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1章
ここはどこだろう。
間違い無く、自宅のどこかではない。
ここは和室ではなさそうだ。私はベッドの上にいる。窓はなくて、薄暗い。
何だろう、ここは霊安室か何かだろうか。
私には分からなかった。
外から、足音がする。
私は慌てて横になり、目を閉じた。
もしわたしが起きたままだと、中に人が入ってきた時に、その人が驚いてしまうだろうから、驚かせないようにするためだった。
「……」
入ってきた人物は、息を飲んだ。
「……本当に、死んでしまったのね……」
祖母の声だった。
「はい……あの子は、線路に落ちそうになった女の子を庇って……自分が落ちてしまって、死んだのだと聞いています……あの子が死んだなんて、嘘であってほしかったのですが……本当に……」
母の声もする。
静かなすすり泣きの声がする。
そして、なぜかそこから、声が変に響き、遠のいていった。頭がぼんやりする。
そんな朦朧とした意識の中、私は扉が閉まる音を聞いた、ような気がした。
そこからしばらく、私の意識はなかった。