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りょうおねえちゃん、いつもいつもありがとうなの!

転職して、久しぶりの技術職となりました。

肉体労働から、デスクワークへの切り替えに多少時間がかかりそうな感じです。


早く、新しい環境に慣れていきたいと思います。

「あたしは涼羽ちゃんがいいの~!!」


土曜日のお昼時。

今、涼羽に向かって駄々を捏ねるように騒ぎ立て始めている水蓮の自宅である水神家。

その水神家のリビングにて、涼羽の言葉に打ちのめされて固まっていた水蓮が、いきなり再起動を果たしたかと思うと、永蓮にべったりと抱きつかれて可愛がられていた涼羽を、実の母から奪い去るかのように抱きしめ、今年で二十七歳になる妙齢の女性とは思えない程に子供っぽく、駄々を捏ねだしたのだ。


それもこれも、やはりこの可愛くて可愛くてたまらない涼羽に、料理を教えて欲しいから。


自身が幼き頃、ずっと母である永蓮が頑張って、水蓮に料理を教えようとしていたのを、ことごとくフイにしていたことから…

その永蓮で無理なのなら、自分では到底無理だ、という涼羽の言葉。

その言葉に一度はショックを受け、落ち込んでしまったものの、自分も食べてみて本当に美味しいと感じたこの昼食を作った涼羽にこそ、料理を教えて欲しい、と。

その昼食を作る過程において、母である永蓮が本当に幸せそうに、楽しそうにしていたのを見て、さらには涼羽も同じように楽しそうにしていたのを見て、涼羽が先生なら、苦手な料理も絶対に続けられると思ったからこそ。


