表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三人娘、大活躍  作者: しろ組


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/23

九、ラーサの勇気

九、ラーサの勇気


 ラーサは、屋敷の向かい側の客席の後方より遠巻きに、自分の優勝予想に賭けた猫耳族の娘の二回戦を固唾(かたず)を飲みながら、見守った。心境としては、賭け金よりも、同性として、勝ち上がって欲しいと思ったからだ。

 しかし、待てど暮らせど、対戦相手が、現れなかった。

 やがて、観客が、苛々(いらいら)(つの)らせ始めた。

 突然、無精髭の男が、猫耳族の娘の左腕を上げるなり、「勝者! 猫耳族の娘!」と、勝ち名乗りを上げた。

 その途端、場内が、ざわついた。

 その間に、無精髭の男が、猫耳族の娘の腕を下ろして、放した。

 間も無く、猫耳族の娘が、移動を始めた。しかし、すぐに、歩を止めた。

 ラーサは、眉をひそめた。どうして、階段を下りないのかが、()せないからだ。少しして、背広(スーツ)姿のイナ族の優男と貧相な体つきのウルフ族の男と横縞の(シャツ)を着たラット族の男に、行く手を阻まれているのを確認した。

 程なくして、猫耳族の娘とイナ族の優男達が、口論を始めた。

「いけませんわ」と、ラーサは、闘舞台(リング)へ上がる決心をした。多勢に無勢で、看過(かんか)出来ないからだ。そして、観客の中へ身を投じた。しかし、すぐに、押し戻されて、思うように、進む事が出来なかった。

 少しして、観客が、どよめいた。その瞬間、動きが止まった。

 その瞬間、ラーサは、ここぞとばかりに、分け入った。闘舞台へ近付ける好機(チャンス)だからだ。そして、闘舞台へ視線を向けた。すると、猫耳族娘が、背にしながら、手前の(ふち)まで追い込まれているのを視認した。

 突然、「いってぇぇぇ!」と、男の声が、響き渡った。

 その直後、ラーサも、足を止めた。そして、注視した。猫耳族娘の邪魔をしてもいけないと思ったからだ。

 しばらくして、「うがあぁぁぁぁ!」と、荒々しい雄叫びがしてきた。

 次の瞬間、「うわあぁぁぁ!」と、ラット族の男が、浮かび上がり、闘舞台の左側へ滑空するように消えた。

 少しして、猫耳族娘が、細い剣(レイピア)を抜いた。

 その瞬間、「どうやら、私の出番は無いようですね」と、ラーサは、安堵した。何者かが、加勢に現れたのだと察したからだ。そして、引き返そうと、背を向けた。

 その刹那、観衆が、ざわめき始めた。

 程なくして、ラーサは、向き直った。嫌な感じだったからだ。

 その途端、ウルフ族の男と猫耳族娘が、初戦で破った半裸の男が、次々に、闘舞台から排斥されるように、宙を舞いながら、落ちて行った。

間も無く、巨漢のブヒヒ族の男が、猫耳族娘の前までやってきた。そして、問答無用で、引っ張り始めた。

 やがて、猫耳族の娘が、見えなくなった。

 その瞬間、ラーサは、我に返り、少し先に有る階段を目指した。このままでは、猫耳族の娘が、危険だと察知したからだ。だが、再び、観衆に、行く手を阻まれた。間も無く、細い剣が、屋敷側へ飛んで行くのが、視界に入った。そして、「退()いて下さい! 急いでいるんです!」と、叫んで、手提(てさ)(かばん)を押し込むなり、強引に体を割り込ませながら、前進した。急を要するので、遠慮をしている場合ではないからだ。少しして、階段へ到着した。間髪容れずに、上がった。やがて、闘舞台へ上がり込んだ。次の瞬間、中央で、猫耳族の娘の上で、巨漢のブヒヒ族の男が、馬乗りになりながら、顔面を張っているのを確認した。その途端、足を向けた。程なくして、その前で、立ち止まった。

 その瞬間、「ん? 何だ? お前は?」と、巨漢のブヒヒ族の男が、顔を上げた。

「退いて下さいませんか?」と、ラーサは、毅然(きぜん)とした態度で、申し出た。見て居られないからだ。

「嫌だね」と、巨漢のブヒヒ族の男が、頭を振りながら、(こば)んだ。

「そうですか…。仕方ありませんね…」と、ラーサは、溜め息を吐いた。話にならないからだ。そして、「待ってて下さいね…」と、呟いた。その直後、手提げ鞄を持ったままで、右へ腰を(ひね)った。ブヒヒ族の男を退かすには、この方法しか思い付かないからだ。間も無く、振り切れる位置で止めた。その刹那、「えい!」と、力一杯振るった。一瞬後、巨漢のブヒヒ族の男の鼻っ柱へ直撃させた。

 次の瞬間、「うごっ!」と、巨漢のブヒヒ族の男が、もんどりうって吹っ飛んだ。そして、卒倒するように、数歩先で、鼻血を流しながら、動かなくなった。

 その間に、「止めて下さあぁぁぁい!」と、ラーサも、勢いの付いた鞄の重さにつられながら、その場で、自転するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