魔法の杖を作ろう10
「ところでさっきはキャシテさん、お父さんに変身していたみたいだけど、どういう仕組みだったの?」
僕は疑問を口にした。
「申し訳ありません、説明を忘れておりました。先程の変身の仕組みですが、マギナ様はアーティファクトというものをご存知でしょうか」
アーティファクト、僕は聞いたことがないな。
「僕は知らないけど、メイさんは?」
「私も知らないよ。偉い人や学者の方なら知っているかもしれないけど」
「知らなくても仕方のないことでしょうね。現在発見されているアーティファクトの大半は旧ルビー王国で見つかったものなのですから」
キャシテさんは語り出す。
「アーティファクトとは、端的に言えば、魔力で動く道具のことです。道具の出処は不明ですが、どういうことか私たちの国、アレキサンドリア共和国でよく確認されています」
確か、アレキサンドリア共和国は魔界と身近な国だって噂があったけれど、それも関係あるのだろうか。
それはそうと、魔力で動く道具か。いつか作ってみたいものだな。
「マギナ様は魔法の杖を作ろうとしているのですよね」
「うん、そうだよ。……まさか」
まさか、僕はすでに……
「そう、貴女は今、アーティファクトを自作するという偉業を成そうとしているのですよ」
まさか僕のしようとしていることがそんな珍しいことだったなんて……流石僕である。
……自分でも茶番だと思ってしまう(しかし、割と事実ならしい)様な会話をしているうちに、僕たちは故郷ルクス神国に帰ってきた。
「ああ、すっかり忘れてしまうところでした」
キャシテさんが言う。なんのことだろうか。
「私が父に変身していた理由です。貴女を驚かせたい、というのも本当ですが」
それは結局本当だったのか。
「私が変身に使ったアーティファクト、変身マントを貴女に差し上げる為でございます。先程の行為は所謂実演の為ですね」
アーティファクトをプレゼント?
「本当に良いの? 珍しいものだったんじゃ」
「確かに珍しいものですが、命と比べれば安いものでした。貴女に助けて頂いた御礼の一環だと思って下さい」
そう言われると断れないな。
「この変身マントは、魔界にいるミミックベアという、他者に変身して襲い掛かる動物の毛皮でできております。ミミックベアの使っていた魔法の力を引き出すことで他の人に変身するのです」
ミミック……ベア?
なんか恐ろしい響きだな。
「使い方は変身マントを、変身したい人に被せてから変身させたい人に被せ、魔力を通すことです。そうすれば初めに被せた人に変身することができます」
なんか、面白い使い方ができそうだな。今はまだ思いつかないけど。
「それではどうぞ」
僕は変身マントを受け取って、ルクス神国に凱旋した。