試練はまだ続く
ウキタからは様々な情報が手に入った。それが嘘かどうかはまだわからないが。
本当に魔王を裏切るのか、こちらに取り入って撹乱しようとしているのか。いまいち信用ならないので深くかかわらずを貫いたほうがいいかもしれない。
だがしかし、ウキタが話すことは辻褄が合っているのもあった。例えば魔王城。
魔王城の前には強力な門番がいると言っていた。リュウたちが行っていた強力な番人というのはその門番のことを言っているのではないか。
嘘だとわかる嘘ならまだしも、真実を混ぜられたら信用していいかどうかわからんな。
「幽音さん、退院おめでとうございます」
で、今現在、退院できることになった。
頭に包帯は巻いてはいるが、回復力が高く、ほぼほぼ傷がふさがっているらしい。交通事故による後遺症も見受けられないということで退院しても問題ないということだ。
私は弥勒にそういった類の連絡を送ると、今弥勒たちは釧路のほうにいるらしく合流したいが。
「……電車で四時間、か」
さすがは広大な大地というべきか。移動に時間がかかる。
電車で四時間なんて考えられんな……。東京から北海道に電車で行くのも四時間という。そういう距離を走るんだろう? さすが北海道……。
「それに今日電車に乗るのは避けたいな……」
吹雪ではないが、雪が降り積もっている。
冬用の靴を履いてはいるが、足に雪が入ってきて冷たい。今日はどこかで宿をとるとしたいが、初めての土地なので土地勘がない。
それに、登別の温泉に私だけ入っていないから登別に行きたいというのもあるな……。
「グルル……」
と、唸り声が背後から聞こえてくる。
犬にでも怖がられているのだろうかと思い振り返る。
「…………まずい」
そこには巨体のクマがいた。
冬のクマは気性が荒いと聞く。冬眠できていない穴持たずというらしい。飢えており、食べようとしてくるのだとか……。
なぜ私は北海道に来てこんな目にばかりあわなくてはならないのだろうか。私は近くにあった鉄製のスコップを借りる。
「グアアアア!!」
クマはとびかかってきた。
私にかみつこうとしてきたので、私はスコップの柄を咥えさせる。
「重い……! なんで私はこんな目にばかりあうんだ!」
精一杯の力を振り絞ってもやられそうだ。
死にたくない。私は死にたくない!
と、私が必死にあらがっているとサイレンの音が聞こえ、クマはびくっとそれに反応したが、私のほうをすぐにまた向いた。
パトカーが止まっているのが見える。だがしかし、構っている暇はない。
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫なわけないでしょう! こんのクソが!」
私は全力の力を振り絞る。
クマを押し返し、スコップを無理やり引きはがした。そして、私はスコップの先っぽを向け思い切り突き刺す。
クマの体にスコップが突き刺さった。血が飛び出る。
「はぁ……はぁ……」
スコップが突き刺さったクマは、ふらふらと歩くと、その場で倒れたのだった。
勝った……。いや、もうマジできつかった。爪が少し体に食い込んで血が出たのを除けば比較的軽傷といえるだろう。
「す、すげぇ……。じゃなくて。念のために病院行きましょう。救急車は……」
「いらん。自分で歩ける……。ったく、この前車にはひかれるわ、クマには襲われるわで北海道に来ていいことがひとつもないな」
私がそうぼやくと。
「警察の方ですかぁ!? 俺の家のスコップが誰かに盗まれてましてぇ!」
「…………」
そういえばあれは無断で借りたスコップだ。
クマに勝っちゃったよこの人……。




