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君達が、今回のモデルを引き受けてくれた子達だね?

これが、2018年初の投稿となります。

皆様、遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。

今年も、この作品共々、よろしくお願い致します。

「おお…これはまた…」


部下であるスタッフの報告を受け、その目でこの社運を賭けたプロジェクトの、代役のモデルを見ておこうと、慌てて一階の方まで降りてきた社長。

そして、撮影現場となるホールのところまで来たところで、この風前の灯となりつつあった企画に、奇跡を起こしてくれるであろう存在を見て、思わず感嘆の声を、あげてしまう。


なぜなら、一人は現役のモデルと並んでも遜色がないほどに長身でスタイルもよく、顔立ちも整っていて、まさに今回の花婿役として、非常に見栄えしそうな容姿をしているから。

そして、もう一人の花嫁役は、小柄で華奢で、本当に護ってあげたくなるような清楚で可愛らしい、童顔な美少女。

こんな子がウエディングドレスを着て、自分の伴侶になってくれたら、本当に生涯、大事にしようと思えてしまう、そんな感じの子だからだ。


「!しゃ、社長!」


そんな社長の姿に真っ先に気づいた光仁が、その喜びがすぐに分かるであろう、満面の笑みを浮かべながら、社長のそばへと、そそくさと近づいていく。


「おお!寺崎君!」

「社長!」

「この状況で、よく新しいモデルを見つけてくれた…それに、非常に見栄えしそうな二人じゃないか!」

「は、はい!ありがとうございます!」

「なにを言うんだい…お礼を言うのはこっちの方だよ!」


絶望的だったこのプロジェクトに、文字通りの希望の光が舞い降りてきた、とも言えるこの二人。

その二人を、その足が棒になるほどに歩き続けて、ようやくと言った感じで見つけてきた光仁に、社長は心の底からの、感謝の思いを言葉として贈る。


「ちょっと、あの子達にご挨拶をさせてもらうよ?」

「は、はい!」


そして、メイキャッパーやスタイリストにもみくちゃにされている涼羽と志郎のところへ、とりあえず挨拶に行こうとする社長。

一言、断りを入れられた光仁も、笑顔で肯定の意を言葉として響かせる。


「君達が、今回のモデルを引き受けてくれた子達だね?」

「!は、はい…」

「!そ、そうです…」

「そうかそうか…私は丹波 誠一(たんば せいいち)。一応、この会社の社長を任されているものだよ」

「!は、初めまして!鷺宮 志郎と申します!」

「!は、初めまして!高宮 涼羽と申します!」


社長である誠一が、やんわりと涼羽と志郎の二人に自己紹介を行う。

涼羽も志郎も、目の前の自己紹介をしてくれた相手が、この会社の社長だと聞いて、すぐさま礼を失うことのないようにとその身、そして心をもを引き締め、学生らしい元気な声で、しっかりと頭を下げながらの自己紹介と挨拶を行う。


涼羽は普段から学校の教師に対しても礼を失さないように心がけており、そしてそれが職場でもしっかりと行えるようになっている。

さらには、父である翔羽の会社の人間とも顔見知りになっており、意外にも目上の人間とやりとりすることがかなり多くなっている。

そのため、こういった場でも、最低限の礼儀というものを押さえて、しっかりと挨拶などもできるようには、なっている。


志郎の方も、ここ最近は常に目上の人間に教えを請う形が多く、それが自然と学校の教師に対してもできるようになっていて、意外にも最低限の礼儀というものは押さえている。

特に今は、自分はまだまだこれからであり、特別大したこともできないから、色々教えてもらいながら、しっかりと勉強していかないと、という心構えで常にいるため、余計にその身も頭も低くすることが、できるようになっていっている。


そんな二人の、そんな自己紹介と挨拶を見て、誠一の顔もついつい緩んでしまう。

学生の身でありながらも、こうして礼を失することなどなく、自分の方を向いてしっかりと自己紹介と挨拶をしてくれる涼羽と志郎の二人を見て、ああ、この子達なら、ちゃんとやってくれそうだという思いが、芽生えてくる。


