闇の王と戯れたとて ③
崩れ落ちた魔王城、空に見えるキレイな星々。
その星もろとも飲み込むような魔王。私は少し侮っていたのかもしれない。魔王城が壊れたことは予想外だった。
ミロク達は無事だろうか……という心配もあるが、今の心配事は目の前のものだ。
「巨大化はゲームのセオリーか?」
臆すな。ビビるな。
でかいだけの相手にはビビる必要もない。今更ビビったところでどうなるというのだ。私は自分の恐怖心を気合で押さえ込む。
いつもはこんなこと思わないのだが……。何かの魔法だろうか。
『ふはははははは! 貴様などそこらへんの塵芥と同じ! この俺様には絶対勝てないということを教えてやらなくてはな!』
頭上に大きな拳が飛んでくる。
私は足に思い切り力を籠める。精神に働きかけるスキルがあるのか、恐怖心で足が動きづらい。目の前の相手を怖がっているかのように足が思うように動かない。
だからこそ、力を籠める。
「なんと!」
私は地面に落ちた拳を駆け上がっていく。
そして、そのまま刀をその腕に突き刺し腕の上を走る。魔王は痛そうに暴れだした。離れろと大きな声で叫ぶ。
私は刀を引っこ抜き、地面に降りた。
『くぅ……。恐怖に打ち勝つ精神力……』
「やはりなにかデバフみたいなのをかけられていたのか」
恐怖心をあおるデバフをかけられていたのだろう。だから少し動きが鈍くなっていたというわけか。厄介なデバフを持っているな。
だが、少し落ち着いた。恐怖心は今はない。
『ならこれではどうだ!』
と、思い切り地面に拳を打ち付けていた。
すると、突然木のようなものが私の足を包み込む。不意にやられたせいでまともにくらってしまい、動けない。
これはまずい。
『はっはっは! 動けなくしてしまえばこちらのものだ! 所詮は人間よ! この絶対的な王者である俺には勝てやしないのさ!』
魔王は高笑いを抑えきれていないようだった。
そして、死ね、と拳が迫ってくる。避けるすべがない。木を切って脱出するにもこの木の大きさは……。
すると、目の前にマツリが飛んできて、マツリが拳を抑える。
「ほら、今のうちに切ってください!」
「マツリ!」
「私の力も限界というものはありますからね……!」
そういうので私は刀を木の根っこに振り下ろす。一発じゃ切れなかった。何度も振り下ろしていると、拳がぐんっと近づく。
マツリは苦しそうな顔をしている。
「早……く……」
「すまない! 本当に切れないんだこの木は!」
「うぐぐ……」
魔王の全力の力を押さえ込むのでやっとなマツリ。
このままだとマツリもろとも二人死んでしまう。私はリスポーンするがマツリが死んだら……。それを考えると怖くなってきた。
私はマツリを突き飛ばす。
「なにを……!」
「しょうがない、私は死を受け入れる」
これは私の負けだ。もうなすすべもない。
目の前に拳が迫ってきた。私は目をつむる。
だがしかし、待てど暮らせど衝撃のようなものは来なく、目を開けてみると。
「オラァ!」
と、ナックルが拳を思い切りぶんなぐっていた。
ナックルの拳の連撃が徐々に押し返している。
「ナックル!?」
「遅くなったな」
すると、銃声が聞こえてきた。その銃弾は魔王の頭に当てられていた。
「キャトラか!」
「魔王城が壊れたんはこいつのせいか……。ラッキーやったで」
「とりあえず切るよ。見つけたこの斧で切るか」
と、近くに寄っていたリュウが斧を振り下ろす。
私を固定していた木が切れた。
「ありがとな、リュウ」
「うん。遅くなってごめんね」
「気にするな」
どうやら三人は無事だったようだ。だがしかし、アヴァリティア、ミロクの姿がない。二人はどうしたのだろう。
私はリュウに問いかけようとすると。
「とりあえず回復してやるぜ! 本職じゃねえしレベル低いからちっぽけな回復量だけどな!」
「すまないな。遅くなった。第二形態かこれは。よくここまで削ったものだ」
と、ミロクが私の肩をたたく。アヴァリティアが回復してくれる。
「よし、ミツネ。最後まで頑張るぞ。これがラストの決戦となるからな」
「ああ。そうだな」
私は刀を構える。




