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みんなが俺の為にしてくれてることなんだから…

仕事では相変わらず打ちのめされている状態が続いています。

まさにサンドバック状態ですorz


もっともっと、頑張らないと!!

「え?合コン?」


志郎がクラスメイトの男子達に合コンの誘いを受けているその頃。

時を同じくして、場所は涼羽のクラスとなる3-1の教室。


そこで、保育園のアルバイトがあるため、いそいそと準備して教室を出ようとしていた涼羽を呼び止めたのは、クラスメイトの男子達。

普段は女子のガードが堅いため、なかなか涼羽とやりとりをするきっかけが掴めないでいたのだが、ちょうど涼羽がアルバイトに向かうため、美鈴含む女子達と離れたそのタイミングで、声をかけたのだ。


そして、一度教室を出て、屋上の出入り口手前の階段の踊り場という、通常なら目立たない場所を選んで涼羽に来てもらい、そこで話を切り出したのだ。


ちなみに、この時涼羽に声をかけた男子達は、容姿に関しては割と整っていて、イケメンと言っても差し支えないレベルではある。

だが、その割には浮いた話がなく、高校生活最後の年と言うこともあって、異性に対して非常に飢えており、そういうガツガツとした肉食獣的な雰囲気が、異性という感覚をまるで感じさせず、同性と同じ感覚で気安く接することのできる涼羽に慣れているクラスの女子達に、敬遠されてしまっている状態である。


そんな彼らが涼羽に持ちかけた話というのは、合コン。


校内では自分達にいい印象を抱いていない女子ばかりで、正直このままでは彼女いない暦と年齢が等しいまま、高校生を終えることとなってしまう。

そのことに非常に危機感を覚えており、それなら校外で出会いの場を求めていこう、ということで、降って沸いたかのように飛び込んできた合コンの話に、ものすごい勢いで食いついていった男子達。


「そ、そう、合コン」

「ちょうど俺らの方にそんな話が来ててさ」

「もしよかったら、高宮も、って思って、声かけてみたんだ」


平均よりも高身長な彼らの胸の辺りまでしかなく、その位置からきょとんとした表情を浮かべながら、自分達を見上げてくる涼羽の可愛らしさに、まるで本当の異性を相手にしているかのような錯覚を覚え、しどろもどろな感じになりながらも、話を進めていく男子達。


実は彼らも、涼羽のことを異性としてとらえている側であり、こんなにも可愛い子がなぜ男子なんだ、という残念な思いを抱きながらも、目の前の可愛らしさに、そんなことどうでもいい、とさえ思いつつあるという、複雑な心境に陥ってしまっている。


今も、男子として涼羽を合コンに誘おうとしているのに、なんだか女子を誘おうとしているかのような感覚に陥ってしまっており、見てるだけで癒されるかのような可愛らしさを、思う存分に堪能してしまっている状態と、なっている。