母、永蓮が楽しんでいたように、自分も涼羽と一緒に楽しんで、涼羽に料理を教わりたい。


本当に、そう思ったからこそ、何が何でも涼羽に料理を教えて欲しいと、駄々を捏ね始めたのだ。


「…す…水蓮…お姉ちゃん…」

「お願い!涼羽ちゃん!あたし本当に真面目にお料理教わるから!」

「…で、でも…」

「涼羽ちゃんと一緒にお料理したいの!あたし!」


涼羽に料理を教わることで、必然的に涼羽に学校以外で会える機会も増えてくる、という狙いももちろんあるものの…

それよりもなによりも、とにかく涼羽に料理を教わりたくてたまらない、という状態にまでなってしまっている水蓮。


頼まれている側の涼羽が本当に引いてしまうほどの必死さで、ひたすらに頼み込んでくる水蓮。

そんな水蓮に対し、涼羽も戸惑いを隠せず、しどろもどろな反応となってしまう。


「涼羽ちゃんがうんって言ってくれないと、あたしここで涼羽ちゃんのその可愛いお口にちゅーしちゃうから!」


なかなか首を縦に振ってくれない涼羽にじれったさを感じてきたのか、ついにとんでもないことを言い出してくる水蓮。


これが、水蓮に対して下心のある男性に対して言ったのなら、もう二つ返事どころか、返事よりも先に自分が水蓮の唇を奪ったりしていたことだろう。

そのくらい、水蓮は異性から見て本当に魅力的に見られている女性だから、である。


だが、今水蓮にそんなことを言われているのは、そんな男子としての欲求が皆無に等しいと言える存在である、高宮 涼羽。

当然、そんな涼羽の反応は…


「!ちょ、な、なんでそんなことになるんですか!?」


と、こんな風にわたわたとしてしまい、思わず顔そのものを逸らしてしまっている。


こういったことに対して本当に免疫がなく、むしろ顔を赤らめて恥らってしまうほどに慎み深いのだから、本当に男かどうか疑わしく思われても仕方がないといい切れてしまう。


まあ、涼羽がこんな性格だからこそ、水蓮もあけっぴろげにこんなことを言えているわけなのだが。


「だって~、涼羽ちゃんがあたしのお願い聞いてくれないなら、そうするしかないかな~って」

「だ、だからなんでそういうことになるんですか!?」

「だって、あたしはこんなにも可愛い涼羽ちゃんにちゅーできたらすっごく幸せだし~、で、涼羽ちゃんはぜ~ったいに恥ずかしがって、困っちゃうわけでしょ?」

「そ、それはそうですけど…」

「だから、涼羽ちゃんならちゅーされるくらいなら、あたしにお料理教えてくれるの、うんって言ってくれそうだって思ったから」

「そ、そんなことで気安く自分のく…く…唇を…」

「ん~?なあに~?」

「…自分のご主人以外の…男子に…その…あの…」

「あたしの旦那以外の男の子に~?」

「…あ…あ…あげたり…なんかしたら…その…」

「なあに~?聞こえないわよ~?」

「…だ…だめ…だと…思うんです…」

「え~?なんでだめなの~?」

「!…そ、そんなの…お、女の人の唇って…もっと…大切にするべきだと思います…」

「うん、そうよね~」

「!だ、だったら…」

「でも、あたしは涼羽ちゃんだったら、いくらでもあげちゃうわよ?」

「!な、なんで…」

「だって~、こんなにも可愛くて大好きなんだもん~。むしろ、涼羽ちゃんの大切な唇、あたしが欲しいくらいなんだから」

「!…そ、そんなの…だ、だめです…」

「だあめ♪涼羽ちゃんがお料理教えてくれないんだったら、あたし涼羽ちゃんの可愛いお口にちゅーしちゃうから♪」


水蓮の言葉に、顔を真っ赤にしながら、懸命に抵抗を見せる涼羽。

そんな涼羽が可愛くて、ついついからかいたくなってしまう水蓮。


水蓮もあの永蓮に育てられてきただけあって、意外にも貞操観念というものはしっかりと持っている。

恋愛も、今の夫が最初であり、そのままゴールインしたことを考えると、決して尻軽と言われるような女性ではなく、むしろ一途である、とさえ言える。

加えて、男女が身体を重ねあうような行為も、結婚してからと言うのだから、今時としてはかなり珍しいタイプである、と言える。


第一印象がそれなりに男性経験もありそうな感じであるがゆえに、この事実を他の人間が聞けば本当に意外だと、驚いてしまうであろう。


そんな水蓮と夫婦になることのできた旦那の方も、そういった婚前交渉などを嫌う、今時で言えば古い恋愛感の持ち主であったため、この辺りが夫婦がうまくいっている要素の一つとして成り立っているところはあるだろう。

もちろん、旦那の方も恋愛に関して言えば水蓮が最初で最後の一人となっている。


そんな水蓮なのだから、異性に対して気安く唇を、などと言うことが本当にはしたないことだということは、十分すぎるほどに認識できており、今の今まで、まかり間違ってもそんなことをしたことなどない。


ただ、涼羽に対しては恋愛感情ではなく、本当に家族に対する愛情として、そういうことをしちゃいたい、と思ってしまっているから。

ただ、それだけなのである。


それほどに、水蓮にとって涼羽は本当に可愛くて可愛くてたまらない弟であり、妹である…

そんな存在なのである。


だから、そんな水蓮の事情を知らない涼羽が、顔を赤らめながらそんな貞操観念を言い聞かせるかのような発言をするのが本当に可愛らしくて、ついついからかいたくなってしまう。


