ジンギスカン ①
舞台は現実に戻り、旭川に私たちはやってきていた。
北海道旅行は急遽今日で終わり。というのも、弥勒を目的に大事なお客さんが海外から来たようで、すぐに帰らなくちゃならないということで旭川の空港に向かっている。
私たちはタクシーに乗っていると、楠音の腹がなった。
「おなかすいた……」
「……空港で何か食べれるかな」
「いや、どっか寄っていこう。昼ごはん食べる時間くらいならあるだろうし……。楠音ちゃん、何が食べたい?」
弥勒は楠音のほうを向き尋ねる。
「お姉ちゃんが食べたいもの……」
「私か?」
私が食べたいもの?
「別に楠音の食べたいものでいいんだぞ」
「いや、お姉ちゃんのでいいよ。お姉ちゃん北海道来て全然楽しめてないから……」
優しいな楠音は。思いやりができるいい子だ。
ならお言葉に甘えて私の食べたいものにしよう。私の今の気分は肉なんだよな。北海道といえばの肉料理は……。ジンギスカン……。スープカレーでもいいのだが。
うーん。肉、だな。
「ジンギスカンだな」
「わかった。空港近くに俺の知ってるやつが始めた焼き肉屋あるからそこにいこう。運転手、さるのやに向かってくれ」
「かしこまりましたぁー」
弥勒は電話で後ろのタクシーに乗っている城崎に電話をかけていた。
「城崎、ちょっとさるのやという店に行くことにしたからお前らも来てくれ」
そういって、私たちはさるのやという焼き肉屋に向かったのだった。
さるのやという店は普通の外装だった。
中に入ると多少のお客さんはいるが全然すいている。昼というのもあるだろうな。夜になるとこれ以上の客がいそうだ。
店員さんがやってきて、人数を聞いてくる。
「六人だ」
「かしこまりました。席へご案内いたします」
私たちは個室に案内され、それぞれ席に座る。私は真ん中に座り、隣にミケと楠音が座る。メニュー表を弥勒から渡される。
メニュー表を開くと、定食もあるが、焼肉もある。目の前に焼肉用の網があるから当たり前なのだが。
「ジンギスカンと……。そうだな。牛タンネギ塩レモン、ハラミだな。他に頼みたい部位とかあるのか?」
「うちつくねー。あと野菜セットも頼もうや!」
「鳥皮あるんなら鳥皮もだな。ホタテもあるのか? なんでもあるな。ならホタテも」
「ジンギスカンにホタテに牛タンネギ塩レモン、ハラミに鳥皮、野菜セット……。この店は肉じゃなく海鮮もあるからな。牡蠣とかもうまい」
「なら牡蠣も食べるか……」
「ま、いったんこの辺でええやろ。楠音ちゃん、ボタン押してくれへん?」
「はーい」
楠音は店員を呼ぶボタンを押した。
「はーい。注文お決まりでしょうか」
店員がやってきてミケが注文を言っていく。
「あとやめらん塩キャベツ、生ビール一つ」
「あ、なら俺も酒のも。俺にも一つ。弥勒たちはいらねえか?」
「俺はこの後あるからな……」
「酒飲みたい気分じゃないからいいや」
「私オレンジジュース!」
「かしこまりました」
注文を聞いて行ってしまう店員。すぐに戻ってきたかと思うと手にはキャベツがあった。
「て、店長が急いでこれをお出ししろと……」
「そうか。ありがとな」
「は、はい。ではゆっくりしていってくださいませ」
キャベツが入ったボウル。私はキャベツを一枚食べてみる。
「うまい。塩キャベツはやはり焼肉には欠かせんな」
「あ、ほんとだ。これおいしい。これ単品でも僕いけるかも」
「ちょっとしょっぱい気もするなぁ」
「それがいいんだよ。この塩味が肉の脂をもっとうまくしてくれるんだから」
「そういうもんなんかねぇ」
焼肉は始まったばかりだ。
ちなみにジンギスカンは最初からタレにつけてあるものと焼肉のようにたれにつけて食べるものがあります。うちはタレにつけてあるものを食べてます。




