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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

テンプレのような婚約破棄された公爵令嬢 〜魔界ver〜

作者: ほむら

「クローディア!お前の起こした数々の所業、最早見逃す事は出来ぬ!よってお前との婚約は破棄とする!」


そう高らかに宣言するのは私の婚約者であるこの国の王太子アルカード。

隣には可愛らしいふわふわとした桃色の髪をした男爵令嬢が涙目で寄り添っていた。





クローディア・フェルナード。


それが今の私の名前。

フェルナード公爵家の長女として生まれ育った。


前世の記憶が蘇ったのは学園に入学した16歳の時。

クローディアとしての記憶と前世の記憶が融合し一つになって私になった。


前世で死ぬ直前までハマっていた乙女ゲームの主人公のライバル悪役令嬢と同じ名前だなぁなんて呑気に喜んだりした。


そうしたら私の婚約者の名前が、乙女ゲームの攻略対象の一人である王太子アルカード・ヴェルガードと同姓同名だった。


見た目がちょっと…いや、大分違うので偶然の一致と思っていたが、あとからあとからゲームと同じ名前でほぼ同じ設定の見た目だけが違う攻略対象が現れた。


そして、目の前でアルカード様の隣にいる男爵令嬢リリー・セルローズ様が2年生の時に転校してきた。


あの乙女ゲームの主人公と同じ名前。


まさか!と思った。


だってみんな見た目が違う。


しかし、もしもあのゲームのシナリオ通りならば私は卒業パーティーでアルカード殿下から婚約破棄され国外追放となってしまう。


だから念の為そうならないように行動してきた。


リリー様がアルカード殿下に近付いてもゲームのクローディア(わたし)みたいな意地悪なんてしなかった。


彼女のドレスを故意に汚したり、筆箱を隠したり、私の取り巻きを使って罵倒したり(その前に私はぼっちで取り巻きはいなかった)、ましてや階段から突き落とすなんて事は一切していない。



なのに私は今、断罪されようとしている。




「婚約破棄、ですか。殿下、私が一体何をしたというのですか」


震える手を握り締め、私は殿下に毅然とした態度で問いただした。



すると私を睨むアルカード殿下の額の第三の目が黒い光を放った。


「言い逃れはさせぬ!お前がリリー嬢に行った悪行は全て分かっているのだ!」


「ほーーっほっほっほっ!貴女もお終いよ!クローディア様!」


可愛らしいお顔を歪めて高らかに嗤うリリー様。

桃色の髪は無数の蛇となりうねうねと蠢いて「シャーッ」と威嚇する。


「私たちは証拠も証人もいるのですよ」


そう言ってアルカード殿下の後ろで控えていた大男が前に出てきた。

眼鏡をくいっと中指で上げるその癖はゲームでも同じだった攻略対象の一人、現宰相の長男スノウ・イグロン様。


但し三メートルを超す巨体で赤黒い超筋肉質(ゴリゴリマッチョ)の体はどう見ても知的には見えない。


ぷすっ


「痛いっ!」


足を針で刺されたような痛みに思わず令嬢としては有るまじき声を出してしまった。

足元を見ると身長30センチ程の男の子が針のような剣で私の足をホントに刺していた。


「悪びれもせずに!土下座くらいしたらどうだ!」


その男の子が甲高い声でちくちくと刺してくる。

彼は攻略対象の一人、騎士団長の一人息子、クァーリー・バイナット様。

何回も刺してくるのでイラッとした私は首根っこを掴んで放り投げた。




此処は魔界の貴族が通う魔法学園。


やはり乙女ゲーム『愛しのプリンセス魔法学園』の悪役令嬢クローディアに転生していた。


但し魔界verだった。



そして今、私はこのゲームの最高潮最高潮(クライマックス)である断罪イベントに突入している。


でも私はそうならない様にしてきたはずだ。


さあ!


どの様に私の罪を断罪しようというのか。




アルカード殿下は私を指差し、リリー様の肩を抱き寄せた。


「お前はリリー嬢が初めてお茶会に参加した時、最高級の茶でもてなしたそうだな!」


「ええ。あの時、私は西の大陸より取り寄せた最高級の紅茶をご用意致しました」


それはリリー様に喜んでもらおうと無理を言って用意したものだ。

私は意地悪なんてしないというアピールでもあった。


しかし、リリー様は大きな瞳をうるうるさせて殿下にもたれ掛かる。

殿下は優しくリリー様の頭の蛇を一匹優しく撫でた。

蛇はうっとりしていた。


そして私を睨みつけスキル【威圧】を私にぶつける。


精神耐性MAXの私には効果は無い。


「お前はっ!初めてのお茶会で緊張しまくりMAXのリリー嬢に最高級の紅茶を出すなんてっ!なんて非道な!」


は?


「普通、煮え滾るマグマか生きた毒虫を溢れる程入れて『あ、間違えちゃった。でも魔族なら血反吐吐いても飲めるよね?』と挑発して緊張をほぐしてやるべきだろうがぁぁぁ!!」


興奮して口から火がチロチロと漏れる殿下。


「酷いです!お陰で私は何もアピール出来ず優雅な時間を過ごさせられました」


青黒い涙をポロポロと零してリリー様は殿下にもたれ掛かる。

というか絡みついている。


「義姉さん」

私をそう呼ぶのは義理の弟であるスレイ。

彼も攻略対象だった。


「リリー嬢の体操服がビリビリに破られていた事件覚えているよね」


「ええ、酷い事件だったわ」


覚えている。

移動教室の後、次の時間が魔法訓練だったのにリリー様の体操服が何者かにビリビリに破かれていたのだ。


私は予備の体操服を彼女に貸したのだ。


未だに返してもらってはいないが。


スレイはわなわなと震えている。


やがて筋肉が盛り上がり服を破りながら巨大な二足歩行の狼へと変貌した。

スレイは狼人間(ワーウルフ)なのだ。


「ウォォォーーーーーーーン!