「涼羽君…久しぶりだね」


そんな感慨に浸っている誠一の後ろから、涼羽の方へと向けられた言葉が、響いてくる。

その声を、涼羽は以前にも聞いた事がある。

そして、その声の主が誰なのかも、しっかりと覚えている。


「!あ!専務さん!」


父、翔羽の会社の役員であり、上司である専務の姿を見て、少し緊張の方が勝っていた涼羽の顔に、ふんわりとした笑顔を浮かんでくる。

以前、まるで本当の祖父のように可愛がってもらったこともあり、涼羽はこの専務に対して、いいようのない親しみを感じたりしている。


「お久しぶりです…いつも父がお世話になってます」

「いやいや…むしろ君のお父上には、いつもお世話になってるくらいだよ」

「ふふ…ありがとうございます」

「そういえば、君にはまだちゃんと名乗っていなかったね…私の名前は、藤堂 幸介(とうどう こうすけ)と言うんだ。改めて、よろしくね」

「はい!ありがとうございます」

「ふふ…君はいつ見ても可愛いね」


以前はちゃんとした形での名乗りをしていなかったことを思い出し、涼羽に改めてという形での自己紹介を行う幸介。

そんな幸介に対し、満面の笑みを浮かべながら、可愛らしい声でお礼の言葉を響かせる涼羽。

そんな涼羽が本当の孫のように可愛らしく見えてしまい、ついつい、孫を可愛がるかのようにその頭を優しく撫で始める幸介。

祖父という存在を知らないゆえか、いつもなら抵抗の一つでも見せるところなのだが、幸介がくれるその優しい手つきに、目を細めて頬を緩ませながら、されるがままになっている涼羽。


「涼羽君、どうせなら、私のことを『おじいちゃん』と呼んでくれないか?」

「え?」

「私も君のことが本当の孫のように可愛く思えて仕方がないんだよ…なら、君のおじいちゃんとして、そう呼んでもらえると、嬉しいな」

「……お…おじいちゃん…」

「!おお……」


自分に撫でられて、嬉しそうに目を細めている涼羽が本当に可愛くて、本当に実の孫だと思えてしまう幸介。

どうせなら、本当の意味で涼羽に祖父として接してみたい、そんな思いから、涼羽に自分のことを『おじいちゃん』と呼ぶように、お願いまでしてしまう。


唐突といえば唐突な幸介のお願いに、思わず間の抜けた反応を見せてしまう涼羽。


だが、孫が可愛くて可愛くてたまらない好々爺のように、頬を緩めて優しい眼差しを向けてくる幸介を見て、幸介が喜んでくれるなら、と思い、途端に浮かび上がってくる恥ずかしさに頬を染めながらも、幸介の望むように、『おじいちゃん』と、その可愛らしい声で呼ぶ涼羽。

呼んだ途端、さらに浮かび上がってくる恥ずかしさに、ふいと顔を逸らしてしまう。


そんな仕草も非常に可愛らしいのだが、何よりも、そんな可愛らしい仕草と声で、自分のことを『おじいちゃん』と呼んでくれた涼羽があまりにも可愛すぎて、思わず感嘆の声をあげてしまう。


