことがあって憧れて、かな」
「リュウが一番まともやん」
「そうだな。私は憧れとかそういうのはなかったからな」
ただなんとなくっていうだけなのだ。
「みんな理由があるんだな」
「そりゃそうやろ。で、ミロクもなんか理由があるんやろ? 最強を目指す理由」
キャトラが目を細めて言うとミロクは笑ってごまかす。目的はあるが言えないようなことととらえて間違いないだろう。
私はどんな目的であれど別に構わないが……。確かに気になるものは気になるか。
「っと、敵だよ」
私たちが話しながら歩いていると目の前に羊の魔物が現れた。
私は刀を抜く。妖しい刀に全員の視線が向けられていた。私はそれを気にせず、羊に切りかかる。
そして突進して攻撃してこようとした羊の魔物を切り捨てた。
「おしまいっと」
「……あの、ミツネ。その刀はなんや? どうみてもあんなちんけな街で見つかるようなものじゃないんやが」
「どこにあったんだそれは」
「なんかものすごくランクが高そうな武器だね」
この刀が気になるようだ。
「武器屋においてあったから決闘してもらってきただけだ。やはり刀のほうが私は扱いやすい」
両方に刃がついてるような剣でも十分に戦えるが刀のほうが納刀がしやすくいい。両方が刃だと手を切ってしまうかもしれないからな。
「そんなことできるんや……。うちもそういうの欲しいわぁ」
「スキルとかなんか手に入ってないか? そういう武器はスキルとかありそうだ」
「ん、あるぞ。月光っていうスキルだ」
「説明とか読んだ?」
「えっと、夜の時に装備しているとHPが自動で回復していくって書いてあるな」
「夜限定のリジェネ効果か……」
「あと同時にツクヨミの加護というものを手に入れたな。月魔法を使うことができるーとか」
月魔法の詳しい説明を見るとどうやら回復魔法+浄化魔法みたいなものらしい。アンデッドに有効だとか。それぐらいだ。
私なんかまずいものでも手に入れただろうか。
「もう遅いが色々とあの街を調べておくべきだったな」
「そうだね。もう遅いけど」
「???」
《見習い剣士レベルが1あがりました》
今そういう幻聴が聞こえてきたのだった。