月の刀
グラオスの街にはノンプレイヤーキャラクターというひとが経営する店があるという。
道具屋とでかでかと掲げられた看板を見て、ここがそうなのだと理解し店の扉を開けた。中は瓶に入った液体などたくさんのものが置かれている。
「いらっしゃい」
「ちょっといいだろうか」
私は店主に声をかける。
「スライムの核を売りたいのだがどうすればいい?」
「見せてみろ。買い取ろう」
というので私はアイテムを入れる袋からスライムの核を取り出す。この袋は不思議で何かしまいたいものを近づけるとしまわれるし手を突っ込んで入れてるものを想像すると簡単に取り出せるという魔法のアイテム。もちろん上限はあるが割と便利だ。かさばらないしな。
「こりゃまたずいぶんとスライムの核を……。レアもところどころ混じっている」
「レア?」
「そうだな。これなんかはレアだ」
と、店主が持ったのはスライムの核。
それは確かに不思議な色をしている核だった。全部赤茶色なのにそれだけ金の色だったりしている。どういうことなんだと思っていたがレアだったか。
「そうだな。全部で3500ギンっていうところか」
「そんなにもらえるのか」
「普通のスライムの核が100、こういう一見普通のっぽいけど少し色が違うものは150、そしてこの金色の核は一つ300ギンっていう相場なんだ。全部売るか?」
「売る」
スライムの核30個すべて売り払った。
本当はもっとスライムを狩っていたがこのアイテム袋というやつの制限が30個なのでそれ以上は取れなかった。
私は店主から3500ギンを受け取り財布にしまう。所持金は今のところ4500ギンだ。まだ貧乏。
だがしかし、武器を買い替えたいな。スライムが一撃で倒せるようにステータスとやらが成長はしたがこの武器のままは少々困る。
「すまない、武器屋ってどこにあるだろうか」
「武器屋ならうちを出てすぐ隣さ」
「感謝する」
私は店を出て隣の店に入る。
店内に入ると剣などが展示されており値段も下に書いてあるようだ。一番高いもので1万ギン、安いもので2000ギンとそこまでいい剣はなさそうな気もするが。
うーむ。めぼしいものはないな。刀みたいなものもなさそうだ。
「お嬢さん、何かお探しでしょうか」
「ああ、剣が欲しくてな。こう、片っぽしか刃がない剣なんてのはないだろうか」
「刀のことでしょうか? 刀ならありますが……」
「あるのか!?」
なんだ、あるのなら早く見せて欲しいものだ。
「あれをお譲りするのは強い人と決めておられるのです。私に勝てなくてはあれは売れません」
「そうか。ならば一戦交えてくれないだろうか」
「失礼ですがあなたのレベルは?」
「18だ」
私がそう言うと店主はため息をつく。
「話になりません。レベルを最低でも30までは……」
「やってみないとわからないだろう。店主よ」
私がそう言うと店主は私を睨む。そうでなくてはな。
店主は近くの剣を取った。表に出ましょうというので私も店の外に出ると、店主は剣を構える。
「これでも俺は強いぜ」
「そうか。強いやつなら手加減はいらんな」
私も剣を抜く。
剣を構えると店主は剣で切りかかってきた。私は剣をはじく。太刀筋が読みやすい。手から剣が離れた店主は驚いていた。
そして私は店主の喉元に剣を突きつける。
「チェックメイトだ」
「参り、ました」
店主は両手を上げ降伏する。
私は剣をしまい、店主にこれでいいだろうというと店主は「十分です」と言って店の中にはいっていく。そして出てくるとおもったら鞘に入った刀を私に手渡してきたのだった。
「月刀ツクヨミ……。という刀です。お客さんなら十分に使いこなせるでしょう」
「ツクヨミ……。いい名前だな」
月の女神ツクヨミの刀なのかもな。
私はツクヨミの刀を手に取り、引き抜いてみる。刀は紫色の光を反射しており、妖しい雰囲気がある。これもこれでまた味がある。
柄もいい。鍔も月の形をしている。ツクヨミがこの刀に宿っているかのような感じがするな……。
「あ、そうだ。金……こんないい刀だから金が足りないと思うが」
「いえ、それは無料で差し上げましょう。あなたみたいな剣士と出会えた記念として」
「……そうか」
私はツクヨミを腰に差す。
なんだか侍っぽい。かっこいい気がするな。
「ありがとう。感謝する」
「いえ。こちらこそ毎度ありがとうございました」
私は店を後にすることにした。
この刀でしばらくはやっていけそうだ。そう思っているとまた幻聴がする。
《スキル:月光 を取得しました》
《ツクヨミの加護 を取得しました》