そして、少々だらしない感じに緩んでいる顔をそのまま涼羽に向けながら、まるで覗き込むかのように恥ずかしくて、思わず逸らしてしまっている涼羽の顔をじっと見つめる。


「涼羽君…本当に可愛いね。これからは、私のことは『おじいちゃん』と呼んでくれ」

「え…で、でも…」

「私が、そう呼んで欲しいんだよ。だから…ね?」

「は、はい…」

「いや~…君のような可愛らしい孫にそう呼んでもらえたら、本当に嬉しいね。涼羽君も、私のことを本当のおじいちゃんと思ってもらって、いいんだよ?」

「そ、それは…」


可愛い孫を前にして、デレデレしているおじいちゃんと化している幸介。

もう涼羽のことが可愛くて可愛くてたまらないのか、ひたすらに涼羽の頭を優しく撫でながら、その頬を盛大に緩めている。


涼羽に祖父と呼べる存在がいないことを知っていることもあり、自分のことを本当の祖父だと思っていいとまで、言ってしまう幸介。

そんな幸介の言葉に、さすがにそこまでは、などと思ってしまい、ついつい戸惑いの声をあげてしまう涼羽。

だが、本心ではそんな存在が欲しかったのか、決して嫌だというような素振りを見せることはない。


「いやいや、むしろ私は本当に君のおじいちゃんになりたいくらいなのだからね」

「!え…」

「だから、これからは私のことを気軽に『おじいちゃん』と呼んでくれていいんだよ」

「………」

「ほら、呼んでごらん」

「…お、おじいちゃん…」

「ふふ…なんだい?涼羽君?」

「…えへへ…」


戸惑いの表情を浮かべている涼羽に、むしろ自分が本当に涼羽の祖父になりたい、とまで言い出す幸介。

さらには、これからは気軽に自分を『おじいちゃん』と呼んで欲しい、とまで言い出す。

そんな幸介の声に導かれるかのように、先程よりも自然に、幸介のことを『おじいちゃん』と呼ぶ涼羽。

そして、そんな自分の声に優しげに声を返してくれる幸介を見て、思わず笑顔が浮かんでしまう。

まるで花が咲き開かんが笑顔を自分に向けてくれる涼羽を見て、すでに緩みっぱなしの幸介の顔が、さらに緩んでしまう。


「おいおい、幸介…お前、自分ばっかりずるいじゃないか」


そんな二人のやりとりを見て、どことなく羨ましくなってきたのか…

親友である幸介を非難するかのような声をあげてしまう誠一。

誠一の方は、孫とは疎遠の状態となっているため、余計に幸介と涼羽のやりとりが羨ましく見えてしまっているようだ。


「ん?何がだ?」

「お前…こんなにも可愛い子に自分の孫になってもらうなんて…」

「ふふ…羨ましいか?」

「当たり前だ!わしだって、こんな可愛い孫が欲しいに決まってるだろ!」


親友同士であるがゆえの、お互いに気兼ねしないやりとり。

誠一が羨ましそうに自分に突っかかってくるのを見て、ついつい意地の悪い声を返してしまう幸介。

そんな幸介を見て、誠一は思わず、といった感じでムキになって言い返してしまう。


「ふふ…だが、この子は私の大事な孫なんだ。だから、たとえ誠一であろうとも、やれないな」

「!な、なんだとお!お前ばかり、ずるいぞ!」


そんな誠一に対し、ついつい意地悪したくなるのと、やはりこんなにも可愛い涼羽のことは、自分だけが独り占めしたいという思いが勝ってしまうのか、またしても挑発的な台詞を声にしてしまう幸介。

