名探偵、皆を集めて、さてと言い
「おはようございます」
とあたしは言った。
食堂には顔ぶれが揃っている。
いないのはリベルタ王妃だけ。
果梨奈先輩もヴィンセント皇子の後ろに寄りそうように立っている。
コックが大急ぎで作った朝食を前に誰も手を出さない。
むしろ、食っていいのかこれ、みたいになってる。
「皆様、こちらでの最後の朝食ですわ。いただきましょう。王都へ戻り、リベルタ様の葬儀へ参列せねばならないのですから、食事くらいはきちんと。ねえ、ヴィンセント様」
とあたしが言うと、ヴィンセント皇子もうなずいた。
「何を言ってるんだ、君は! こんな時に! 食事だと!」
と苛立ちを隠せないのがローレンス皇子だった。
ローレンス皇子はあたしを睨んで唇を噛みしめている。
白薔薇は無表情でミス・アンバーはおろおろと皆を見渡している。
うちの両親はぽかんとしている。
平和でお気楽な侯爵夫妻だから、まだぴんと来てないのかもしれない。
うちの侯爵家は家政を切り盛りする執事が優秀だからなぁ。
「一刻も早く城へ戻り、父上に報告せねば!」
とローレンス皇子が両手でばんっとテーブルを叩いた。
高価な食器がガシャンと音を立てた。
「悲しいの?」
とあたしがローレンス皇子に聞くと、皇子は、
「はあ?」
という顔をした。
「悲しいかと聞いてるのか? 当たり前だろう! 僕の母が……王妃が……」
「本気で言ってるの?」
「何……を」
「リベルタ様は二代目だった。息子のあなたが知らないはずがないですわ。国王に嫁いだリベルタ王妃は実はその王妃の妹だか娘だか知らないけど、別の娘が成り代わっていたのでしょう?」
「君は何を……言って」
「ある国に魔女がいましたの。何百年も魔女として生き続け、その魔力で人間を思いのままに操って面白おかしく生きていた。けれどいくら魔女でも永遠じゃない。年を取り、魔力は衰える。けれど魔女にはまだまだ生き続ける為の知恵がありましたの。うまいことやって国王に取り入り、正妃を毒殺して王妃に成り上がった。魔女の体内には魔力なんて絞りかすくらいしか残っておらず、正妃を亡き者にするのも毒殺なんて人間的な殺し方しか出来なかった。上手いことやって、正妃を亡き者にしたはいいが、そもそもの魔女の身体が限界だった。連れてきた妹に身代わりをさせて自分は影に潜み、依り代を探した。身体を乗っ取るのに年頃の若い健康な娘。乗っ取れそうな欲望に塗れた若い娘。それ以外にも乙女を二人ぐらい殺してそのパワーを体内に取り入れ、魔力回復を図るチャンスを伺っていた」
ローレンス皇子はばーんともう一度テーブルを叩き、
「君の妄想を聞いている暇はないね!」
と言った。
「妄想じゃありませんわ。皇子、あなたも共犯なんですもの」
ローレンス皇子は顔色を変えた。
「共犯? この俺が?」
「ええ、お亡くなりになられたリベルタ様は二代目。あなたの生みの母ではなく、その妹様だった。息子のあなたが気がつかないはずがないでしょう?」
ローレンス皇子はかすかに首を振った。