「えっと…」

「高宮ってさ、いっつもバイトに家事に勉学にって、すごく忙しそうじゃないか」

「たまには、羽目を外して、息抜きするのも必要じゃないか?」

「そうそう、たまにはこんな風に、どっかでぱーっと遊ぶのもいいと思うぜ?」


この男子達も、普段から世話好きの涼羽にいろいろと、助けてもらっているクラスメイト達。

ゆえに、普段の授業中の勉強熱心な態度も見ているし、女子達に囲まれてめちゃくちゃに可愛がられているのも見ている。

そして、学校が終わったらアルバイトして、家では家事全般全て一人でしているのも、知っている。


そんな涼羽のために、たまには空気の違うところで息抜きをさせてあげたい、というちょっとした思いから、合コンに誘いの声をかけてみたのだ。


「あ、あの、ちょっと聞きたいんだけど…」

「?ん?なんだ?」

「なんか、分からないことでもあったのか?」

「俺らで分かることなら、何でも教えるからさ」


どことなく、何か分からない、といった雰囲気の涼羽が、控えめに問いかけの声をあげてくる。


そんな涼羽が可愛くて、また癒されながら、優しく紳士的な態度で、聞かれたことに答える姿勢を見せる。

普段から涼羽に勉強を教えてもらってばかり、ということもあり、その涼羽が分からないことを自分達に聞いてくる、という状況に嬉しさまで覚えてしまっている。


だが、次の涼羽の言葉を聞いて、男子達は思わず呆気にとられることとなってしまう。




「…合コンって、何?」




すごく控えめに、覗き込むような上目使いでそんなことを言ってくる涼羽がまた可愛らしくて、頬が緩みそうになってしまうが、それよりも世間一般的に使われているであろうその単語の意味を知らないという、涼羽の世間知らずぶり、そして純粋さに、さすがにクラスメイトの男子達も一瞬、言葉を失ってしまう。


「(え?え?い、今高宮、なんていってた?)」

「(合コンって、何?って?)」

「(ま、マジ?マジでそんなこといってるの?)」


まさか、自分達と同じ、今年十八歳の高校三年生である涼羽の口からそんな言葉が出てくることに、その瞬間は盛大に驚き、思考も混乱気味になってしまう。


「(…まあ、でも高宮なら、そんなこと知らなくても不思議じゃないか)」

「(だよな、ずっと学校と自宅の往復みたいな生活だったって聞いてるし)」

「(しかも、アルバイトに家事に、って、遊んでる様子なんかまるでないもんな)」

「(それに、こんなにも男っぽさがなくて、本当に家庭的で女子みたいだし…)」

「(こんなにも可愛い高宮が、そんなこと知ってる方がおかしいよな)」

「(こういうところも可愛すぎて、本当に癒されるよな~、高宮…)」


しかし、普段の涼羽を見て、聞いている男子達は、すぐにその思考を改め、この目の前の可愛いの化身なら、それも仕方ないか、と思い直してしまう。

落ち着いて考え直してみれば、涼羽が合コンを知らないというのは当然のことであり…

むしろそうでなくては涼羽ではないとさえ、思ってしまっている。


「えっと…どうしたの?俺、何か変なこと、言った?」


急に言葉を失って、妙に温かな目で自分を見てくる男子達に、自分が何か変なことを言ってしまったのかと、少々不安げな様子を見せながら、問いかけてくる涼羽。


他の男子達が知っていて当然、という雰囲気を出していたこともあり、そのおかげで余計に自分の出した疑問がおかしいのか、と思ってしまう。


「ん?あ、ああ…」

「いやいや、むしろそれでこそ高宮だって思っちゃってさ」

「うんうん、高宮は何もおかしいことは言ってないからさ」

「??…」


そんな涼羽の様子を見た男子達は、緩みがちになっていた頬をさらに緩ませて、涼羽の言葉に対して反応の言葉を返す。

もうどんな仕草でも本当に可愛らしい涼羽を見ているだけで、心が和んでくることもあり、ついつい男子達の顔に笑顔が浮かんでくる。


そして、本当に心の中で、こう思ってしまうこととなる。




――――可愛いは、正義!!――――




もう涼羽の可愛らしさは、同性とか異性とか、そんなことどうでもよくなってくるほどの可愛らしさだと思ってしまっている男子達。

ゆえに、こんな可愛い質問なら、いくらでも受け付けるし、いくらでも優しく教えたくなってしまう、とさえ思っている。


しかし、それゆえに下手なことを教えるわけにはいかない、という使命感も、男子達の中で芽生えてくる。

こんなにも純粋で天使のような心の持ち主の涼羽に、変にいかがわしい知識などを入れてしまいたくない、という思いが出て来てしまう。

それゆえに、ここでの回答は慎重に言葉を選びながら行なわなくてはならない。

涼羽に変なことを吹き込んでしまって、それを周囲の涼羽を常に可愛がっている女子達が聞いてしまったなら、それこそ血を見るほどの凄惨な出来事が自分達の教室の中で行なわれかねない。

