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異世界研究備忘録  作者: 10pyo
第1章 魔法の杖を作ろう
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魔法の杖を作ろう11

 ルクス神国に帰ってきた僕は、早速大量のマギナッツとゴムを使って実験を開始した。


 ゴムの種類は、薄い板状、厚い塊、長い棒状など、様々な形状のものを提供して貰ってきた。

 肝心の加工方法であるが、実は僕はゴムをどうやって溶着させるのか理解していない。神官達に聞いても、なんだかよく分からない、少なくとも元の世界では再現不能な理屈でゴムを溶着させているらしい。


 そのよく分からない理屈を僕なりに解釈してみると、マジックテープと呼ばれる魔法のテープを使って取り付けているらしい。

 マジックテープと言っても、元の世界にあった様なものとはだいぶ違い、見た目はガムテープを両面にしたようなものである。


 このマジックテープ、実はアーティファクトの一種であるらしい。使い方は簡単で、一度魔力を流すことで、マジックテープを挟んでいるものを強力に接着するのだという。

 僕はまだこのマジックテープについて理解していないが、既に理屈が解明された物品らしく、昔は貴重品だったが今では世界中に職人がおり、市場に出回る数の多さから比較的安値で取引されているという。


 マジックテープを取り外すときは、接着したものをつまみながら魔力を流すことで外れるが、紙などの薄いものをマジックテープで接着すると、まず外すことは不可能という欠点がある。余談だが、鉄等の非常に硬いものもつまめないのではないかと疑問に思ったが、どうやらそのような心配はしなくても良いようだ。

 聞いてみれば簡単な話で、鉄の角の部分をつまんで魔力を流せばそれでいいらしい。


 僕はマジックテープを使ってゴムを棒状のものに接着して魔法の杖を作ろうと思う。

 というか、道具は既に揃っているので、話を聞いてから直ぐに作業に取り掛かり、現在太い木の棒にゴムを接着し、先端が少し窪んでいるものが完成している。


「ねえマギナ様、もしかしてもう完成したの?」


 メイさんは僕に尋ねるが、答えは当然NOである。


「ううん、まだだよ。でもちょっと試したいことがあるんだ」


 そう、あとはこれの先端にマギナッツを取り付けるだけだが、一度この状態で実験したいことがある。

本当にゴムは魔力を通すのか、その実証実験である。


「ちょっと菜園に行ってみるね。せっかくだからメイさんも着いてきてよ」


「え、別にいいけど何をするの?」


 僕はその言葉に、


「ちょっとね」


 と返し、菜園へと向かった。


「よし、これでいいかな」


 何がいいかというと、菜園に植えていたマギナッツの種である。


「《成長》!」


 僕は、そのマギナッツの種に向けゴムの棒を接触させ、《成長》の魔法を放った。

 この魔法は、魔法が使われた生物の成長を促進させる魔法である。

 生命族の中では比較的珍しい魔法であり、主な使用用途は今回の様に、作物の育成補助である。もっとも、連続使用は効果がなく、大抵の場合劇的な変化は望めないので、毎日の積み重ねが大切な魔法である。

 しかし、《成長》のレベルが10の僕の場合は事情が異なり、もしこの実証実験が成功した場合は、目に見えた変化が期待できるはずである。


 僕が魔法を使った瞬間、マギナッツの種を植えていた土がぐぐっと持ち上がり、土の中から芽が飛び出し、更に次の瞬間には芽はあっという間に成木となった。


「やった! 実験は成功だ!」


「あれ、マギナ様、種に手を触れてなかったよね。一体どうしたの?」


 僕は喜び、メイさんは訝しんだ。


「実はね、魔法を体から離れた場所に使う方法を見つけたんだ」


「えっ、それは何かな」


 僕は実験が成功した高揚と、魔法の杖の仕組みに興味を持って貰えた嬉しさから、喜々として話し始めた。


「魔力には流れやすいものと流れにくいものがあるっていうよね」


「そうだけど、マギナ様、そのお年で凄く博識だよね。私、偶に貴女が実は私より歳上なんじゃないかって思うときがあるの」


 流石に高校時代の年を含めてもエルフよりは歳下なはずである。


「うん、それはいいんだ。重要なのは水や鉄は特別魔力が流れにくいってこと」


「それがどう繋がってくるの?」


「魔力が特別流れにくいものがあるってことは、魔力が特別流れやすいものがあってもおかしくないよね。それがゴムってことはただの勘だったけど。」


 半分嘘である。ゴムが特別魔力を流しやすい物体であるということは半ば確信していた。


「まあ、上手くいって良かったよ。これで次の段階に取り掛かることができる」


 次は、マギナッツの炸裂実験。実に危険な実験である。

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