樹里ちゃんの引っ越し祝い~酔いどれ軍団の乱痴気騒ぎにスチャラカOL律子が乱入~PART2(後編)
御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の専属メイドで、ママ女優でもあります。
そんな樹里の前に悪魔が現れました。
「悪魔じゃねえよ!」
その悪魔は正直な地の文に切れました。
「おい、起きろ! 起きろって言ってるんだよ!」
悪魔の皮を被った井川が、隣で泥のように眠っているロリコンに声をかけました。
「誰がロリコンだ!」
井川がいくら揺らしても目を覚まさないのに、地の文がボケた途端に飛び起きて切れる名取です。
でも、裕子という親戚はいません。
「誰が法医学教室だ!」
まだ酔いが覚め切っていない名取は意味不明に切れました。
「誰が柳ゆり菜だ!」
そこへ突然姿を現す律子です。
「どわあ!」
井川と名取は律子のイリュージョンに度肝を抜かれてひっくり返りました。
「呼んだ?」
ニコッとして井川に詰め寄る律子です。
「よ、呼んでねえよ! ていうか、どうしてここにいるのがわかったんだ?」
井川はその風貌に似つかわしくないほど怯えて尋ねました。すると律子はニヤリとして、
「簡単な事だよ、エマ中尉。推理の初歩だよ」
二重にボケたので、全然意味不明になってしまいました。
元ネタが知りたい方は日下部先生にメッセして欲しいと思う地の文です。(しないでください 日下部)
(今のうちに逃げ出そう)
こっそりとその場から立ち去ろうとする名取です。
「どこへ行く?」
井川と律子が見事なハモりで言いました。
「ひいい!」
その途端、全部漏らしてしまった名取です。
その頃、樹里の新居では、一応夫である杉下左京が眉間にしわを寄せて悩んでいました。
「一応夫とか言うな!」
正確に事実を告げた地の文に切れる左京です。
「そうなんですか」
「そうなんですか」
「しょーなんですか」
それにも関わらず、樹里と長女の瑠里と次女の冴里は笑顔全開です。
決して絵顔全開ではないと思う地の文です。
「わたしはあかちゃんじゃないよ、てつじん」
突然瑠里が意味不明な事を言ったので、左京はビクッとしました。
「そうなんですか」
「しょーなんですか」
それにも関わらず、樹里と冴里は笑顔全開です。
「わたしもいるからね、てつじい」
冴里までも意味不明の事を言い出したので、左京は激しい動悸に襲われました。
しかも、冴里に至っては、誰かを軽くディスったようです。
(どうやら、瑠里が勝手にあの酒乱達に連絡して、呼んでしまったらしい……。今から逃げるのも無理だし、どうしたらいいんだ?)
左京は井川達が家に来るのを知り、悩んでいたのでした。
「お久しぶりです、樹里さん」
まだ酔いが覚めていない名取は、瑠里の手を握ってにやけています。
「おうわ! いつの間に現れたんだ、お前は!?」
左京は愛娘の瑠里の手を握っているロリコン男に仰天しました。
「わたしはるりだよ、おじちゃん」
瑠里は笑顔全開で名取の手を振り払って告げました。
「お、おじちゃん……」
その一言で、名取は撃沈し、項垂れました。
「何だ、この家、お酒があまりないのね?」
更にいつの間にか上がりこんでいた律子が勝手に冷蔵庫を開けて言いました。
「あんたは誰だ? 勝手に他人の家の冷蔵庫を開けやがって!」
左京は動かなくなった名取を外に放り出して、律子に詰め寄りました。
「よお、樹里ちゃん、来たぜ」
そこへ井川が現れました。
「あんたまで!」
左京は涙ぐんで叫びました。
「へいお待ち、三河屋です」
そこへ律子の御用達の三河屋さんが店にあるお酒を全部持ってきました。
その凄まじい量を見て、顎も外れんばかりに驚愕する左京です。
(あんなに飲んだらまたあのオヤジが暴れ出すぞ)
左京は井川の酒乱ぶりを思い出し、多分井川の弱点だと思われる樹里の姉の璃里に連絡を取りましたが、つながりません。