僕はあのビリビリの体操服を着たリリー嬢のセクシーな姿が見たかったのに、何故邪魔をしたんだぁぁぁーーー!!!」


血の涙を流しながら変態義弟が咆哮をあげた。


それはいじめとかじゃなくお前の願望だぞ。


というかお前が犯人か。


そしてリリー嬢は「そんなに私のセクシーな姿見たかったのですか」などとほざきながら頬を染めながらくねくねしている。


興奮した義弟はリリー様のおしりの匂いを嗅ごうとして殿下から脳天かかと落としを喰らってのびた。


「それにお前が貸した体操服はサイズが合わなくてリリー嬢は苦しんだ!胸の部分はぶかぶかでウエスト周りがキツくて着る時に『ふぎぃっ!』などと恥ずかしい声を出してしまったのだぞ!」


「っ!!?」


ビシッと私を指さす殿下。

まぁ、私は自分で言うのも何だが大きな胸だし腰もかなり細い。

それに比べてリリー様は……うん、真っ直ぐである。


むしろちょっぴりぽっこりお腹かな。


リリー様はショックで顔を真っ青にしていた。

頭のピンクの蛇たちも青くなって項垂れていた。


さすがにちょっぴりリリー様が可哀想だわ。




はぁはぁと息切れしながら投げ捨てた筈のクァーリー様がリリー様の足元まで走ってきた。


「そ、それに先週リリー嬢が、はぁはぁ…か、階段から落ちた、げほげほっ!」


クァーリー様は騎士見習いだが体力が無い様だ。

いや、身長30センチの小鬼族には中々の距離を投げ飛ばしたからかも。


「どうぞ」


私は近くにいた給仕からドリンクを受け取りクァーリー様に手渡す。


「あ、ありがと」


クァーリー様は自分と同じくらいのグラスの中に頭を突っ込んで中のドリンクをごくごくと飲んだ。


途中、溺れそうになったので助けてやる。


ぷはーっと飲み干したクァーリー様を元の位置まで戻してやる。


「…」


「…」


「…」


たぷたぷになったお腹をさすってくつろぐクァーリー様。

自分に注目が集まっている事に気付いて慌てて姿勢を正して私を指さす。


「えっ…と」


「先週リリー様が階段から落ちた件についてかと」


「そ、そうだ!クローディア嬢、お前は自分の頑丈さを確認しようとして階段から落ちようとしたリリー嬢の手を引っ張り落とさなかったな!」


「はぁ」


「クローディア様は私がか弱い人族のように脆いと馬鹿にしているのですわっ!!」


「なっ!馬鹿にするにも程があるっ!」


泣きながら(バレバレな嘘泣きである)リリー様はアルカード殿下の胸元に顔を埋めると、アルカード殿下がギュッと抱き寄せた。


「ふんっ!」


「げぼぉぁっ!!!」


そして空いていた右の拳をリリー様のお腹にめり込ませた。


血反吐を吐きながら蹲るリリー様。


「見てみろ!愛する私のリリー嬢は私の渾身の拳でも突き破ることが出来ない程丈夫だ!魔族として素晴らしい耐久力だっ!!」


目をキラキラさせながら勝ち誇るように私に言い放つアルカード殿下。


涙目のリリー様はアルカード殿下の服を掴んでよろよろと立ち上がる。


「あぁ、アルカードさまぁ」


リリー様は口を大きく開ける。

耳まで裂けたその口に生えた牙がキラリと光る。

そのままアルカード殿下の首元に噛み付いた。


「いてっ」


瞬時に身体を鋼鉄に変えたアルカード殿下。


リリー様の牙が折れてボロボロと落ちた。

いや、一本だけ刺さっている。


「私の鋼の肉体に歯をたてるとはリリー嬢は攻撃力もなかなかだな!」


爽やかに笑みを零すアルカード殿下。


「うぉぁぉぉーーーーーーーっ!!!」


すると隣にいたスノウ様が棍棒のような腕を振り回してリリー様の顔面を殴りつけた。


ぱんっ


リリー様の頭が下顎を残し弾け飛んだ。

アルカード殿下の左半身はリリー様の返り血でぐしょ濡れになった。



しかし再生力の高いゴルゴン族のリリー様。

すぐに頭が再生し始める。


「見よ!この再生力!素晴らしいっ!!」


感極まって涙を流しうっとりグロいリリー様を褒めちぎるスノウ様。


「あぁ!何度殺しても死なないなんて!最高だ!」


「リリー嬢はすごい!」


「生きたサンドバック!」


「ひゃっほー!」


「がうぅっ!」


リリー様の鳩尾に笑いながら何度も膝を入れるアルカード殿下。


リリー様の頭が再生した瞬間に拳で破裂させるスノウ様。


リリー様の足を針のような剣でちくちくと刺し続けるクァーリー様。


リリー様の腕を食いちぎり食べる義弟スレイ。


抵抗する間もなく破壊され続けるリリー様。




その様子に興奮し出す周りの令息達が殺し合いをはじめた。






私は深い溜息を吐いた。


「もうこんな国いや」


私は背中の翼を広げ空へ飛び立つ。




私は魔界を捨て逃亡する事にした。





おわり


くすっと笑っていただけたら幸いです。


ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ひでぇ [気になる点] ひでぇ [一言] ひでぇ(褒め言葉)
[一言] 異文化交流の難しさを物語ってますねwww
[良い点] 「ああ、その価値観だと悪行かもな」と無駄に納得させられる謎の勢い 災難でしたな、お互いに
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