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◇ ウルシの周りで起きたこと

 俺は自分の車を運転し、神奈川にある松原さんを訪ねる。

 チャイムを鳴らし、誰かが出てくるのを待つと、扉が開かれ、出てきたのは男の人だった。だがしかし、見たことがない男の人だ。


「どちら様で?」

「ああ、私は不死帝といいまして、松原さんはいらっしゃいますでしょうか」

「ああ、いますよ。おばさーん。おきゃくさーん」


 そういって、奥からゴム手袋を履いた松原さんが出てきた。


「あら、弥勒さん。お久しぶねぇ。ささ、中へ」

「失礼します」


 靴を脱ぎ、揃えてスリッパに履き替える。

 俺はソファに座ると、お茶を出された。


「それで、今回はどうしたのかしら。またウルシについて聞きたいことでもあるの?」

「ええ、ウルシさんの周りで……。ストーカーなどのような被害はなかったでしょうか」


 俺がそう聞くと、目を丸くして驚いた顔をしていた。


「なぜそんなことを?」


 と、訪ねてくる。ま、そう思うのも仕方がない。


「実はですね……」


 俺は昨日起きたことを全部話した。

 おばさんは口に手を当てて悲しそうな顔をしていた。この人はもう恨んでないんだな……なんて考えつつも、俺は話を続ける。


「人殺しであることをその男は知っていました。ですが当時の同級生は事故だということは認知しているのでその線は薄いかと思いまして。となればストーカーのような奴らが起こしたものだと。そういうわけです」

「……あの幽音ちゃんが」

「命に別状はありません。彼女はきっと死んでも本望だったでしょうが……。彼女の罪は許されたはずです」

「そう、ね。ストーカーね……。確かに一人いたわ。ウルシが死ぬ前の一か月かそこら前に帰り路に誰かにつけまわされているってことがあったわ。その子はちょっとおかしな子だったらしくて雨の日でもないのにレインコートを着ていてねぇ」


 レインコート?

 間違いない。その男か。


「注意してもその男の子は執拗につけまわしたのよ。家までついてきてねぇ。休みの日も家の前の電柱で見ていてねぇ。怖くて警察も呼んだけどそれも無意味で……。怖いから引っ越そうとした矢先にウルシが死んで……。多分その時もいたのよ。救急車で運ばれるウルシと、やってくる警察で人殺しだと分かったんじゃないかしら」

「なるほど……」


 一人の女性に執着するほど執念深い男だったようだな。

 その思いはウルシが死んでも消えず、ウルシを殺した幽音に復讐をしようとでもしていたのだろう。

 だがしかし、小学生を襲っているのは理由がわからないままだが。


「とりあえずお見舞いでもいこうかしら。幽音ちゃんが心配だわ」

「行かなくていいだろんなもん」


 と、先ほどで迎えた男が文句を言っていた。


「ウルシを殺しておいてのうのうと生きてるやつだろ? 刺されて当然のことをしたじゃねえかよ。自業自得だっての」


 そういうと、城崎はその男の胸ぐらをつかんだ。


「テメェ、馬鹿にしてんのか?」

「……ほんとのことだろうがよ。俺のウルシを殺しておいてさ」

「失礼だけれど、あなたはウルシさんと何か関係が?」

「俺はウルシの従弟で、一番大事にされてたんだよ。お前らにわかるかよ。ウルシが死んで俺がどんだけ絶望したか」


 ……親族か。許せないのは無理はないが。

 だからといって私の友人を侮辱していいことにはならんな。


「優斗。やめなさい。あなたが許す許さないを決める権利はないわ」

「俺だって当事者だろ。そのぐらいは……」

「私は許してるのよ。私たち家族は。幽音ちゃんだって殺意があって殺したわけじゃないの。それは昔から言ってるわよね?」

「……でもっ!」

「幽音ちゃんは今でも自分を許してないの。だからこそ私たちが許さなくちゃならないの。じゃないとあの子はたぶん、自殺の道を選ぶわ。それでもあなたは死んでほしい? あの子が自殺したら私たちのせいなのよ?」


 この方たちは幽音が自害でもしたら自分のせいだと言いそうだ。

 どちらも優しいからこそ、負の連鎖が始まると終わらなくなる。自分のせいで死んだなんて、それこそ心残りになるだろう。


「……」

「ま、優斗は昔からウルシにべったりだったものね……」

「……すまんかった」


 優斗という男は素直に謝った。


「お見舞いに行くなら俺が案内しますよ」

「ええ、頼むわ。優斗、車出せる?」

「……出す」


 そういって、外に向かう優斗。すると、叫び声をあげる。


「どうしたの!?」

「すっげえ高級車が前に止まってやがる!? 誰んだよ!?」

「あー、弥勒、お前の……。だから俺これはやめろつったのに」

「これはすごく運転しやすいからな……」

「お、お前の……。いや、あなたさまのですか!?」

「ん? ああ、そうだが」

「すっげえ……。これ世界に6台くらいしかねえやつじゃん……」


 と、触らずに見とれていた。


「運転してみるか?」


 と、俺はカギを差し出すと。


「はああああ!? いや、無理無理無理! 事故起こそうもんならそれこそ自殺もんじゃねえかよ! 修理にいったいいくらすると思って……。それにこんな高いの運転したら緊張で運転どころじゃねえよ!」

「そうか? ま、なら仕方ないな。俺の車の後ろについてきてくれ。ゆっくりいくから」


 そういって俺は車に乗り込んだ。









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笑う門には福来る!
新作です。VRMMOものです。
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