望んだのは彼女
「そして役者揃ったってわけですわ。ミス・アンバーの身体を乗っ取って、もう今の王妃リベルタはいらない存在になった。いつまでも現国王の王妃じゃなく、次の若い王の妃になるんですから。用事が終われば妹でも消してしまえるなんてさすが魔女ですわね。でも、もうお終いですわ。魔女リベルタ」
「うふふふ」
とミス・アンバーが笑った。
両手で顔を覆ったまま、身体を震わせて笑った。
「あっはっはっは」
大笑いしながらミス・アンバーは顔を上げた。
それは初めて会ったあの賢そうなミス・アンバーの顔じゃなかった。
黒髪で理知的そうな瞳は邪悪な光が浮かんで、にやりと皮肉げな顔をした。
「よくお分りになりましたわね? マリア様?」
「やっぱり、あんたが魔女リベルタ」
ミス・アンバーはうふふと笑いながら首を振った。
「私が選んだわけじゃないわ。誰でも良かった。でも望んだのはこの娘。ヴィンセント皇子の妃になれるなら、どんな力でも利用したいと心の底から望んだのはこの娘。身分が違うからと蔑まれ、疎まれ、一生に一度の恋を引き裂かれた恨みが燻っていた。諦めたつもりでいたのに、ヴィンセント皇子が婚約した。その相手は型破りで下品な娘、取り柄は侯爵家の娘というだけ。なのにヴィンセント皇子がその娘を見る目が優しい。それで燻っていた気持ちが溢れ出てしまった」
「ミス・アンバーの魂は?」
「うふふ、妹を殺した時に怖じ気づいて引きこもってしまったわ。今は心の奥底で身動き出来ずに震えている。今更、怖くなったようね。リベルタを殺したのはミス・アンバーなのに」
「違う。リベルタ王妃を殺したのはあんただ、魔女リベルタ。ミス・アンバーは操られていただけ。全く魔女って奴は最悪だ。人の心を操って……ミス・アンバーはそんな事望んじゃいなかった。彼女はヴィンセント皇子の幸せを祝福できる人だった。ミス・アンバーはそんな弱い人じゃない! 全部、あんたが仕組んだだけだ……ミス・アンバーを開放しなよ。あんたにはそろそろ永遠の眠りにつくことをお勧めする」
食卓についた面々は固まって何も言わなかったし、動きもしなかった。
「どうするって言うの? この私を眠らすなんて、ミス・アンバーを殺すしかないって事を分かってるかえ??」
突然にミス・アンバーの表情が変わり、ドスの利いた低く凶暴な声になった。
「殺すなら殺せぇ、お前にそれが出来るならなぁ? 侯爵家に生まれた家柄がいいだけのお嬢ちゃんよ。ちょっとばかり小賢しい頭はお持ちのようだが、これからどうするね?
あたしを殺すかね? ミス・アンバーを殺すかね? ヒャッハッハッハ」




