開催宣言
そして25日。クリスマスがやってきた。
ミロクと真毅さんはイベントに行ってくるなといってワープしたので、私は会場に足を運ぶ。受付から番号が書かれた缶バッジをもらい、胸に張り付けた。
そして、開会式が行われる。
「さぁ! ビーストチャンプナー主催! あなたの愛モンスターを見せてみろ! モンスターバトル大会の開催を宣言しまーす! 司会を務めるのはビーストチャンプナーのサブマスターにしてマッチョ魔物が好きなこのマッチョボンが担当しまーす! まずは主催者のわがマスター、好きなアイドルは月野 光ちゃん! 見た目はいかついのに中身は少女! ゲッコウでーす!」
そういって、舞台に上がったのは本当に見た目がいかつい男だった。
がたいがよく、目が鋭い。あの目で見られたら睨みつけられてるのだと思ってしまう。顔面の迫力がすごいな。
「え、えっと、マスターのゲッコウだ。おい、マッチョ、俺の紹介ひどくないか?」
「事実ですからねえ」
「そうだが! なにも推しまで暴露しなくても……。俺一人が推していればいいのだ……。まぁ、それはおいておいて、だ。今回、なぜクリスマスイベントに重なるように開催したのには理由がある」
だろうな。わざわざ理由なしでクリスマスイベントと重ねないだろう。
「クリスマスイベントは大体が彼氏彼女で参加するという。要するに恋愛であーだこーだいちゃいちゃしてるやつがきゃっきゃうふふと楽しんでるんだよ。そんなの俺みたいな彼女いない歴イコール年齢の奴が見たらどう思うか! 悲しいだろう!? だから俺は……テイムした魔物と戯れたほうが楽しいということを証明したい! だからイベントと重ねた! ここにいるのはたぶん俺みたいなやつばかりだろう!」
「ひどい言い草ですね……。完全に私怨ですよね」
隣でアングルが冷たい目を向けていた。
「ああいうのがモテない原因なんだろうな。前にうちの仲間が言ってたな」
「開催理由が思った以上に下らねえ……。いや、性格上こういうことだとは思っていたがよ」
と、私の左隣でフクツがそうつぶやいた。
「まぁ、俺の個人的な気持ちは置いておいて、だ。どちらにせよ自分の魔物が一番強いっていう飼い主心理もあるだろう? なら本当に決めてやろうという試みもある。みんな、自分たちの魔物を信じて戦わせるんだぞ! 勝敗を決めるのは魔物との絆の深さである! はっはっは! ではな!」
と、男が壇上から降りた。
勝敗を決めるのは絆の深さ、か。私の場合はどうなんだろうか。出会ってまだ数日ぐらいしかたっていない二匹。絆の深さでいえばダントツで負けているに等しいだろう。
戦うのが私であればまだ……。いや、信じるしかないか。
「ではでは、まず最初の戦いから始めましょうね! それぞれスタジアムが用意されていますのでそちらに向かってください! ここはチーム戦を行いますのでチーム戦に参加する方は残ってくださいね!」
マッチョボンさんがそういうとみんなばらけていった。
「じゃ、がんばれよ二人とも。俺はガチタイマンだからいくぜ」
「ああ、がんばれよ」
「頑張ってください」
フクツがいってしまった。
「さて、では出番まで控室で待っていよう。アングルもそうするだろう?」
「そうさせてもらいます。その、チェシャ猫のメンタルをケアしないといけないので」
「めんどくさいモンスターだな」
「戦えば強いんですけどね……。気弱なのが本当に玉に瑕で……」
「Sランクだからそうだろうな。では、また戦いの場で会おう」
「はい」
私は控室に向かった。