そして、それだけではなく、この涼羽が変にスレてしまうことが、本当に恐ろしく思えてしまう。


やはり、この純粋さが、普段から常に人の為に動いて、人が喜んでくれたらそれを我が事のように喜ぶ涼羽を形成しているのだと、男子達は思っているから。


「高宮、合コンっていうのは、お互いに人数合わせした男子と女子が、仲良くするために遊ぶイベントのことを言うんだ」

「え?そうなの?」

「そうそう、そのとき初めて会う男子と女子が、お互いを知ろうとするために遊んだり食事したりして交流していくというイベントなんだ」

「へえ~、そうなんだ…」

「そこから、お互いに興味を持って仲良くなった男子と女子が付き合い始めたり、とかも場合によっては発生する、一種の出会いのイベントとも言うね」

「!そんなことから、お付き合いが始まったりするんだ…」


クラスメイトの男子達が言葉を選びながら丁寧に教えてくれることを、涼羽は興味津々に素直に聞き入れていく。

そして、その一言一言に驚いたり、感心させられたりと、いちいち見せるリアクション。

そのリアクションの、可愛らしいこと可愛らしいこと。


男子達も、涼羽のそんなリアクションに頬を緩め、癒されながら、さらに話を続けていく。


「そうなんだよ、で、高宮も普段からアルバイトに家事にいろいろ大変で忙しくて、なかなか気分転換する機会もないと思ってさ」

「だから、たまには気分転換の意味も込めて、こんなイベントに参加とか、してみたら、って思ってさ」

「高宮には、勉強で分からないこととかいっつも教えてもらってるし、こんなことくらいしかできないけど、たまにはお返ししたいと思ってたから」


一見、ウソも方便として涼羽を参加させたいだけのように思える男子達だが、意外にも本気でこう思って誘おうとしている。

その言葉にウソ偽りは何一つなく、本当に涼羽のことを思って誘いの言葉をかけているのだ。


そんな風に思って、自分を誘ってくれる男子達の言葉が、涼羽は妙に嬉しくなってしまう。

普段から女子達に囲まれていることもあり、男子達との交流が志郎以外になかなか持てなかった、というのも手伝って、余計にその嬉しさが大きくなってしまう。


「…ありがとう、みんながそんな風に思ってくれてたなんて…なんだか俺、すっごく嬉しいな」


その童顔な美少女顔に、花が咲き開かんがごとく眩い笑顔を浮かべて、男子達に感謝の思いを言葉にする涼羽。

こんな、男友達との付き合いの機会は涼羽にとっては本当に貴重なこともあり、余計にそう思えてくる。


「!!(うわ~…やっぱり高宮って、まじ天使みてえで、まじ可愛いな…)」

「!!(高宮、本当に純粋で、本当に可愛い…)」

「!!(これで男だなんて、まじ罪作りすぎて…それでも可愛すぎて…)」


そんな、同じ男だということを忘れさせてしまうような涼羽の笑顔に、男子達も思わずドキっとしてしまう。

しかも、今まで涼羽がしてくれたことの方がずっと大きくて、ずっとありがたいことなのに…

自分達のこんな些細なことでこんなにも素直に喜んでくれるというのが、本当に嬉しく思えて仕方がない状態となってしまう。

加えて、こんなにも可愛らしい天使のような笑顔を見せてくれるなんて、本当に男だということを忘れてしまいそうになってしまう。


実際、今回は自分達と他のクラスの男子達とセットになっていくこともあり、結構な人数の合コンとなる。

それゆえに、好みのタイプの取り合いなどといった、一種の修羅場的なことも発生するかも知れない。


そんな時、目の前にいる涼羽のような、本当に天然で周囲をふんわりとさせてくれる存在がいれば、合コン自体もそんな険悪な空気にならなくて済むかもしれない。

そんな打算もあってのことなのだが。


しかし、第一としては、普段から本当に忙しくて大変な涼羽に、たまにはちょっとした気分転換の場を提供してあげたいという、その思い。

