欲望の迷宮 ①
とりあえず教会で状態異常を解いてもらい、私は拠点に戻る。
拠点に戻ると、ミロクは一枚の紙を見ていた。
「なにしてるんだ?」
「ん? ああ、俺らへの直接的な依頼が来てな……。どうしたものかと思って」
「どういう依頼だ?」
私は紙をのぞき込む。
依頼人はロキ・エレバートン。公爵さんだ。公爵家の屋敷の地下にダンジョンができてしまったので破壊してもらいたいということ。
何人か冒険者を雇って潜らせてみたが帰ってくる気配がないらしく、実力がある私たちに依頼してきたようだった。
「いけばいいだろう? 何を悩む必要がある?」
「俺らは今北海道だ。今日は吹雪いているからこそゲームをしてるわけで、明日が晴れとかだったらログインはしないからな……。ログインしたくないのにこういう依頼は困るっていうのがある」
「なら私一人で行ってやろうか」
「冒険者が帰ってこないくらいの強さがある。ひとりで行けるか?」
「いける。玉藻前もいるし、マツリを連れてけばいい」
「私も行くんですか? なら準備しますねぇ」
玉藻前、マツリがいればきっと大丈夫だろう。
「なら頼んだ。ダンジョン破壊の仕方はわかってるよな?」
「ああ、最深部のダンジョンコアを破壊すればいいんだろう?」
それぐらいは知っている。
強敵蠢くダンジョン……。そういうのでいい。私に与えられる試練は強すぎるくらいがちょうどいい。
ひたすら戦うか……。
私はマツリを連れて公爵家の屋敷にやってきた。
ロキが直々に出迎えてくれ、ダンジョンができたという地下に案内される。地下のロキの秘密の研究室という場所らしく、鉱石が散らばっている奥のほうに木のドアがある。
ドアには鍵がなされており、出てこないような設計になっている。扉の横には何やら魔法陣があり、ロキ曰く帰ってくるための魔法陣らしい。この魔法陣が起動したところを見たことがないという。
「帰ってこないは本当か……」
面白い。
「じゃ、さっそく入るとしよう」
扉の鍵を開け、中に入る。
扉を閉じ、私はダンジョン内を見渡してみた。鉱石が埋められた荒削りの壁。宝石自身が発行しているのかダンジョン内は明るい。
とりあえず私は玉藻前を呼ぶ。
「なんじゃー……」
「手伝ってくれ」
「戦いかの?」
「ダンジョン攻略さ。戦いもある」
「ほほう、ダンジョンとな」
玉藻前の目が光る。
「ここが人が言うダンジョンか! なるほどのぅ! テンションぶちあがってきたのじゃ!」
と、なんか大興奮の様子だった。
何千年も生きているなら一回くらいダンジョンに入ったことありそうだが、玉藻前はダンジョンに入ったことがないような感じの喜び方をしている。
私は気になって尋ねてみた。
「玉藻前ってダンジョン潜ったことないのか?」
「ダンジョンを見つけたことがまずないのぅ……」
何千年も生きてるのに?




