前世の記憶
覚えている限りのあたしの前世は日本って国の片田舎のヤンキー女だ。
家族は親父と弟が三人いた。母親がいなくてあたしはわりと小さい頃から家の中の事をやらされてた。食事、洗濯、掃除、やんちゃな弟三人の世話と、働き者だけど大酒飲みの親父。家族の事は嫌いじゃなかった。でも毎日毎日、ご飯を作って、片付けても片付けても散らかす弟達、馬鹿な女に教育なんぞいらねえって酒に酔って怒鳴る親父の声はうんざりだった。
親父は母親に逃げられたから、女に知恵をもたすとろくなもんじゃねえと、毎晩ぐちぐち言ってた。
あたしが学校をサボっても、夜遊びしても何も言わない。
ただ、家の用事さえしてれば文句は言わなかった。
あたしはそんな毎日に嫌気がさして、夜になったら家を抜け出して遊んでた。
女を憎んでいるような親父とそんな親父を見てあたしを女中みたいに扱う弟達が心底嫌になっていたんだ。
果梨奈先輩はそんな先で知り合った人だ。
女ばっかでつるんでチームを作って遊んでたんだ。
果梨奈先輩は面倒見のいい人で、あたしの事も心配してくれてよく怒られたよ。
原付バイクに乗ってくる奴がぽつぽつ現れて、あたしも十六で免許を取った。
それで果梨奈先輩を頭にしてレディースの族を作ったんだ。
男のいいなりにはならない、と粋がって硬派を気取ってた。他の族の男チームのケツにくっついてる軟弱な取り巻き女を心底馬鹿にしてたよ。
楽しかったな。毎晩、みんなで明け方までバイクで走るんだ。
そん時だけ、嫌な事は忘れられた。
あの頃は果梨奈先輩とチームの仲間だけがあたしの支えだった。
でも、果梨奈先輩は高校卒業してチームは引退、そして先輩は結婚したんだ。
赤ちゃんできたんだってさ。
先輩、幸せそうに笑ってたんだけど 、ある日、突然、行方不明になった。
あたし、めっちゃ後悔したんだ。
だって果梨奈先輩の彼氏、ろくでなしだったって知ってたのに。
女癖も手癖も悪くて、働きもしない。
なのに赤ちゃん出来たから結婚するってさ、先輩が幸せそうに笑ったから。
きっとあの男もこれからはちゃんと働いて、赤ちゃんと先輩を幸せにしてくれるって思ってたのに。
でも結局、働きもしない男を養うのに朝から晩まで働いて、無理のしすぎで赤ちゃんはダメになってしまったんだ。
それから先輩もいなくなってしまった。
あたしやチームの仲間は毎日探し回ったのに、あの男は心配も探しもしなかった。
その頃にはあたしもチームを卒業しなくちゃならない年だったから、卒業記念に仲間と男をボコってやたけど、そんな事しても果梨奈先輩は戻ってこなかった。
「先輩ぃ……あたし、心配したんだよぉ。こんなとこにいたんだぁ」