それが、最優先となる。


もらったものを、少しでも返したい。

自分達にできることといえば、こんなことくらいなのだが、それで喜んでもらえるのなら。


そんな、女子に飢えている男子達の、意外と言える純粋な思いからの、このお誘い。

普段からお世話になっている男友達への、ちょっとした遊びのお誘い。


だから、第一は涼羽の意思そのもの。

もちろん、涼羽が行かない、もしくは行けないと答えた場合は、この話はご破算となり、また別の人間に改めて声をかけることとなる。

そのこと自体は、特に思うこともなく、むしろ涼羽には自分の都合を最優先して欲しい、とさえ思っている。


そして、もし涼羽が行く、と答えてくれた時は、全力で涼羽のサポートをしようと、本気で思っていたりする。

そのうえで、自分の好みの女子を見つけてあわよくば、とは思ってはいるのだが。


「(高宮は優しいから、こんな風に言われたら、断れないと思うかもしれないけど…)」

「(別にダメだからと言って、何も思うことなんてないからな)」

「(こっちが勝手に思ってやってることなんだから、ダメならダメでいいからな)」


この紳士的な思いや態度を、他の女子に向けてあげれば、彼女の一人や二人、すぐにできるはずなのに、と、周囲が事情を知った上で見ていれば、そう思ったことだろう。


そういう気持ちや態度が、女子と付き合う上で重要なことだということに、肝心のこの男子達が気づくことはなく…

ただただ、それが同じ男子であるはずの涼羽にのみ、向けられている。

それもまた、奇妙と言うか、面白いと言うか…


そして、そんな男子達に対し、涼羽は少しの間、黙り込んでいたが…

その沈黙を破り、その唇を動かして、男子達が待つ返答を、言葉にしていく。


「…うん、せっかくのお誘いだし、思い切って行ってみようかな」


その返答は、涼羽に気分転換の場を、と思っていた男子達の顔に、笑顔をもたらすものとなった。


「ほ、本当か!?高宮?」

「うん、せっかくだから、いってみようかなって思って」

「マジで?でも、忙しいんじゃないのか?」

「うん。でも、ちょっとくらいなら大丈夫だよ」

「もしかしたら、高宮にしてみたらそんな面白いもんじゃないかもだけど、本当にいいのか?」


自分達の誘いの言葉に対し、肯定の意を示してくれた涼羽の言葉が嬉しい反面、本当に涼羽の負担になっていないか、と思い直し、ついつい確認の言葉を出してしまう男子達。


その男子達の一言一言に、笑顔で答える涼羽。

決して、そんな負担などではない、という意を。


そして、最後に向けられた男子の言葉に対しては――――




「え?なんでそう思うの?だって、みんなが俺の為に思ってしてくれてることなんだから、楽しくないなんてこと、ないと思うから」




本当に純粋に、みんなの好意が嬉しくて、絶対に楽しくなれるとさえ思っている涼羽の思いが、そのまま言葉となって表れることとなった。


そんな涼羽の純粋な言葉に、男子達はますます涼羽のことをできた人間だと、思ってしまう。


「(あ~もう!本当に高宮、いいやつすぎて、可愛すぎてたまんね~!!)」

「(俺、絶対こいつが困ってたら、できることなんでもしてやりたくなっちまう!!)」

「(高宮が絶対に今度の合コン楽しめるように、俺らがちゃんとしね~とな!!)」


自分達のことを無条件で信じてくれている涼羽の言葉が本当に嬉しくてたまらない様子の男子達。


本来なら自分達が彼女作りのために参加する合コンのはずなのだが、いつの間にか涼羽を楽しませるために参加する思考に変わってしまっていることに、当の男子達が気づく様子は、見られることはなかった。

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