女は嫌いか?
王都の街を一通り観光し終えた後に拠点に戻る。
私がそろそろログアウトしようかと考えていた時、拠点の扉をたたく音が聞こえたような気がした。
今拠点には私以外いないのでとりあえず私が出向くことにしよう。
「あの、すいません」
そこに立っていたのは私より少し背が低い女性。
黒髪で、どことなく清楚だ。所作も美しい。ノンプレイヤーキャラクターではなさそうだ。プレイヤーなんだろう。
「なんだ?」
「ここにミロク様がいると聞いてきたのですが
「今出かけている。用があるなら伝えておくが」
私がそう言うと「自分で伝えたいのです」と笑顔で返される。
「いつ戻ってくるのでしょうか」
「わからん。まだ戻ってくることはないと思うが……」
「そうですか……。なら中で待っててもいいでしょうか」
「いいが私は何も構えないぞ」
「はい、大丈夫です」
そういって中に入ってくる。
女性は扉を閉め、リビングのほうに向かっていった。私は部屋に戻ろうとすると扉が開かれる。扉を開いたのはミロクだった。
ミロクは焦ったように私に詰め寄ってきた。
「だ、だれか女性は来なかったか!」
「あ、ああ。今さっき来てリビングのほうに通したが」
「まじかぁ」
なにかまずいことでもしたのだろうか。
ミロクはリビングのほうに向かうので私もリビングのほうに向かう。その女性がミロクの姿を見るとミロクに抱き着いた。
「ミロク様~!」
「ちっ」
ミロクは嫌な顔をして舌打ちをしている。あまり得意な相手ではなさそうだ。私はそう思ったのでとりあえず引きはがすと、その女性は私をすごい形相でにらみつけてくる。
なるほど、こいつはとんだ女狐だ。私も女狐だが。種族的にな。
「なになさるんですか?」
「嫌がっているから引きはがしただけだ」
「余計なことしないでいただけますか?」
「人の嫌がることを止めるのは余計なことではない」
そういうと女はむかつくと言わんばかりに怒りの表情を浮かべる。
「帰ってくれないか。俺はお前が好きじゃない。お前も俺が好きじゃないだろう」
「……わかりました。でも、諦めませんから」
「どうしてもというならその性格の悪さを何とかしてからくるんだな」
そういうと女性は私を一睨みして帰っていく。
ミロクはつかれたと言わんばかりにソファに腰を下ろした。
「なぜゲームでもあいつにあわにゃならんのだ」
「知り合いか?」
「ああ。大学の時に友人に無理やりコンパ連れていかれてな。その時に出会った女だ。あいつは金目当てで近づいてきやがるんだよ」
「玉の輿ってやつだな」
「金持ってると男女問わずモテるからな。本当に嫌になる。特に女がそうだ。女は俺を騙そうとメイクをして落とそうとしてくる。香水の匂いがきつい。いい大学といえどそういうやつが多すぎてな」
「……女性は嫌いなのか?」
「ああ。大嫌いだ」
彼はそう告げる。私も女性なのだがどうなのだろう。今会話しているのも嫌なのではないだろうか。
私がそう思っていることが伝わったのかミロクは苦笑いを浮かべた。
「ミツネとキャトラは俺に何の興味もなさそうだから大丈夫なんだ」
「まだ出会って数日だろう。そんなに信頼が高いか?」
「これでも俺は相手を選別して声をかけた。ミツネはそう言ったこともないという調べがでたからな」
「そうか」
いつの間にか調査されていたんだな。たまに視線を感じるなという時があったがそのせいだったか。
まぁ私も金にはそこまで興味があるわけじゃない。金は生活できるだけあれば十分だと思っている。玉の輿とかには興味がわかない。
「それに、ミツネは武道をやっているからか相手への思いやりが伝わってくる。そこらの女とは違う」
「まぁ、相手を尊重するのが武道の基本だが……」
「そこらの女を見てみたらわかる。俺に媚びうるためにメイクをして香水つけて。俺の気持ちなんてお構いなしにさっきみたいに来るんだよ。嫌いにならなくてどうすんだっていう話だ」
まぁたしかに。
金持ちも大変なんだな。
「なら強くなればいいだろう? 現実で剣道でも教えてやるか? それとも居合がいいか? 剣術か? 剣はいいぞ」
「そうだな。時間があったら習いに行く」
「楽しみにしている」
ミロクは笑顔を浮かべた。