(お義姉さん……)
絶望のあまり、首が折れそうなくらい項垂れる左京です。
「お待たせ致しました」
そこへ律子の夫である藤崎冬矢が腕利きのシェフを従えて登場しました。
「待ってたわ、ダーリン!」
律子は項垂れている左京を突き飛ばして、藤崎のそばに駆け寄りました。
「御徒町さん、お会いできて光栄です。私、藤崎冬矢と申します」
礼儀正しい藤崎は、その家の主である樹里に名刺を出して挨拶しました。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じました。
(確かにこの家の主は樹里だ……)
建築費用を一切出していない不甲斐ない夫の左京は地の文の主張に異議を唱えませんでした。
「冬矢君は私のダーリンなんだから、盗らないでよね!」
樹里と藤崎の間に割り込んでガルルと唸る律子です。
「そうなんですか」
「そうなんですか」
「しょーなんですか」
樹里と瑠里と冴里は笑顔全開で応じました。
「樹里ちゃん、今夜は飲み明かそう」
嫌らしい笑みを浮かべて樹里に白ワインが入ったグラスを渡す井川です。
樹里を酔い潰してあんな事やそんな事をするつもりのようです。
「バラすな!」
井川は何でも喋ってしまう地の文に切れました。
「いえい!」
その時、酔いが頂点に達してしまった律子が、ブレイクダンスを踊り始めました。
「おう、すげえな、姉ちゃん!」
律子のブレイクダンスに井川が感心している隙に、むっつりスケベの日下部がワインのおかわりを持って樹里の隣に座りました。
「むっつりスケベではありません!」
これから夜勤の日下部はノンアルコールなので冷静に突っ込みました。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で渡された赤ワインをまるで牛乳のように飲み干しました。
(樹里さん、もしかしてザル?)
日下部は顔を引きつらせました。
「おじちゃん、きらい!」
瑠里が樹里と日下部の間に割り込みました。どうやら、四歳なのに赤ちゃん扱いされたのを怒っているようです。
「さーたんもおじいちゃんきらい!」
存在すら忘れられた冴里はもっと怒って、日下部をソファから押し出してしまいました。
しかも、また軽くディスっています。
「あはは……」
顔では笑っていますが、小さい子に嫌われて心が折れそうな日下部です。
(明日は仕事休んで、孫と遊ぼう)
実は本当におじいちゃんの日下部は思いました。今年で還暦なのです。
「違いますよ」
冷静に地の文に突っ込む日下部です。
「僕達は先に帰りますね」
ダンスをしたせいで潰れてしまった律子を背負った藤崎が言いました。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じました。瑠里と冴里はいつの間にか眠っています。
「またいつかご一緒できたらいいですね」
藤崎が爽やかな笑顔で樹里に言ったので、
「今度はわたしんちでやろうね!」
不意に目を覚ました律子が叫び、また眠ってしまいました。
思わず顔を見合わせてしまう藤崎と日下部です。
「あそこで寝ているおっさんも片付けてくださいよ」
ようやく復活した左京が、帰ろうとする日下部を引き止めて言いました。
「ああ、すみません」
日下部は、冷蔵庫の前で切腹したように酔い潰れている井川を見ました。
(あれ? 名取が見当たらないようだが? 帰ったのかな?)
日下部は井川を引きずって樹里の家を出ました。
「また来てくださいね」
樹里は社交辞令ではなく、言いました。
(二度と来ないでほしい)
心の中ではそう思っても口にしないいろいろと小さい左京です。
「うるせえ!」
今期一番の激ギレをする左京です。
めでたし、めでたし。
「めでたくないぞ! 僕は今どこにいるんだ?」
町内会のゴミ集積所のネットに絡まっている名取が叫びましたが、無視する地の文です。