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異世界研究備忘録  作者: 10pyo
第1章 魔法の杖を作ろう
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魔法の杖を作ろう1

 僕がこの世界――「世界」じゃ野暮ったいから仮に「ファンタジア」と呼ぶ――で過ごすようになってからはや5年、どうして自分がファンタジアにいるのか、とか、どうも生まれた場所はここよりもっと田舎だったような気がする、とか突っ込みたいことは沢山ある。

 だけど、僕が今一番文句を言いたいのはこれだ。


【どうしてファンタジー世界なのに魔法の杖が無いんだ!!】


 この世界ファンタジアは、所謂剣と魔法のファンタジー世界である。今まで僕が見てきた限り、普段僕が暮らしている神殿から見た外の街並みはドイツ風の、赤煉瓦でできた三角屋根が建ち並び、文明は中世ヨーロッパに似ている。また、怪我や病気は治癒の魔法で直していたからそれは確かなのだろう。


 しかし、魔法に杖や呪文を使っている様子は3歳の頃に物心がついてから2年で一度もなかった。


 これでは折角のファンタジー世界もどこか物足りなさを感じる。

 だから、僕はこれから魔法の杖を作り、この世界に杖で魔法を使う文化を広めようと思う。(ついでにエジソンのような存在としてこの世界に名を残したいな、なんて思っている)

 ただ、目下の問題は


【僕の体はどうも5歳程度の女の子であり、行動には制限が生じる】


 加えて、どうやら自分は特別な体質らしく


【僕は現人神として、政治の神輿にされている】


 つまり、迂闊に危険なことをしようとすると周りに止められてしまう身である。

 神輿にされることについては、ある程度の自由が貰えば委細ないのだが、この様子では自由にフィールドワークもできそうにない。

 困ったものである。


 更に困ったことに、ろくに研究もできずにそのまま2年も経過してしまった。


 しかし、不幸中の幸いと言っていいのか分からないが、今だに魔法の杖はできていないし、科学技術に対する研究も、下手に魔法が実在する影響で、2年程度ではほとんど進んでいないようだ。(交通手段が乏しく、知識人が集まる事が難しいこともあるのだろう)

 これなら「ファンタジア界のエジソン」になるという僕の夢も叶えられるかもしれない。


 また、流石にこの2年間何もしていなかったわけでは無い。

 世話役の神官に聞くことで、僕はファンタジアがどのような世界なのか知ることができた。


 この世界は人間、獣人、エルフ、ドワーフ、フェアリーなど、様々な種族がそれぞれの集落を持って生活する世界ならしい。

 他にも、伝説上の世界として、魔族が支配する魔界、神族と呼ばれる存在が支配する天界、鋼鉄が闊歩する鉄鋼世界があるとされている。


 伝説といっても、全く根拠がないわけではなく、例えば魔族は獣人の祖先とされているし、魔族自体極少数ながら実際に存在している。

 雷や竜巻などの自然現象は天界に住む神族が起こしているとされているが、僕としては眉唾ものかなと思っている。僕がファンタジアに来る前の世界でも、昔似たようなことが言われていたし。


 最後に、鉄鋼世界だが、この世界の人たちはこの鉄鋼世界こそおとぎ話だ、ありえない、と言っているが、僕は鉄鋼世界の実在をほぼ確信している。

 というか、僕の生前の世界のことだと思う。

 どうも、100年に一度の頻度で向こうの世界の人が迷い込んでしまうらしく、遺留品も残っている。


 実物は見せてもらっていないが、その手のマニア(生前の世界でいうオカルトマニアか)が集めているらしく、投影魔法という、写真撮影に似た魔法の使い手に、紙に遺留品を写して貰った。

 すると、「スマートフォン」や「腕時計」そのものが写り込んでおり、僕は鉄鋼世界の存在を確信した。

 もっとも、鉄鋼世界の名前の通り、ロボットが支配する世界の可能性も残っているのだが。


 あとは、どうして自分が政治の神輿にされているのか分かった。

 その理由を説明するには、まずはこの世界の魔法の仕組みを話しておこうと思う。


 この世界の魔法は大まかに5種類の、魔法族と呼ばれる分類分けがされている。


 肉体強化や身体の治癒を行なう生命族。

 気温操作を行なう炎熱族。

 明るさを操る光明族。

 風や雨、時には雷を発生させる風雨族。

 土や金属を操る素体族。

 という形で分けられている。

 また、前述の投影魔法など、上記に当てはまらない例外も存在する。


 僕が神輿として祭られている理由は、僕が属している生命族の魔法にある。

 僕が無意識に使っている生命族の魔法の一つ、《不老》の魔法が原因で八尾比丘尼が如くとしを取らないのだそうだ。

 このことは、7年前にこの地域を治めていた神殿の戸籍調査により、僕の不老魔法が発覚した。


 といっても本当に歳をとらないわけでも、寿命がないわけでもなく、不老魔法のレベルに応じて少しずつ歳をとっていくらしい。

 参考までに目安を聞いてみると、寿命が魔法レベル倍されるらしい。

 肉体年齢は、17歳からは歳を見かけ上の歳はとらないそうだ。


 それで、僕の不老魔法のレベルの話しになるが、情報解析魔法の使い手によると、レベル200。

 通常の魔法レベルの上限である10を大きく上回るレベルだそうだ。(といっても、不老魔法に関しては例外的に、レベル10を超える人もしばしばいたそうだが高くても30であった)

 また、その他の生命族魔法も、全てが上限値の10に達している。

 清々しいまでのチートだが、僕の研究にあまり役に立ちそうにないのが残念である。


 伝説とされる神族の寿命はおおよそ1万歳。

 それに対して僕の寿命は、この世界の人間の平均寿命60歳に200を掛け、推定1万2千歳である。確かに現人神として神輿にできる逸材かもしれない。


 膨大な寿命を活かし、「ファンタジアのエジソン」を目指すとしますか!

 ……訴訟王は目指さないよ。

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