そんなことを言いながらも、涼羽を自分のそばに寄せて、優しく頭を撫でるのも忘れない。


そんな幸介に、ムキになって大きな声をあげてしまう誠一。

この日初めて会ったばかりであるにも関わらず、よほど涼羽のことが可愛く見えて仕方がないのか…

涼羽のことを思う存分可愛がることのできている幸介を、本当に羨ましそうな目で見ている。


「ふん!それなら…」


しかし、幸介とやりとりしていてもまるでラチがあかないと思ったのか、とうとう自ら涼羽の方へと、声をかけ始める。


「な、なあ…涼羽ちゃん?そこの意地悪じじいばっかりでなく、このわしのことも、『おじいちゃん』と呼んではくれんかね?」

「え、え?」

「涼羽ちゃんみたいな可愛い子が、『おじいちゃん』って呼んでくれたら、わしと~っても嬉しくなるんじゃよ」

「…え、えと…」

「どうか、この老いぼれを喜ばせると思って、そう呼んではくれんかの?」


幸介のそばで、されるがままに幸介に頭を撫でられていた涼羽に、自分のことも『おじいちゃん』と呼んで欲しいと、おねだりのような声をあげてしまう。


この日初めて会った、それも今回のモデルの仕事を依頼している会社の社長である誠一にそんなことを言われてしまい、さすがに戸惑いを隠せないでいる涼羽。


そんな涼羽も可愛いのか、その頬を盛大に緩めながら、普段会社の人間には絶対に聞かせないであろう声を涼羽の方へと向けてしまう。

周囲のスタッフ、そして光仁も、そんな誠一の行動に驚きの顔を隠せずにいる。


「あ…えと……せ…誠一…おじいちゃん?…」


頬の緩んだ、しまりのない顔のまま、期待感の篭った眼差しを自分に向けてくる誠一に対し、あたふたと戸惑いながらも、誠一が望む呼称を、声に出して誠一に向ける涼羽。

同じ呼び方だと幸介とごっちゃになって紛らわしいと思ったのか、名前も含めた呼び方にして。


そんな風に自分を呼んでくれた涼羽の声も、仕草も、表情もよほど可愛らしかったのか…

呼ばれた途端に、そのゆるゆるの頬がさらに緩んでしまい、だらしのない笑顔を浮かべながら、涼羽の頭を優しく撫で始める誠一。


「っひょお~~~~~!!なんという可愛らしさなんじゃ~!!この子は~~!!」

「ふあ…あ、あの…」

「もう一回!!もう一回、このわしのことを、『おじいちゃん』と呼んでくれ!!」

「え…え…」

「お願いじゃ!!涼羽ちゃん!!」

「あ…せ…誠一…おじいちゃん…」

「!!ひょお~~~~っ!!なんという可愛らしさ!!わし、本当に嬉しい!!」


涼羽が本当に可愛くて可愛くてたまらなくなっている誠一。

涼羽の頭を優しく撫でながら、涼羽の可愛らしさを思う存分堪能している。

さらに、アンコールと言わんばかりに、またしても涼羽に自分のことを『おじいちゃん』と呼んで欲しい、などと言い出してしまう始末。


あたふたと戸惑いを隠せず、おろおろするばかりの涼羽に、ぐいぐいと押してくる誠一。

そんな誠一に面食らって、おろおろ、あたふたとしながらも、誠一が望むものを、そのまま声にして誠一に贈る涼羽。


そんな涼羽があまりにも可愛すぎて、そしてそんな可愛すぎる涼羽に『おじいちゃん』と呼ばれたことが本当に嬉しくて、感激のあまり飛び上がってしまう誠一。


その様子を一部始終見ていた周囲の社員、スタッフはもちろんのこと、光仁や志郎までも、そんな誠一の姿に思わず引いてしまっている状態と、なっている。


「せ、誠一…お前…そんなキャラじゃないだろう…」


そして、親友であるはずの幸介も、誠一のあまりの壊れっぷりに苦笑を浮かべながら、突っ込みの声を向けてしまう。

今のような誠一は、親友である幸介ですら、ろくに見ることがなかったため、そんな声が漏れてしまうのも、無理もない状態だと言える。


「いや~、こんなにも可愛い女の子に、『おじいちゃん』だなんて呼ばれるとは…もう嬉しくて嬉しくてたまらんのう!!」


誠一の家族は、子の世代も孫の世代も男所帯であり、女子が非常に少ない。

それゆえに、孫娘となる存在がいない。

男子でも、小さい頃は確かに可愛いので、うんと可愛がってはいたのだが…

さすがに大きくなってくると、そんな風に可愛がられるのに抵抗感が出てきてしまい、ついつい、祖父である誠一と、孫が距離を取ってしまうことと、なってしまっている。


加えて、孫達は幼い頃から格闘技を習っていることもあり、より男くささが目立ってしまっており、もうすぐ中学生となる今では、かなり幼さが抜けて、精悍な感じが出てきている。

孫の方が祖父と距離をおきたがっているのと、現在はただでさえ、一流企業の社長ということもあって日々多忙なうえ、それに加えてこの社運を賭けたプロジェクトにまで多大に首を突っ込んでいることもあり、普段以上に多忙な状態と、なってしまっている。


そのため、孫達と疎遠になってしまっていて、どうしても今、涼羽としたようなやりとりができないでいる状態なのだ。


加えて、男だらけの一族で華がなく、可愛らしい孫娘が欲しかったこともあり、どう見ても童顔な美少女にしか見えない涼羽とのやりとりは、誠一にとって非常に嬉しいものと、なっていた。


「…あ、あ~…誠一」

「ん?なんだ?幸介」

「…とりあえず言っておくが、涼羽君は、男の子だからな?」


そんな誠一に対し、とりあえず勘違いは正しておこうと思った幸介から、ネタばらしとなる一言。

それを聞いた瞬間、非常にご機嫌だった誠一が、笑顔のままピシリと、まるで石にされてしまったかのように固まってしまう。


「……………」

「せ、誠一?……」

「………は!?わしの耳に、何かおかしな幻聴が届いておったような気が…こんなにも可愛い涼羽ちゃんが、実は男の子だなどと…」

「いや、幻聴じゃないぞ」

「は?」

「涼羽君は、(見ただけじゃ絶対に分からんだろうが)男の子だからな」


親友である幸介の一言に、思わず固まってしまったものの、それほど間をおかずに復帰し、幻聴だなどと言い出してしまう誠一。

しかし、そんな誠一に幸介が、まるで世の中の理不尽な現実を突きつけるかのように、涼羽が男であることをはっきりと告げる声が、誠一の耳にはっきりと、届いてしまう。


「……………………は、はああああああああああっ!!!!!!!!」


その突きつけられた言葉に、一度涼羽の方をしっかりと見直し、しかしどこからどう見てもとびっきりの美少女にしか見えないことを実感してしまう。


しかし、それでも涼羽が男である、ということをはっきりと告げる親友の言葉に、今度こそ誠一の口から、その事実に対する驚愕度を表すであろう、大絶叫が飛び出してしまうので、あった。

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