弥勒の業務
居合はやはり集中力を使う。
楠音がご飯を作ってくれていたので、私たちはテーブルに座りご飯を食べていた。
「はい、ミソカー。ごはんだよー」
「んにゃっ」
ミソカにもご飯を上げ、私たちは白米をほおばる。
「別に鍛えるのは弥勒だけでお前らは付き合わなくてもいいんだぞ?」
「まぁまぁ。僕たち一緒のギルドで戦う仲間でしょ? 僕もちょっと剣術に興味あるんだよねー」
「まぁ……俺も」
「うちは一人だけはぶられるの嫌やからな……」
なるほど。
まぁ、興味を持ってもらえるのなら万々歳だ。これはゲームの影響もあるのかもしれないな。最近、剣道や剣術を教えている人たちから若い子の入門が後を絶たないのだと言っていたが……。ゲームで剣を使うから動きを覚えておきたいのだろうな……。
嬉しそうに語られていて幸せそうだったな……。私たちにとってきっかけがなんでも興味を持ってもらえること自体がうれしいからな。
「じゃあしばらくゲームはログインしないのか?」
「いや、するとも。持ってきてるしな」
「昼は剣術、夜はゲームでどうかな?」
「体操とかの練習は?」
「僕は目立った試合はないし……。それに、数日くらいは練習しなくても取り返せる範囲内だからいいかな」
「俺も殴り合うだけだし筋トレさえしてれば大丈夫だ」
「うち普通に大会あるんやけど……」
キャトラは大会があるようだ。
「ま、心配すべきは俺らじゃねえだろ。弥勒、仕事の都合とかいいのかよ?」
「うーん。昨日は不意打ちで偉い人来たけど、その予定はしばらくないし……。俺の会社のやつらは有能だから俺なしでも仕事じゃんじゃん進めてるからな。ま、必要事項があれば連絡してくれと言ってるし、こっからなら戻れる範囲内だから十分だろ」
「ならいいんだけどね……。多分僕たちの中で一番多忙なのが弥勒だからなぁ」
「会社をいくつも経営していたら必然的に忙しくもなるさ」
そう話していると電話が鳴っていた。
弥勒の携帯から鳴っているようで、弥勒は電話を取る。
「なんだ? 何か問題が発生したか?」
弥勒は本当にできる男だよな。こういう電話してるさまも本当に偉い人だ。実際偉い人のほうには入るんだろうが……。
といってると、弥勒は突然大声で叫ぶ。
「あの野郎やらかしやがったのかよ! とりあえず会社に残ってる奴ら全員で復旧作業だ! データを復旧させなきゃ損害だからな! 残業覚悟でやってくれ! 手当は出すからな!」
何かへまをした人がいるのか。
弥勒は電話を切り、みそ汁を一気に飲み干した。
「悪い、ちょっと会社に向かう」
「なにかあったのか?」
「証券会社運営してるのは知ってるだろ? そこで働いてる使えねえ社員がサーバーにお茶ぶっかけやがった……。サーバーが故障してダウン。データとか全部吹っ飛びかねないんだよ。こういうのは信頼に関わるってのに……」
「随分とまぁ派手に……」
「不倫が発覚した際にクビにすりゃよかった……。情けでおいてやったのに仇で返しやがって……」
弥勒は立ち上がり、そのまま玄関に向かう。
私も後を追うと、弥勒は私についてきてくれと言ってきたのだった。
「何で私が? 役に立てないぞ」
「その女が暴れてるらしくてな。そいつ、空手の有段者だったから誰も手を出せねえ。怪我したくねえからな……」
「なるほど。止めろ、と」
「疲れるのを待ってもいいが、暴れすぎて備品をこれ以上壊されるのもだめだからな……」
「わかった」
私は弥勒と一緒に車に乗り込んだ。




