幽音、絶不調
夜行バスに乗り、目をつむる。
夜の八時近くに出たバスは四時間ぐらいかけて12時に網走についたのだった。バス停の前に、弥勒たちが立っている。
「待たせたな……」
「お疲れだな」
「クマと対峙した後だからな……」
明日はきっと筋肉痛だろう。鍛えてはいるが、今現在筋肉がものすごい悲鳴を上げている。
「で……ホテルどこ……だ……」
「……幽音?」
頭がくらくらする。
私は弥勒のほうに倒れこんだ。弥勒は私のおでこを触る。
「す、すごい熱だぞ幽音!?」
「なんか……行くときは平気だったんだけど……。ついてからものすごくふらついて……。で、出も大丈夫だ。私はまだ……」
「無理すんな。俺がおぶっていってやるから」
と、城崎がかがみ私をおんぶした。
情けない……。楠音の前で……。なぜ私はこうもうまくいかないのだ……。クマに襲われるわ、事故にあうわ熱を出すわ……。
北海道は私を拒んでいるのかもしれない……。
「とりあえずホテルに急ごうぜ。こんな気温だ……。熱がひどくなる」
「そうだな。とりあえず転ぶなよ」
「ああ」
城崎は足早くホテルまで向かうのだった。
網走のホテルの一室のベッドに私は寝転がる。ミケが自販機でホカリスエトというスポーツドリンクを買ってきてくれた。
「ほんっとなんで次から次へと災難が襲うん? 北海道に来てから幽音ついてなさすぎやろ……」
「お姉ちゃん大丈夫……?」
「いや、もう本当になんでなんだろうな……」
私は目をつむる。
今日はすんなりと眠れるかもしれない。だがしかし、熱を出してるときは眠るのが億劫でもある。私は……気が弱っているときなどには更に追い打ちをかけるかのように悪夢を見てしまうのだ……。悪夢を見た後熱はすぐに下がるようになるんだが……。
悪夢はみたくない。寝たくないなぁ……。
「……。ミケ、その、なんだ。私、いろいろと台無しにしてるだろ。ごめんな」
「ええっちゅうねん! 全部巻き込まれとかそんな形やん! 台無しとか思っとらんよ! 命あってよかったやんか!」
「……そうだな。クマに襲われた時は本気で死にたくないと思っていたからな」
「ほんとよう勝てたなあんた……」
火事場の馬鹿力というやつだろうな。死にたくないから必死になっただけだ。人間追い詰められると強さが増すのだろう。
「……その、多分うなされるかもしれないからうるさくしたらごめんな」
「うなされる?」
「私は熱を出すと悪夢見るんだよ……。昔から。だから今のうち謝っておくよ。多分めっちゃくちゃうるさいから」
「わかった。とりあえず電気消すで。楠音ちゃんはうちとねよっか。お姉ちゃんの風邪うつらんようにな」
「はーい」
電気が消される。
私は目をつむった。




