テスト!
私は弥勒の会社に来ていた。
というのも、今日やってほしいことがあるということで、私たち五人は弥勒のもとに集まる。社長室のソファで私たちがお茶菓子を食べていると、何やら書類を手にした弥勒が入ってきた。
「待たせたな」
「ん? ああ。別に時間通りだろ」
茶菓子の封を開け、口に運ぶ城崎。私は目をつむって瞑想をしていた。
「それで、なんや? 給料日でもあらへんし……。解雇か? リストラか? 社員から反対意見が上がってゲーム課解散なんか?」
「なぜそう後ろ暗いほうにしかとらえない……。別にそういうわけじゃない。お前らにやってもらいたいことがあるって言っただろう」
と、弥勒が私たちの目の前に書類を置いた。
目を通してみると、何やら問題のようなものが書かれている。
「テストだ」
「テストぉ!?」
「ああ、うちの会社ではこういうのをやっていてな。ま、だんだんこういうの忘れてくだろ? 忘れていってほしくないからな。頭の体操になる」
「いやいやいや、だからって社会人だよ? 僕たちもう高校生じゃないんだし」
「その認識が甘い! 脳を使わないと衰えるのが早くなる! こういう脳を動かすことも大事だからな!」
「だからってうちらがなんでテスト……」
たしかに意味が分からんな……。この歳になってテストをする意味がない。これで成績が決まるのならまだしもこのテストは完全に何の意味もなくやるだろうに。
「ま、テストをやる理由は単にお前らの学力が知りたくなっただけだからな。前に宝探しをしたときにミツネ……もとい幽音が意外と頭の回転が速いことに驚いてな。それから少し気になって。テストをする。俺もやるからな。試験官は用意してある。俺らの学力が知りたいだけだ」
「……単なる好奇心かいな」
「ああ、ま、これも給料出るしやってくれ」
「試験時間は?」
「50分、ということだけはいっておくが、一応タイムアタック的な感じでする。テスト全部終わった人から手を挙げて終わったと告げてくれ」
「わかった」
私は社長室に入ってきた試験官の人から筆記用具をもらう。
こういうテストをするのは何年ぶりだろうな。高校を出てからこういうテストはやったことがない。
高校の時、座学はよくもなく悪くもなく。赤点こそなかったが……。今は怪しい気がするな。特に英語。
「じゃ、カンニング行為はしたらダメな」
「もちろんだとも」
「幽音意外とやる気満々やな……」
「高校時代に戻った感じでワクワクする」
「はい、私語は慎む。では、始めましょう。頼んだぞ岡崎。じゃ、よーいスタート」
私は問題を解き始めたのだった。
問一から解き進め、裏面に差し掛かった時だった。
「俺はできたぞ」
「はやっ!?」
「早いな……」
弥勒が一番早く終わったという。
私は少しペースを上げる。テスト用紙一枚で五教科の問題すべて出ているので問題数が多く、時間がかかっていた。
そして、十分くらいたったところで私の解答欄が埋まる。
「おしまいだ」
「うそっ!? あ、うちも今終わったぁ!」
「みんな早いなぁ」
「俺らだけだぞ終わってねえの……。あれ、これなんだっけな……。俺そこまで頭よくねえのに……」
と、リュウと城崎はテストに苦戦しているようだった。
そして、数分が立ちリュウは鉛筆を置く。
「僕もおしまい」
「……俺だけかよ」
城崎は必死にテストを解いている。が。
待てど待てど終わる気配はなく、50分が過ぎてしまったのだった。
「そこまで」
「だぁー! あと少しだったのによ!」
「とりあえず採点するから集めるぞ……。っと。ま、城崎のだけなんだけどな。ほかのやつらは採点終わったから返していく」
城崎が終わるまで待つのは暇だったので採点もして点数もつけられた。
私は弥勒から答案をもらう。そこには……。79という数字が。悪くはないな。キャトラはちょっと驚いた顔をしており、リュウはうーんと渋い顔。
「……お前らその点で大丈夫なのか?」
「いや……僕もここまで忘れてるもんだとは思ってなかったよ」
「うちも……」
キャトラとリュウは答案をテーブルに置いた。キャトラは39点、リュウは48点だ。
「俺は満点、幽音は79と高い。今城崎のやつを採点しているが……。その、なんだ。一応言っておく。この中で断トツで低いのは城崎だ」
「……」
「その、なんだ。ずらっと目を通してみたが……。正解らしきものはなかった」
「つまり?」
「0点だな」
……0点というもの初めて見たな。
「お、俺はボクシングだけしかしてこなかったからな。こういうのはだめなんだよ。いいじゃねえかよお前らが頭使うんだから俺が0点でも……」
「……どんまい」
「慰めの言葉はいらねえよ!」
城崎は勉強できんのか……。




