あなたたちだけでずるいです。
私たちは宿に戻る。
宿は二部屋とってあり、男性と女性で分かれているので、部屋の時はお姉ちゃん以外にばれにくいのがまだ救いといったところなのだが。
私とキャトラはなぜかミロクに呼ばれた。
「どうしたんや? ミロク」
「いや、なんだろ。お前ら遺跡から変じゃないかと思ってな。悩みでもあるのかって思ってな」
「えっ、あー、なんもないで……ぞ。うん。ちょっと男どものテンションに辟易しててな。少しダルがらみだったというかなんというか」
「そうだったのか」
こいつさらっとシーフとドワフの株下げたな。
「キャトラは?」
「わ……。うちはあれや。その、お化けが怖くてテンションがおかしくなっただけや。自暴自棄だったっちゅうか」
「そうだったのか。まぁ、確かに遺跡にはアンデッドはいるからな……。悩みがないんならいい」
「それだけか? なら私らは行くぞ?」
「ああ、で、ログアウトするのか?」
「いや、街を探索しようと思ってな」
「探索? なら俺もいっていいか? 来たばかりだから把握してなくてな。把握しておきたい」
……そればれる可能性が格段と上がるのだが。どうしたものか。
私とキャトラは目を見合わせる。すると、奥からマツリがやってきた。マツリは私たちを見て目を丸くしている。
私は人差し指を鼻にあて黙っててというサインを出すと、親指を立てた。
「ふふ、私も行きましょう。四人でこの街を歩きましょうね」
「そうだな。ではいくとしよう」
どうやらミロクもついてくるようだ。
「ちょっとマツリええか?」
「はい。いいですよ。ミロクさん、ちょっと女性だけの会話をいたしますので」
「出て行けというんだろう? わかった」
ミロクは出ていった。
「面白いことになってますね」
「やっぱ気づいてたか」
「神竜人ですから。でも、ずるいですよ? 私も混ぜてもらいます! では、えいっ!」
と、光ったと思うと、私の視界が暗転する。
目を覚ますと、私の体とキャトラの体が目の前にあった。
「どうでしょう? 私がキャトラさんになりました」
「なにしとんねーーーん!」
「あなたたちだけでこんな面白いことやってずるいですよっ! 私も混ぜてください! なので私とミツネさんの精神を入れ替えました! こういう遊び魔法、鍛えてましたから!」
「誇れるとこちゃうでそれ! ってかその魔法あるなら戻れるやん! それになにややこしくしとんねん!」
「ですがこの魔法にも欠点がありまして。同性でなくては入れ替えられないんですよ。ふふ、不思議ですよね。神の意志でしょうか」
「無視すんなや!」
どうやら私はマツリの体になっているらしい。
マツリもどちらかといえばクール系の女性だからな……。テンション爆上げとはいかない……。
もうちょいテンション爆上げで行きたかったのだが……。
「ま、任せとき! うちはこれでも演技得意なんやで?」
「うちの口調まんまやん!? 逆に怖いわぁ!」
「さ、いくで! マツリもはよはよ!」
「あ、ああ」
「もう、そこはわかりましたですよ。今のミツネさんはマツリなんですから」
「わかり、ました」
「その調子です」
なんか調子が狂う。




