披露宴にて ②
挨拶もほどほどで終わり、今度はみんな席に座ってスライドショーを見ることとなった。
私はワインを片手に弥勒の小さい頃の写真を眺める。小さい頃の弥勒も今と同じようにりりしい顔立ちをしているが、一枚だけ顔立ちが違う写真があった。
「……懐かしいですね。お兄様が亡くなって翌日に撮影しておりましたね」
「そうだな」
弥勒の兄さん……。あの事故で死んだ兄か。どうりで泣きまくったように腫れぼったい顔をしている。
「お、高校の時の写真だぜ? こっからは俺様も映るからな」
「宍戸も同じ高校だったか」
と、宍戸が言うように白衣を着た宍戸が弥勒の隣に立ってピースサイン。そして次の写真では弥勒を脱がせている写真だった。弥勒はパンツ一丁。
思わず私は吹き出してしまった。
「……なんで脱がされたんでしたっけ?」
「やめろ、思い出させるな」
「俺様は覚えてるぜ? 弥勒が琴音のことについてうじうじ悩んでいたから喝入れただけだ」
「わ、私のこと?」
「あの頃はお前さん……。暴言とか吐いてたろ? 俺様に相談に来たんだよ」
宍戸は懐かしげに微笑む。
「これは最近の写真だね」
「うちらも映っとるやん」
と、撮られた記憶がない写真がずらりと映されていく。私が映っている写真は一つもない。そこまで写真が好きというわけでもないし、映るのは苦手だからいいのだが、気づいているやつはいるのだろうか?
すると、見ていたスライドショーは突然映像に切り替わった。
『さて、これを結婚式で流しているが……。気づいたことはないだろうか』
と、映像の中の弥勒が問いかけてくる。私は弥勒を見ると弥勒は笑っていた。
「気づいたこと? うーん。どれかの写真がフェイク! とかやろか」
「心霊写真じゃない?」
「バカなこと言うなやリュウ!」
弥勒は笑っていた。
笑いながら、私の近くに来る。琴音さんと弥勒が私の隣に立つ。
「実はこのスライドショー。今の友人たち……猫原たちの姿も映っているが幽音の写真が一枚もない」
「あ、言われてみればそうやな」
「撮らなかったの?」
「写真撮られるのが嫌いとは私言っていないだろう? なぜ知ってる……」
「それは注目を集めるためさ」
すると、弥勒と琴音さんは私にかしずいた。
「俺たちを結び付けてくれたのは幽音だ。友人として。最大限の感謝を述べたい」
「同じくです。あなたがいたからこそ、私たちは今こうしているのです」
私の右手を弥勒が、左手を琴音さんが持つ。
「先ほども……。出会った時も。優しくしていただけました。私はその恩義をまだ返せていません」
と、何かを指にはめた。宝石があしらわれた指輪だった。
「なんだお前ら……」
「改めて、ありがとう幽音。俺の夢に付き合ってくれていること、俺と琴音を繋ぎ止めてくれたこと。お前が俺にしてくれたことはあまりにも大きすぎる」
「……そうか。私は何もしてないのだがな」
少し照れ臭い。
すると、後ろのほうから野次が聞こえてくる。
「琴音さんはプレゼント渡したのに社長はないのかー?」
「……ある。が、今渡せるものではない」
「今渡せるものではない?」
「この披露宴が終わったら見せよう。幽音にふさわしい感謝の品を」
と、にっこり笑う。
ハードル、めちゃ高いぞ。




