やめろ近づくな
玉藻前と契約を結び、当初の目的はすべて果たしたので私たちは帰ることにした。
再びヴィアンにお願いしようと近づくと何やら茂みのほうから音がした。魔物だろう。私は刀を抜けるように準備をすると、その魔物は姿を現した。
「うお……でっけえムカデ……」
「こいつはオオムカデという魔物です。割かし強いので気を付けてください!」
「こっちにはミツネが……」
ミロクが私のほうを見てくる。
「……すまん、逃げるぞ」
「た、戦わないのか?」
「逃げるったら逃げるんだ!」
私は全速力で駆け出した。
私にだって苦手なものは存在するのだ。そう、ムカデのような虫だ……。ムカデ、カブトムシの幼虫、毛虫、ヤスデなどキモイ昆虫はマジで無理なのだ。蜘蛛などは割と大丈夫なのだが……。
私は全力で走ると、ミロクたちを見失ってしまったのだった。
「ムカデが出るなんて聞いてないぞ……。あれはだめだあれは」
ムカデの何が嫌かってあの足だよ。くねくねしてて気持ち悪い! くねくねしてる虫は昔から嫌なんだよ……。
「ミツネ! いないか!」
「こ、ここだ」
と、ミロクたちが追い付いてきたようで、近寄ってくるが……。後ろにオオムカデが追いかけてきていた。しかも群れ。
「どうした?」
「ムカデとかは無理だ私には無理なのだ……」
「……もしかして苦手なのか?」
「あ、ああ、あああああ」
「この取り乱しようは本気ですね……。あれはミツネさんに任せられませんね」
「ならば妾が払ってやろう。主かが困っているならば助けるのが従魔の役目じゃろう?」
そういって玉藻前はオオムカデの群れの前に出る。
何か力をためたかと思うと一気に放った。その衝撃波はオオムカデたちを砕け散らせたのだった。液体が飛び散り、地面には緑色の液体だらけとなる。
「どうじゃ?」
「……頼むから近寄るな。お願いだからな」
「え、なんでじゃ?」
「その虫の返り血みたいなのに触れるのも嫌なのだ……。本当にやめてくれ。頼む……。それに触れるくらいなら死んだほうがましだ」
「ミロク様、さっきより追い詰められてませんか?」
「追い詰められてるな……。ミツネにとってムカデは人を殺したのと同じくらい嫌なのかもしれないな」
ミロク、それ以上だ。私はムカデは滅びろと思っているぐらいだ。
「わかったわい。ちょいと近くの川で清めてくるでな……。まったく、虫ごときで情けないのう」
「そうしてくれ……」
「と、とりあえず立て」
と、ミロクは手を差し出してきたので素直に手を取り立ち上がる。
ヴィアンはすでに蜘蛛の糸の船を用意できたらしく、帰ろうということになったのだった。
「それにしても百戦無敗の宗形がムカデに弱いとはな」
「ムカデ以外にも毛虫やカブトムシの幼虫も無理だ。くねくねした虫は基本的に無理だ」
「わかります。父も刑務所内でたまにヤスデを見るらしくて聞くたびに気持ち悪くなりますもの」
「やめろ! 名前を出すな! 想像してしまうではないか!」
ああ、気持ち悪い。




