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迷宮保険  作者: 井上啓二
第五章 一〇〇〇年王国の怪人
404/658

プロローグ 林檎の迷宮★

 甘い香りが漂う迷宮を、わたしたちは進んでいました。

 カビと、湿った埃。

 屍の腐乱臭。

 先住者や侵入者が残した排泄物。

 それら嗅ぎ慣れた臭気を上書きする、豊潤に熟した果実の匂い。

 迷宮にそぐわない甘美な香りに、探索者の本能がぴんぴんと警報を発しています。

 視線の先を行く五人の背中にも、必要以上の緊張が見て取れます。


 盗賊(シーフ)斥候(スカウト) として先陣を切る一列縦隊。

 二番手に前衛でもっとも装甲値(アーマークラス)の低い盾役(タンク)

 三番手には反対に攻撃力に秀でた削り役(アタッカー)

 四番手は後衛の先頭。戦士に次ぐ装甲値を持つ回復役(ヒーラー)僧侶(プリースト)

 五番手は耐久力に劣る代わりに、強力な呪文で集団戦闘の要となる魔術師(メイジ)

 六番手、殿(しんがり)は後方警戒を兼ねたもうひとりの回復役――わたし(ライスライト)


 隊列としては最善と言ってよいでしょう。

 過去にも同様の布陣で、ふたつの迷宮を生き延びてきました。

 ですが三つ目でも、その定法(セオリー)は通用するでしょうか。

 変貌を遂げたこの迷宮では、既知の情報が無意味になっています。

 わたしたちが今いる場所は、発見されたばかりの処女迷宮(バージンダンジョン)と変わりません。

 判っているのは、これまでを遙かに超えて危険ということだけ。


 経験に頼らず、経験を活かす――。

 成功の記憶は諸刃の剣。

 いつしか妄信となって、自らの足をすくう罠ともなるのです。


 先頭をいく斥候が、右手を挙げて立ち止まりました。

 “永光コンティニュアル・ライト”の明かりが届かない数区画(ブロック)先の暗闇に、異変を察知したようです。

 すぐに地響きをともなう乱雑な跫音(きょうおん)が近づいてきました。

 魔法光の中に現れた、醜悪極まる巨体、巨体、巨体、巨体。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 “食人鬼頭(オーガロード)” ×5

 “亜巨人(トロル)” ×5

 

 期せずして前回このパーティを全滅寸前にまで追い込んだ群れと同じ編成です。

 モンスターレベルは、それぞれ8と6。

 “食人鬼頭” はネームドで、とても迷宮の始点(入り口)からほど近い駆け出し区域(ビギナーズエリア)に出現する集団とは思えません。

 

 いえ――違います。

 

 そうではないのです。

 今や “林檎の迷宮(アップル版)” へと変容した “呪いの大穴” には、もう駆け出し区域など存在しないのです。

 わたしは戦棍(メイス)と盾を構え、凛と叫びました。


「隼人くん! 田宮さん! 早乙女くん! 五代くん! 安西さん! 打ち合わせのままに――戦闘開始(オープンコンバット)!」



お待たせしました。

新章の開始です。

新たな迷宮に挑む、エバたち探索者の活躍にご期待ください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新復活、楽しみにしてました! この話、更新見逃すところでしたw 隼人とPT組んでるんですか。 オーガロード達相手に全滅寸前って、あまりレベルは高くないのですかね? まあ次話読んでみます。…
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