酒吞童子 ②
顔が赤く染まった酒吞童子。
酔っ払っているのか、足元がおぼついていない。が、油断できない。目はきちんと玉藻前をとらえている。
刀を鞘にしまった。かと思ったとたん、強い風が吹いたかと思うと、玉藻前は全身から血を出していたのだった。
「なぜよけない! お前なら避けることができただろう!」
「避けるのも面倒だったもんでのぅ。大したダメージにならんな」
と、玉藻前は尻尾を逆立たせ、宙に浮く。
玉藻前の周りに火の玉が湧き出たかと思うと、酒吞童子めがけて飛んで行ったのだった。酒吞童子は太刀でその火の玉を切り裂いているが、切り裂いた火の玉は再びくっつき、酒吞童子に当たる。
「魔力の使い方なら妾のほうがやはり上じゃのぅ。かーっかっか!」
「あなた、本当に性格悪いですね……!」
「性格はこれでもよいほうじゃて! それに、もうわかっとるであろう? 妾の圧倒的な強さ! 妾も驚いたんじゃが、人間に近いものにテイムされることによって力が少し増すらしいからのぅ。チェシャ猫やヤタガラスも……昔とは違っておった。テイムした主人の力が流れ込んでおったのじゃ」
「テイムされたら……?」
そうなのか。
テイムしたらそのモンスターは少し力を増すということらしい。玉藻前が言うのなら本当のような感じがするが……。どうなのだろうか。
私はテイマーではないからよくわからんのだが……。
「詳しく聞かせてくれないか」
「うむ。ま、とはいっても妾もそこまで深く知っているわけではないがの。妾が知っているのは妾達Sランクに指定されている魔物は一人までしか契約できなさそうということじゃ」
「一人まで? ウキタとかはSランクに近い気がするが」
「力が流れ込んでくるのは、じゃ。妾はミツネの魔力が少し流れておるが……。ウキタたちには感じぬからの」
へぇ。そうなのか。
強くなるのは一体までということなのだろうか。いや、だとしたら玉藻前が強くなるわけないか。玉藻前の前にハヤテをテイムしているのだしハヤテが強くなるはず。
ランクによって決まっているのかもしれないな。
「つまり酒吞童子はSランクの魔物をテイムしていない奴にテイムしてもらえば強くなれるっちゅーわけやな」
「なるほど……。つまり僕は玉藻前のご主人……。ミツネさんという侍の人にはテイムされたらだめなのですね。魔力に関しては玉藻前さんの右に出る魔物はいないので信用しますが……。本当なのですか?」
「信用ならんというのならそこの娘……。そこの猫の娘で試してみるといいじゃろうて。そいつはまだ何もテイムしておらん」
「ほう」
そういうと酒吞童子はぐいっとキャトラに顔を近づける。
「なら試してみてもいいですねぇ。あなた、僕に興味はございませんか? 僕はこれでも好奇心旺盛なのです。気になったことがあったら調べてみたい。玉藻前の言うことは気になります。僕をテイムする権利を差し上げますからテイムしませんか?」
と、一気にまくし立てていた。
「え、あ、えっと?」
「遠慮なさらず。僕はこれでも強いですし呼び出されたら戦ってあげましょうとも。僕は今宵、あなたの騎士に。どうです?」
「する!」
と、酒吞童子のイケメン顔に落ちたのか顔を赤らめて食い気味に返事をしていた。
「したるで! で、テイムするにはどうしたらええんや?」
「僕の名前を呼んでいただければ。酒吞童子、です。ああ、あなたはまだ言わないでくださいね。僕はテイムされ準備中の状態ですから。あなたに呼ばれるとあなたにテイムされたことになりますからね」
「わかっている。キャトラ、呼んでやれ」
私がそういうと、キャトラは名前を呼んだ。
すると、酒吞童子の髪が逆立った。
「おお! すごい! 確かに力が流れ込んでくる感覚! 玉藻前の言うことは本当だった! はは、感謝いたしますよキャトラ殿! 僕はさらに強くなれました!」
「ど、どういたしまして、やな。なぁ、ミツネ。これ討伐扱いでええんか?」
「ま、いいんじゃないか? テイムしたからもう人間に危害を加えることはないだろ。あの酒吞童子の右手にはお前専用の紋章が浮き出てるからすぐテイムされた魔物だって気づかれるだろうし」
「なら、依頼達成報告できるな! 強い魔物テイムできて依頼も達成できた! 今日はハッピーデーやな!」
キャトラは上機嫌だった。
酒吞童子テイム条件
・彼の好奇心を刺激すること
(隠し条件:同族の上位互換、もしくは同族の神に近い存在であること。酒吞童子の種族は鬼武人であるので、最低でも鬼神以上であることが条件)
玉藻前テイム条件
・彼女の庇護欲を刺激すること
(隠し条件:同族の上位互換、もしくは同族の神に近い存在であること。玉藻前の種族は妖狐であるので、最低でも狐神以上であることが条件)
八咫烏テイム条件
・彼の知識欲を刺激すること
(隠し条件:同族の上位互換、もしくは同族の神に近い存在であること。八咫烏の種族は鳥猛人であるので、最低でも鳥神以上であることが条件)
チェシャ猫テイム条件
・彼の恐怖心を和らげること
(隠し条件:なし)