実際、涼羽の艶のいい唇を見て、本当にキスをしてあげたくなるほどに、涼羽のことが大好きで大好きでたまらない存在と、なってしまっている。


「うう…」

「ね?お姉ちゃん涼羽ちゃんのことい~っぱい可愛がってあげたいから、ちゅーもい~っぱいしてあげたくなっちゃうの♪」

「!だ、だめです…」

「え~、じゃあ、涼羽ちゃんがあたしにお料理教えて?」


その整った顔をゆるゆるにしながら、恥じらいながらおたおたする涼羽の様子を眺めている水蓮。

可愛すぎてついつい意地悪な感じになってしまうという自覚はありながらも、それをやめられないでいる水蓮。


異性に対する免疫のない涼羽が、水蓮のような妙齢の美人な女性にこんなことをされてしまうと、ただただ、恥じらいに頬を染め、俯くことしかできなくなってしまう。

しかも、年齢とのギャップを感じさせる、甘えてくるかのようなおねだりに、母性的で年下に弱い涼羽が抵抗などできるはずもない。


「うう…わ、分かりました…」


もうどうすることもできなくなってしまい、ついに水蓮のお願いに、首を縦に振ってしまうこととなる。


「!ほんと?あたしにお料理教えてくれるの?」

「ぼ、僕でよければ…ですけど…」

「何言ってるの!あたしは涼羽ちゃんがいいの!」

「お、お婆ちゃんほどうまくはないですけど…」

「やったあ~♪い~っぱいあたしにお料理教えてね、涼羽ちゃん♪」


自らのお願いを聞いてくれた涼羽に、花が咲き開かんばかりに笑顔を見せる水蓮。

そして、涼羽のことをより強く抱きしめ、その頭を優しくなで始める。


涼羽に教わりながら、一緒に料理をする時のことを考えて、今からものすごく楽しみになってきている水蓮なので、あった。




――――




「えへへ~♪りょうおねえちゃん♪」

「ふふ、かなちゃん可愛い」


昼食も終え、後片付けも終えて、のんびり一段落の状態のリビング。

夕食もまた改めて永蓮が涼羽に教えながらとなっており、それまでは涼羽も水神家で寛ぐこととなっている。

食材の方も永蓮が事前にこの日の為に買いこんできているので、特に改めて買出しに行く必要もなくなっている。


先ほどまでは水蓮に迫られるかのようにべったりとされていた涼羽だったが…

今度はその娘である香奈に、べったりと抱きつかれている。


香奈にとっては大好きで大好きでたまらないお姉ちゃんである涼羽。

その涼羽にこんな風にべったりとできることが、香奈には本当に幸せで、嬉しくてたまらない。


涼羽も、こんなにも自分に懐いて、甘えてきてくれる香奈が可愛くて可愛くてたまらなくなっているようで、香奈の小さな身体を優しく抱きしめ、その頭を壊れ物を扱うかのような繊細さでなでている。


今の涼羽は、水蓮のお下がりの制服を着て、その長い髪もツインテールにしてしまっているため、誰の目をも惹いてしまうほどの可愛らしい美少女中学生となってしまっており…

そんな涼羽に、まだ四歳ながら、非常に将来性の高い整った顔立ちの美少女である香奈がべったりと懐いているその姿は、まさに少し歳の離れた姉と妹が、べったりと仲良くしているようにしか見えないほどとなってしまっている。


「りょうおねえちゃん♪」

「なあに?」

「だあ~いすきなの♪」

「ふふ、ありがとう、かなちゃん」

「りょうおねえちゃんは、かなのことすき?」

「うん、大好き」

「!えへへ~♪かな、す~っごくうれしい!」


そんな風に、ぱっと見では仲良し姉妹にしか見えない二人が、こんな風に仲睦まじく寄り添っている光景。

お互いに大好きと言い合い、本当に幸せそうに触れ合っているその姿。


そんな二人のやりとりを見て、水蓮も永蓮もすっかりその顔が緩んでしまい、本当に幸せそうに見守り続けている。


「りょうおねえちゃん、だいだいだいだいだあ~いすきなの!」


もう、涼羽のことが大好きで大好きでたまらない、という気持ちが抑えられなくなってしまったのか、その小さな身体を目一杯伸ばして、涼羽の艶のいい唇に、自らの唇を、まるで鳥が餌をついばむかのようにくっつけてしまう。


「!わ……か、かなちゃん…」


そんな香奈の愛情表現に、少し恥ずかしそうにしながら苦笑が漏れ出てしまう涼羽。

まさに、家族としての親愛の情を表現する香奈のキス。

そんな香奈のキスに、優しい笑顔が浮かんでくる。


「りょうおねえちゃん、いつもいつもかなのこと、い~っぱいかわいがってくれて、ほんとうにありがとうなの♪」

「え?かなちゃん?」

「かな、りょうおねえちゃんのこと、い~っつもだいすきなの!だから、ちゅーもしたくなっちゃうの!」

「かなちゃん…」

「りょうおねえちゃんにぎゅ~ってされるの、あたまなでなでされるの、ほんとうにだいすきなの!りょうおねえちゃんがしてくれたら、かな、い~っぱいしあわせになれるの!」

