ゲームを楽しむ侍格好のお嬢さん
ミロクが依頼主に報告に行き、私たちは自由行動となった。
私は王都の雑貨店で道中で狩った魔物の素材を売り払い小遣いに当てる。そして防具屋によってみた。
防具屋は中世ヨーロッパ時代に出てきたような全身鎧や魔法によって防御が底上げされてるビキニアーマーなどがある。
「お嬢さんはどんな防具をお求めですかな?」
「そうだな……。袴のようなものはないか?」
私としてはやはり剣道の道着以上に動きやすいものはない。
ズボンでもいいがちょっと履きなれないのだ。剣道を始めたころからずっと袴を着ていたせいもあるだろう。ズボンだとちょっと落ち着かなくなっていた。
「ございますとも」
「ならそれをみせてくれないか」
「かしこまりました」
店主は奥から袴を持ってくる。
袴の色は黒だった。
「世界で一番固い虫の魔物の糸でできた戦神の袴です。お値段はそれはもう本当に……」
「高いのか。そこまで手持ちがないからやめておこう」
「そうですか。お嬢さんには似合うと思ったんですがねぇ」
「普通の袴でもいい。ないか?」
「ございますともええ」
そういって普通の袴らしきものを取り出してくる。
上下セットのようで上下ともに合わせて袴らしい。私はそれを試しに着用してみる。背丈にぴったり合い、割と動きやすい。
剣も腰に差せるようで江戸時代の侍を想起させる。
「これにしよう。いくらだ?」
「4000ギンとなっております」
「わかった」
私は4000ギンを支払う。
店から出て、私はなにもすることがないのでとりあえず食べ物を食べてみることにした。ゲームでも味覚というものはあるらしくおいしいものはおいしいらしい。
それに、ゲームならではの利点としていくら食べても太らない。おいしいものが食べたいけど食べ過ぎたら太るっていう心配はないという。
「やぁ、そこの侍のお嬢さん」
「串焼き……スイーツ巡りでもしてみるか?」
王都にはお菓子の店もちらほらあるという。
貴族御用達という看板も目にするほどだ。それほどおいしいのだろう。
「そこの、お嬢さん」
「甘いものでも食べよう。久しぶりにな」
「そこの侍のお嬢さんっ!」
と、背後から声が聞こえてきた。
私は振り向くと少し装備が整った男性がたっていた。
「なんだ?」
「お、俺と一緒に冒険者ギルドの依頼を受けてくれないか」
「なんだ突然。いやだぞ。受ける義理がないだろう」
「そこをなんとか!」
「何度頼み込んできても無駄だ。諦めろ」
私は前を向き歩き出す。
ひそひそ話が聞こえてきた。周りのプレイヤーらしき人が笑っている。ナンパに失敗してやがるだの草、だの言っている。
ナンパだったのかあれは。なるほど。いい勉強になった。
私は男から離れるように歩いていると、男に囲まれた女の子を見かけた。
男は女に詰め寄っており、脅すようににらんでいる。女の子は今にも泣きだしそうで許してくださいと言っていた。
男は剣を引き抜き、振り下ろそうとしている。
止めるか。
私は距離を詰め刀を抜く。
私の刀の刀身に男の剣が当たった。
「ああ? なんだぁ、てめえ」
「怖がっているだろう。殺す必要はないはずだ」
「けっ、正義のヒーローか? 正義のヒーローになって俺を諭そうってか! お前もうぜえなぁ!」
「ちっ」
男は私の刀めがけて何度も剣を振り下ろす。
私は刀で攻撃を受け止め、そして剣が私の刀に当たった瞬間に思いっきり押し出した。男は剣をはじかれてよろめく。
私は刀で男を切りつけた。男はそのまま地面に倒れ伏せ塵となって消える。
「大丈夫か?」
「た、助かりましたぁ。ありがとうございます」
「何があったのか教えてもらってもいいだろうか」
「はい……」
「まあここではなんだからあそこの喫茶店らしきところにいこう」
私は女の子の手を引っ張り喫茶店に入った。