何方へと(卅と一夜の短篇第13回)
月の光に輝いて 夜の闇は煌びやか
陽ばかりが良いとは思いたくなくて
一言漏らす暇もなく 僕は明るい空を見上げる
それは昼とも夜ともつかなくて
輝くものが何とも知れず 僕は明るい空を見上げる
雲の厚みに遮られ 昼の光はどこへやら
暗闇の中に囚われたくなくて
溜め息漏らすこともなく 僕は冷たい土を見下ろす
それは夏とも冬ともつかなくて
凍えるものが何かを知れず 僕は冷たい土を見下ろす
明るさを求めるでなく かといって暗さを求めるでもなく
春夏秋冬朝昼夕と 何が変わるとも思わずに
ただ僕は天と地に挟まれて 遥か彼方を想うのだろう
陽が沈み 辺りが闇に包まれてこそ
月や星やは輝き出して 蛍は幻想的に光踊る
太陽に比べてみれば それはとても小さな光で
すぐに消えてしまいそうなほどに それは儚い光でもあって
だからこそに その美しさを魅せるのだろう
陽が昇り 辺りが朝を迎えた頃に
月や星やは眠るかのよう 秘か隠れて夜を待って舞っている
太陽は明るく笑う それはとても温かい光
儚いものを守ろうとする 温もりと慈愛に満ちた光
だからこそに その美しさを魅せるのだろう
どちらともなく揺れる揺れる
右と左に揺れるのは きっと揺れていないから
どちらも重くはないくらいに
激しく揺れる ……右へ……左へ……