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異世界研究備忘録  作者: 10pyo
第1章 魔法の杖を作ろう
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魔法の杖を作ろう9

 パーティの翌日、僕たちは朝早くからルクス神国へと帰った。


「どうもお世話になりました」


「いえいえとんでもない、お世話になったのはこちらの方でございますよ。貴女のお陰で鉱山は我々の下に戻り、これで仕事も再開できます」


「また、いつでもいらっしゃって下さいね」


 キャシテちゃんの言葉を受け、僕たちはアレキサンドリア市を後にした。

 再び馬車に乗り、僕たちは故郷ルクス神国を目指し、一週間の二人旅を始めた。

 順調な旅路になると思っていたのだが、トラブルは僕たちを待ってはくれなかった。

 どうも、馬車の荷台から物音が聞こえる気がするのだ。


「なんだろう、この音」


「ねずみじゃないかな」


 メイさんはそういうが、もしそうだったら一つの不安が僕の頭をよぎる。


「動物に魔力ってあるの?」


「あるよ。例えばね、サラマンダーっていう生き物は自分の魔力を使って炎を吐き出すね」


「ねずみとか、普通は魔法を使わない動物は?」


「そういう動物でも、魔力が確認されたことがあるよ」


「確か荷台には沢山のマギナッツがあったよね」


「はい」


「ついでに言ってしまうと、マギナッツは炸裂すると魔力を帯びる性質があるんだよね」


「そうですね」


メイさんは口調が硬くなってきた。まずい事態がやってきた時の彼女の癖である。


「……」


「……」


 僕とメイさんは沈黙する。


「御者さん、一旦止まって下さい!」


 メイさんは馬車の御者に一時停止を命じる。僕はその間に荷台の様子を見ることにした。


「さあ、出てった出てった!」


 僕が荷台の荷物を覆っている布を引っぺがすとそこから出てきたのは予想外の人物が現れた。


「申し訳ありません、出来心だったのです」


 野太い声と共に現れたのはなんと、キャシテちゃんの父であった。


「いや、なんで貴方がここにいるんですか!?」


「申し訳ありません、少々貴女を驚かせてみたかったのです」


 その声は、中年男性の声にしては非常に甲高かった。

 というより、彼の娘、キャシテの声にそっくりだった。


「……?」


 本当にどういうことだろうか。


「疑問に思っているようですね。それではネタばらしをいたしましょう」


 そして彼は突如靄がかかったかのように姿がぼやけると、次の瞬間には姿が変わっていた。


「キャシテ……ちゃん?」


「その通りでございます」


 どんな仕組みなのか、靄が晴れた時に現れた姿は、キャシテちゃんであった。


「実はですね、貴女に助けられた恩をまだ返しきれたとは思ってないのです。そこで、私を貴女のいる神殿で働かせて頂きたいのです」


「それでこんなことをしたんだ。……それで、君はどんなことができるの?」


「坑道で見せたような素体魔法の他、ドワーフ族らしく手先が器用なので、貴女が作ろうとしているものの手伝いができるかと思います」


 ドワーフの手伝いか。


「ごめん、そういうことだったら無しで。君のことは信用したいけど、仮にも他国の人間に、これから開発する技術の詳しい部分を知られたくないから」


 僕は、苦渋を呑んで彼女の申し出を断った。


「でしたら、私をアレキサンドリア向けの外交官として使って下さい」


「外交官……私たちの国には今まで居なかったけど、大きな国にはそういう仕事の人もいるそうだよ。それに、ルクス神国とアレキサンドリア、旧ルビー王国は敵対関係にあったし、関係修復にいいと思うよ。」


 メイさんが口を挟む。こういう時は、半ば別世界の人間である自分より、純粋にこの世界で生きてきた彼女の意見に従った方が良さそうだ。


「でも、キャシテちゃんの歳で外交官なんて大丈夫なの? いや、僕も人のことは言えないけどさ」


 自分は精神年齢24歳だが、彼女はどうだろうか。いつもやけに丁寧な口調だが。


「30歳でございます。」


「マギナ様、ドワーフ族は男性は一般に老けやすいとされているけれど、女性はむしろ12歳前後で成長が止まる種族なんだよ」


 そうだったのか、知らなかった。


「うん、分かったよ。キャシテさん、貴女をルクス神国の外交官にするように神官長にお願いしてみるよ」


「よろしくお願いいたします」


 そういう訳で、僕たちの国に住人が一人増えたのだった。

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