悪役令嬢 マリア・ウッドバース
もしかして第二の人生? 何でこんなとこに転生してんの……まあ、いっか。
マリア、マリアつったな。
確かええとこのお嬢さんなんだけど、悪役なんだよね。
健気で可愛いヒロインをいじめるつうか。
まあ、ヒロインに生まれる変わるよりましかな。
悪役上等だぜ!
そう意識すると何だかいろいろとシナリオやら人間関係を思い出してきた。
あたしはマリア・ウッドバース。ウッドバース侯爵家の令嬢。
「マリア様、大丈夫ですか?」
緑のブ……いや、彼女もどっかのお嬢様なんだろうな。
「え、ええ、まあ。どうも世話かけて」
立ち上がるとやけに高いピンヒール、さすが悪役令嬢。
だけどなんだか気の毒そうな視線があたしに集中してるので、よろめかずにカッカッと歩いて行かなければならない。
「マリア様、大丈夫ですの?」
声の方を見ると、人垣が割れた先からハンサム皇太子とヒロインが歩いてくる所だった。
「お顔の色が優れませんわ」
とヒロイン、アミィ・フォスターが言った。フォスター伯爵家の末娘、男子家系の貴族で女の子が生まれたのは百年ぶりだとかで、激甘、超甘に甘やかされている。
綺麗な金髪にエメラルドグリーンの瞳、真っ白なドレスを着ている。
髪飾りは白い薔薇。
そうだ、彼女は『白薔薇の君』とか呼ばれていたんだっけ。
素晴らしく可愛らしい顔をしているので、にっこり微笑むか、ほんの少し涙ぐむかで叶わない願いなんかないだろうな。
「アミィ、君が優しいのは知っているが、この者にはこれ以上構うな。マリア、さっきも言った通りだ、君との婚約は破棄する」
「あ、そーっすか」
皇太子の決定事項なんだから逆らってもしょうがない。
だけどこんな舞踏会の場で皆の前で宣言するとか、あんたの方が性格悪いわ!
とか思いながら、
「では私は失礼させていただきます」
と言った。帰ろ、帰ろ。
「おかわいそうなマリア様、私のせいで……クスッ」
こ、この女ぁ、クスッっつったぞ、今。
涙ぐんでるのにクスっつった!
ますます周囲の視線、気の毒ビームが突き刺さる。
口喧嘩も殴り合いも、そんじょそこらの女には負けないんだけど、今、ここでやるとますますあたしが負け犬っぽくね?
「では私がお送りしましょう。マリア」
と低い渋い声がまた別の方向から響いてきた。




