中堅戦
土煙が上がる。どちらが立っているのか。まだわからない。
『両者譲らないぶつかり合い! どちらが立っているのか!』
土煙が晴れる。
そして、目に見えた光景は。傷ついたうさ鬼と、地面に倒れ伏せているハヤテ。どうやらハヤテは打ち負けてしまったようだ。
『先鋒戦、勝者はうさ鬼ーーー!』
「ふぅ……。ハヤテ君も強かったです。相性が良かっただけかもしれませんね」
私はハヤテに近寄る。
「き、キエエ……」
「気にするな。相性が悪かっただけだ。向き不向きは存在するからな。あとはヴィアンと玉藻前に任せろ。休め」
「キエッ」
私はハヤテを戻す。
「まずは先鋒戦、いただきました。次で決めます! チェシャ猫には悪いんですが玉藻前とは戦いません!」
「そうはいくかわからんぞ。勝負に絶対はないからな」
「いえ、絶対です!」
「はは、そうか。強情だな。だがしかし……」
絶対王者。百戦無敗。
「絶対は私だ」
こんなところで負けるわけがない。負けるわけにいかない。
何事でも勝つ。百戦無敗であるがために。だからこそ、負けるわけにはいかないんだな。
「私は負けたことはない。だから負けない」
私は挑発的に笑う。アングルは燃えてきたかのように笑う。
アングルはテイマーとしては本当に強いのだろう。私なんかよりもテイマーとしての知識はあるはずだ。それは認める。私はテイマーなんてものはやったことがないからな……。
だがしかし、モンスターの質としてはこちらのほうが上だろう。
『さて続いて中堅戦! お互いのモンスターは……レインボーバタフライ、ルル・ヴィアンセ! 虫対決となりました! では、審判の指示に従い勝負を始めましょう!』
「審判いるのか? 割となにもしてないだろう」
『これは一応形式ですからね! 審判はいらなくても一応いたほうが大会らしいでしょう! ということで、そんなつっこみはいいので始めてくださいね!』
「審判さんはただの飾りなんですね……」
私とアングルは少し力が抜けた気がする。
蝶と蜘蛛、か。面白い勝負になりそうだ。蝶ということで少しは想像はつく。きっと鱗粉をまき散らすかのような戦いだろう。レインボーバタフライって言っていたな。虹色……。状態異常全部使えるということかもしれん。警戒したほうがいいな。
「お二方、準備はよろしいですか?」
「もちろんだ」
「大丈夫です」
「では、はじめ!」
私はヴィアンを召喚する。
ヴィアンは地面に降り立った。そして、アングルもレインボーバタフライを召喚。虹色の羽をばたつかせ空を飛んでいる。
ヴィアンはやる気満々の目をしている。一方、レインボーバタフライは少しおびえたような眼をしているのがわかる。
「なるほど、相性的にはこちらが有利だな」
「そうみたいですね……。ですがうちのにじいろちゃんは強いですよ」
「ネーミング安直だな……」
「そ、それはミツネさんもじゃないですか! ルル・ヴィアンセ、だからヴィアンでしょう!」
「名づけが苦手でそうなっただけだ」
「じゃあなおさら人のこと言えないですよ!」
うーむ。口論で負けてしまった。
「ま、名前はどうでもいい。ヴィアン、勝て!」
「にじいろちゃん臆することなく勝つんですよ!」
蜘蛛と蝶。どちらが強いか勝負だな。




