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迷宮保険  作者: 井上啓二
第五章 一〇〇〇年王国の怪人
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湖中の激闘

「よし、やるぞ瑞穂! 魔導雷撃戦用意! 精霊誘導弾エレメンタルトーピードー全管装填、対生物弾頭!」


「魔導雷撃戦用意! 精霊誘導弾全管装填、対生物弾頭! Aye!」


 隼人くんの指示に、指先が滑るようにコンソールを操作します!

 まったく自分の身体であってそうでないようです!


「全発射管、装填完了!」


「測的完了次第、全管発射!」


「測的完了次第、全管発射! Aye!」


 そして!


「測的完了! 精霊誘導弾、全管発射!」


 船体に鈍い振動が走り、強大な湖中の獣に向かって反撃の矢が放たれます!

 魚雷に似て、魚雷に非ず!

 実体弾ではなく、魚形水雷状の魔力を放つ魔導兵器!

 精霊誘導で必ず命中する点は “火弓サラマンデル・ミサイル” と同様ですが、その威力は桁違いで、弾頭部には “対滅アカシック・アナイアレイター” が込められているのです!

 つまり――SFに出てくる光子魚雷(フォトンピドー)そのもの!

 その水中誘導弾が八発、湖中に長大な航跡を描きながら “首長竜” に突進します!


(弾頭は無属性の “対滅” ! 炎や水に抵抗力のある()()にも効果が見込めます!)


「カメラ、入光度を最低にして最大望遠!」


『Aye-aye, Captain!』


 命中時の閃光から視力を守るために、ショートさんがカメラを調整します!


「誘導弾、目標に向かって全弾航走中。命中まで――5、4、3、2、1」


 カウントダウンが終わると同時に、八つの閃光がモニターを灼きました!


「誘導弾、全弾命中!」


「総員、耐衝撃防御!」


 五代くんの報告に、隼人くんの指示が重なります!

 水中を衝撃波が伝播する速度は大気中の四倍以上も速く、あっという間にここまで到達するのです!

 わたしは歯を食いしばり身を固くして、船体を乱打するだろう衝撃に備えました!


 ――しかし!


 何秒経っても “ハワード号” が動揺することはありませんでした。

 そしてその理由はすぐに分かりました。


「吸収……した?」


 八発の精霊誘導弾の魔力を…… “対滅” を……吸収した?

 モニターに映る、何倍にも大きくなった “首長竜” ……。


「目標の全長500mに()()……」


「ご、500……」


「なんて奴だ、いくら対生物用に加減された “対滅” だからって…… 」


 五代くんの報告に安西さんが蒼ざめ、早乙女くんが呻きます。


「我々は敵の戦力を見誤った――全力で待避する! 機関全速、取舵一杯!」


「機関全速、取舵一杯! Aye!」


 シュウウウン……。


 田宮さんが復唱し舵輪を操作した直後、ハワード号の速力が急激に低下しました!


「どうした!?」


「主機、補機ともに出力低下!」


「なんだと!?」


『なんてこった! オイラの力まで吸われてるぜ!』


「速力が上がらないわ!」


「目標、5000まで急速に接近! なおも近づく!」


「身体は!? 身体は大きくなっていますか!?」


「目標の全長、変わらず!」


 わたしの問いかけに、五代くんが即答します!


船長(Captain)、わたしに考えがあります!」


「やってくれ、瑞穂!」


「Aye!」


 火器管制システムが生きているうちに! 


「発射管一番から八番、音響弾装填! 装填完了――発射!」


 ズズンッ!


 鈍い振動が船体に走り、再び八条の航跡が、さらに巨大化した “首長竜” に向けて伸びます!


「五代くん、ヘッドフォンを外してください! 全員、目を閉じ、耳を塞いで、口を半開きに!」


 振り向いて叫んだ視界に、すでにヘッドフォンを外して両耳を押さえた五代くんの姿が映りました!


 直後!


 八発の音響弾が炸裂しました!

 湖水が攪拌され、猛烈な気泡が “首長竜” を包み込みます!

 衝撃波が船体を襲い、激しく揺らします!


「――つううううっっっ!!!」


 シートの肘掛けを握りしめ、歯を食いしばります!

 まるで汚れ物のと一緒に、洗濯機で回されているようです!


 永劫に続くかに思われたジェットコースターよりも酷い動揺でしたが……いつしか治まりました……。


「各員、無事か?」


「田宮、問題なし……」


「早乙女、問題なし……」


「五代、問題なし……」


「安西、問題なし……でも吐きそう……」


「エバ、問題なしです……」


「船体のチェックを……いったい何をしたんだ、瑞穂?」


「“首長竜” があれ以上大きくなっていなかったので、もしかしたら()()なのではと思ったのです。船足も完全に止まってはいませんでしたし。だから今度こそは効果があるのではないかと。でも近すぎたので “対滅” の弾頭は使えず、咄嗟に音響弾を撃ったのです」

 

「なるほど……無限に魔力を吸えるわけではないのか」


 隼人くんがもっともだ、とうなずきます。

 船体にも機関にも異常はなく、低下した動力もすぐに復活しました。


「目標はどうだ?」


スタンし(ノビて)るみたいだ。白目を剥いて、大口を開けてる」


 慎重にソナーで聞き耳を立てながら五代くんが答えます。


「この隙にとっとと逃げようぜ!」


 早乙女くんが、もうまっぴらだ! とばかりに叫んだとき、


「見て、“水精(ウンディーネ)” が!」


 安西さんが、あっ! とメインモニターを指差しました。

 意識を失っている “首長竜” の至近に現れたくだんの “水精” が、大きく開きだらんと舌が飛び出した口を指差します。

 そして着いてこいと言わんばかりに、口内に消えて行きました。


「お、おい、まさか――」


 絶句する早乙女くん。


「誘っているのか、案内してくれるのか――どちらにしても決断しなければならないでしょう」


 この船の性能、装備を勘案すれば、巨大な生物の体内への侵入もあるいは可能かもしれません。

 しかしその危険は、湖中探査の比ではないでしょう。

 ですがここで離脱すれば、何の成果も得られないのも確かです。

 全員の視線が船長席の、隼人くんに集まります。


「侵入する。迷宮探索は虱潰しだ。()()も迷宮の一部。この階層(フロア)の六つ目の区域(エリア)だ」


 指揮官(リーダー)の決断に、全員が覚悟を決めます。


「最微速。開口部から目標の体内に侵入する」


「最微速。開口部から目標の体内に侵入。Aye」


「“海底二万海里(マイル)” の次は “ピノキオ” ですね」


「せめて “ミクロの決死圏” と言ってくれ……」


 わたしの言葉にSF好きの早乙女くんがゲンナリと嘆息し、ハワード号は超巨大 “首長竜” の口の中へと進みます。



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― 新着の感想 ―
[一言] 水中だと音は響きますからね。 良い案だと思います。
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