「…そうなの…」

「だからりょうおねえちゃん、これからも、かなのこと、よろしくなの!」

「…ふふ」


いつもいつも、香奈が本当に望んでいることをしてくれる涼羽は、香奈にとって本当に大好きで大好きでたまらない存在。

そして、いつもいつも自分に幸せを与えてくれる、とても有難い存在。


そんな涼羽に、小さな子供らしい、純真無垢な可愛らしい言葉で、お礼を言ってくる香奈。

そして、涼羽のしてくれることで、どんなに自分が幸せになれるのかも、懸命にアピールしてくる。


そんな香奈が、本当に可愛く、愛おしく思えて仕方がなくなってくる涼羽。

自然と、母性と慈愛に満ち溢れた笑顔が、その童顔な美少女顔に浮かんでくる。


「かなちゃん」

「?なあに?」

「こちらこそ、ありがとう。そんな風に、思ってくれて」

「!!」

「かなちゃんが幸せそうで、嬉しそうな顔してくれたら、お……お姉ちゃん、本当に嬉しくなってくるから」

「!りょうおねえちゃん…」

「かなちゃん、本当に可愛くていい子だから、い~っぱいかなちゃんが喜ぶこと、してあげたくなっちゃうの」

「えへへ~♪」

「だから、お……お姉ちゃんの方こそ、これからもよろしくね、かなちゃん」

「はいなの!」


涼羽の方も、こんなにも幼く可愛らしい香奈が、こんなにも自分に懐いてくれることに、本当に幸せを感じている。

だからこそ、香奈が喜ぶことをいっぱいしてあげたい。

香奈が幸せだと思うことをいっぱいしてあげたい。


そんな香奈に、自分の思っていること、感じていることをありのままに伝える涼羽。


そして、先ほど香奈がそうしたように、香奈の幼い唇に、自らの唇をそっと落とす。


「!!」

「ふふ、可愛いかなちゃんへ、さっきのお礼、だよ?」


こういうことに抵抗感を感じてしまう性格のため、頬を赤らめてしまっているものの…

その顔には、本当に優しさに満ち溢れた笑顔が、浮かんでいる。


こんなにも可愛くて、優しくて、大好きなお姉ちゃんに、こんな風に優しく親愛の情を表すキスをしてもらえて、一瞬驚きの表情が浮かんでくるも、すぐに幸せ一杯の天真爛漫な笑顔が、浮かんでくる香奈。


「りょうおねえちゃん、だいだいだいだいだあ~いすきなの!」


大好きで大好きでたまらないお姉ちゃんである涼羽に、こんなにも優しく、愛情たっぷりのキスをしてもらえて、涼羽が大好きだという気持ちを抑えられなくなってしまっている香奈。


本当に幸せそうに、涼羽の胸に顔を埋めて、その小さな身体をべったりと涼羽の身体に貼り付けるかのように、ぎゅうっと抱きしめてくる。


「りょうおねえちゃんは、かなだけのおねえちゃんなの!」

「か、かなちゃん…」

「だから、ず~っとかなのそばに、いてね?りょうおねえちゃん?」

「そ、それは…」

「ず~っといっしょにいてくれなきゃ、やだよ?りょうおねえちゃん?」


もう涼羽がこの水神家の子であることを当然であるかのように言い出し始める香奈。

極度の人見知りであるがゆえに、なかなか人と接することができないでいたのだが、迷子になったところを涼羽に見つけてもらえてからは、とにもかくにも涼羽に懐いている。


もはや香奈にとって涼羽は、自分のそばにいてくれて当然の存在であり、大好きで大好きでたまらないお姉ちゃんだという認識しかない状態となっている。


そんな香奈の言葉に困った様子を見せながらも、結局は優しく包み込むかのように抱きしめ、その頭を優しくなで続けている涼羽なので、あった。

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