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異世界研究備忘録  作者: 10pyo
第3章 エルフの住む森
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エルフの住む森1

 魔界での一件から1年、ルクス神国は何も変わらずに(僕の胸も相変わらず平坦で、魔界の魔力で大きく、などということはなかったようだ)平和な時を過ごしていた。


 そんな中、ルクス神国のアーティファクト開発部に新たな報せが入った。

 ルクス神国の南部に位置する森、エルフの里にて新素材と予想されるものが偶然発見されたとのことだ。


 ことの経緯は、エルフの里近辺を警備していた神殿兵が大型生物の襲撃に会い、なんとか撃退したが大怪我を負い、手当てだけでもして貰う為にエルフの里へと運搬された。

 そこで手当てを受けた際、半透明な石を体に当てられたという。何故そのようなことをしたのかと問うと、エルフ曰く


「我らの里にいる生命族の使い手は皆魔力が小さい。だから魔法の力はこの石に込め、本来の術者に代わりに魔力が大きい者がこの石の魔法を使うのだ」


 と言ったそうだ。

 つまりその石こそがMA-No.2の完成に必要な素材だろう。

 例えばこの石をマギナッツの代わりに魔法の杖に取り付ければ、誰でも《生命賦活》の魔法が使えるし、もし《生命賦活》以外の魔法を石に登録できるならば誰でも様々な魔法が使えるようになる。


 そういう訳で、僕とネオンちゃん、護衛のメイさんは神殿兵を助けて貰った礼を兼ねてエルフの里を視察することにした(ルクス神国でもはずれに位置するエルフの里ではドワーフに対する嫌悪感が強いらしく、キャシテさんは同行しないことにした)。




 そして、馬車で数日かけて僕たち3人は例のエルフの里へと到着した。到着した時は夜だった筈だが、森の中にはぼんやりとした白い光が複数見える。

 もしやガス灯? しかし、人界にてガス灯が利用されているなどという話は聞いたことがない。

 では蛍やフェアリーだろうか。だが、ぼんやりにしては明るすぎるし、フェアリーは今まで幻の存在とされていた。あまり考えられないだろう。

 考えていても仕方ない、里へとお邪魔させてもらおう。


「おや、貴女は……」


 森に入ると早速、暗がりから声をかけられた。森の中は夜でも明るい。そしてその光源は声の主ーー金髪で長い耳をした人間、いわゆるエルフーーの左手にあるようだった。


「どうも、僕はマギナ。この国で現人神をさせてもらっています」


「ああ、ご丁寧にどうも。それで、現人神様はどうして私たちの森へと? 人間の街と違って見るべきものなどあまりないと思われますが」


「シダさん、お久しぶりです。メイです。覚えてますか?」


 そういえばメイさんは昔エルフの里から来たって言っていたっけ。もしかしてこの男性はメイさんの知り合いなのかな。


「メイか、久しぶりだな。しかし悪いタイミングできてしまったな」


「何かあったのですか?」


「実はな、最近この森の近くで頻繁にワイバーンを見かけるんだよ。この間も森の近くで神殿兵さんが襲われていてな」


 襲われた神殿兵……間違いなくここで手当てをして貰った人だろう。あの人、魔法の杖を携帯していたとはいえワイバーンを撃退したのか。


「実は僕たちはその人を治療していただいた件でお礼をしに来たのです。どちらの方がやってくれたのでしょうか」


「わざわざ現人神様が来て下さるとは……。今日はもう遅いです。今夜は私の家に泊まって明日案内しましょう」


 そういうとエルフの男性、シダさんは僕たちを彼の家ーー巨大な木の内側をくり抜いて使っているーーに案内してくれた。

 途中、シダさん同様手を白く光らせているエルフを数人見かけた。


 シダさん曰く、あれはアブソーブマジック鉱石という石を握っているらしい。

 アブソーブマジック鉱石とは、鉱石に魔力を流すことであらかじめ登録された魔法が発動する石らしい。

 恐らくこれこそが僕が探していた、魔法の杖の完成に必要な素材だろう。しかし、その見た目は……


「ただの……石英?」


 どこにでもある石英だった。


「? いえ、アブソーブマジック鉱石ですよ?」


 ……まあ、単に名前が違うだけだろう。とりあえず後でアブソーブマジック鉱石の使い方を教えて貰えばいいとして、気になることはもう一つある。


「メイさん、エルフの里出身ならこの石のことも知っていたんじゃないの?」


 僕はメイさんを恨みがましくじっとりと見つめた。


「あー、いえ、違うんです。私、この里には来たことがないんです」


「その割にはシダさんと親しそうだったけど?」


「シダさんは教師をやっていて、私が子供だった頃によく私の里で色々なことを教えてくれたのです」


「ええ、メイは私が教えた中でも特に優秀な方で、特別にエルフの里以外のことも教えていたんです。まさかそれがきっかけで里を出るとは思いませんでしたが」


「それは言わないでくださいよ」


 そう言うが、メイさんは満更でもなさそうだ。

 人に歴史あり、ということか。メイさんの意外な一面を知る後、僕たちは床に就いた。

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