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異世界研究備忘録  作者: 10pyo
第1章 魔法の杖を作ろう
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魔法の杖を作ろう8

 オーレイーターを退治した僕たちは、キャシテちゃんの父の工房へと戻ってきた。

 キャシテちゃんの父は、扉を閉めると僕に口を開く。


「まさか、あそこまで苦もなくレッサードラゴンを倒すとは、お見それしました」


「僕自身の腕っ節が強いっていうより、ただ《肉体強化》のレベルが高いだけだけどね」


 元居た世界でいう、レベルを上げてなんとやら、という奴だ。


「それで、報酬の件でございますが、いかがなさいますか?」


 報酬か、マギナッツは絶対として、魔法の杖の柄の部分に使える材料でも貰おうかな。

 でも、何を材料にすれば良いのだろうか。

 ここでちょっと、魔法の杖を作る条件でもまとめてみよう。


 まず、この世界の魔法は射程距離が非常に短く、掌から魔法を発動させるのが限界である。

 参考までに、現在確認されている魔法の中で最も遠くまで影響を与えるものは、風雨族の《風発生》である。この魔法は、掌から発動させることで、魔法レベルに応じた強さの風を発生させる。高レベルになるとそこそこ遠くまで風が届くらしい。

 僕もこの辺りの薀蓄は「魔法大全」という本で知った知識なので詳しくは知らないが。


 魔法そのものの射程距離は非常に短いが、魔力を使って不思議なことを起こすだけが魔法ではないと僕は考えた。

 魔法を使う時に体から流れる魔力を、魔法以外に使うことができないか、その手段を探していると、マギナッツという木の実の存在を知った。

 この木の実は、外見は落花生そっくりだが、魔力を流すと周囲に硬い外皮が炸裂する木の実で、この世界の人々からは、トラップナッツという渾名で呼ばれることもあるそうだ。


 そんな危険なマギナッツに目をつけた理由は、魔力を流すことでマギナッツを安全に炸裂させる杖を作ろうと考えたからだ。魔法の遠隔使用とは異なるが、こういった魔法の杖があってもいいと思った。

 ……決して妥協した訳ではない。


 問題は、マギナッツに魔力を流すための棒である。ファンタジアに存在する物質の中で、魔力を通しにくい物は色々と見てきたし、幾つかは試してみたが、魔力が通りやすい物質というものは今まで聞いたことがなかった。


 魔力が通しにくいものの中でも水や金属の棒は特別に通しにくかったが、棒の中でも木の棒は少しは魔力が流れた。この違いはなんだろうか。

 ……元の世界で似たような特性のものを知っているような、あっちでは逆だったような。


「エウレーカ!!」


 気付いたぞ!


「一体どうしたのですか!?」


 キャシテちゃんの父が訝しむ。しまった、興奮しすぎた。だが、この際気にしない。


 導電率、そう、導電率である。

 魔力の流れやすさは導電率に反比例している、つまり、絶縁体程魔力をよく通すんじゃないのだろうか。

 導電率と違って、空気や大地にも魔力が通しにくいのが気になるけれど、どの道他に手がかりはないんだ。賭けてみる価値はあると思いたい。


「報酬にはゴムを下さい」


 言ってしまった。これでもう後には引けない。


「ゴム? 在庫に沢山あるから構いませんが鎧でも作るのですか?」


 ここで何故鎧が出てきたのかというと、彼らドワーフ族の作る鎧は、関節部にゴムを用い、弾力性を高めているらしい。


「すぐに用意してきます。キャシテ、お前はマギナ様達が帰られる馬車を手配してきなさい。出来るだけ大きなものを、ですよ」


「わかりました、直ちに手配してきます」


 そして、その日の夜は鉱山解放記念にキャシテちゃんの家で盛大にパーティを行った。

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