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これからは、絶対にあたしの名前を出しな!

日付が変わってしまいました…


投稿が遅くなってしまい、申し訳ございません。

うまくいかないことが多い日々が続きますが、しっかりとしていきたいと思います。

「みんな、こんにちは~」

「!あ~!りょうせんせー!」

「わ~い♪りょうてんてーがきた~♪」


秋月保育園に到着し、いつも通りに着替えて、園児達の前に姿を現す涼羽。

園児達も、大好きな涼羽先生が来てくれたことで、その幼く愛らしい顔に、まばゆいばかりの笑顔が浮かんでくる。


「えへへ~♪りょうせんせー♪」

「りょうせんせー、らっこ~」


そして、ぱたぱたと可愛らしい足音を立てながら涼羽のそばへと近寄っていくと…

我先と言わんばかりに、涼羽の胸に飛び込み…

その胸に顔を埋めて、目一杯甘えてくる園児達。


「ふふ、みんな可愛い」


そんな園児達全てを包み込むかのように、母性と慈愛に満ち溢れた嬉しそうな笑顔で…

優しく、自分に甘えてくる園児達を抱きしめ…

その頭を順番になでなでし始める涼羽。


ちなみに、今の涼羽は、学校指定の男子用の制服ではなく…

珠江が嬉々とした表情で押し付けてきた…

ここに初めて来た時と同じ、落ち着いた印象のセーターとロングスカートに身を包んでいる。


もちろん、着替える際に沸きあがる羞恥と戦って、ここに来るまでもずっとその可愛らしい顔を羞恥に染めてはいたのだが…

いざ、園児達と顔を合わせると、まるでそれまでが嘘だったかのように…

本当の美少女保母さんであるかのように、スイッチが切り替わっている涼羽なのである。


「うふふ、本当にちっちゃい子達と触れ合っている涼羽ちゃんって、可愛い」

「………」


そんな風に幼い園児達と心温まる触れ合いを見せる涼羽に対し…

涼羽と一緒にここまで足を運んできた彩は、その整った顔を緩めながら、至福の表情で見つめている。


そんな彩とは対照的に、自分だけの兄が、他の子供たちに取られているようでまるでいい気がしない…

そんな表情になってしまっている羽月。


どこまでも、兄、涼羽に対しては激しい独占欲を抑えることができない妹、羽月。

せっかくの幼げで可愛らしく、整った美少女顔が、不機嫌に歪んでしまっている。


「おやおや、唐沢さんじゃないですか」


そんな彩と羽月に気づいた珠江が、とてとてと二人に近づいていく。

どこからどう見ても、童顔な美少女保母さんにしか見えない涼羽の姿に、頬を緩めたまま。


「こんにちは、いつも娘がお世話になってます。市川先生」


自分のそばにまで寄ってきた珠江に対し、笑顔で一礼をしながら、挨拶の言葉を向ける彩。

涼羽がここに来てからの珠江は、本当に負担が少なくなっているようで…

以前のような、どこか無理をしている感じがなくなってきている。


もともと、彩はどこか無理をしている感のある珠江のことを本当に心配していたため…

今の珠江を見ていて、本当に安心できると、思っている。


「いえいえ、今はもう、彩華ちゃんは涼羽ちゃんにべったりですから…あたしがお世話してることなんて、そうないですよ」

「そんなことはありませんよ。だって、涼羽ちゃんは学生さんですから…朝からここにいられるわけじゃないですし…」

「それでも、涼羽ちゃんの言うことをよく聞いてくれているおかげで、彩華ちゃんは以前よりももっといい子になってくれて…もう本当に手のかからない子になってくれてますよ」

「ええ…もう本当に涼羽ちゃんさまさまですね」


涼羽が普段から接することの多い彩華に、優しく教えていること…


他の人の喜ぶことをしてあげること…

他の人が困っていたら、お手伝いをしてあげること…

他の人を困らせるようなことはしないこと…


それらを、本当に分かりやすく、簡潔に言い聞かせている。


その甲斐あってか、彩華は以前にも増して、本当に手のかからない、いい子に育っている。


そのおかげで、珠江の負担も目に見えて少なくなり…

実の母親である彩にしても、幼い娘がすごくいい子に育ってくれているおかげで、自宅の雰囲気もどんどんいいものになっていっている。


無自覚とはいえ、彩華をそんな風に導いてくれている涼羽には、二人共感謝の思いが、次から次へと浮かんでくる。

加えて、思わず抱きしめてめちゃくちゃに可愛がりたくなってしまうくらいの、本当に健気で可愛らしい容姿、そして性格。


涼羽がここでアルバイトをしてくれるようになって、本当によかったと…

心の底から思っている二人なのである。


「?おや、この娘は?」


そんな風に彩と涼羽への思いを共感しているところに、珠江が、彩の隣にいる羽月の存在に、気がつく。

初対面である珠江に、無遠慮にじろじろと見つめられて、思わず後ろへと下がってしまう羽月。

人見知りで兄への依存度が非常に高いため、どうしても初対面の人間に対して、こうなってしまう。


「なんだかこの娘、涼羽ちゃんによく似てるね…」


そんな羽月のことを、じろじろと無遠慮に見つめていた珠江だが…

その顔立ちが、涼羽によく似ていることに気がつく。


「ええ、そうなんですよ。市川先生」

「?唐沢さん?」

「この娘、涼羽ちゃんの妹さんなんですって」

「!あら~、そうなんですか!」


そして、彩の口から、羽月が涼羽の妹だということを告げられる。

その彩の言葉に、思わず顔を綻ばせて、再び羽月に視線を向ける珠江。


「ま~、さすが涼羽ちゃんの妹ちゃん…可愛いね~」

「はい…この娘、涼羽ちゃんのことが本当に大好きみたいで…ここまで来る最中、ずっと涼羽ちゃんにべったりと抱きついてましたから」

「!あらあら、それはまた本当に可愛いね~」


一人は高齢の、一人は妙齢の女性にじろじろと見つめられ…

非常に居心地が悪いのか、俯いたまま、どうすることもできずにいる羽月。


そんな羽月のことが目に入ったのか…

自分にべったりと抱きついていた園児達に一度離れてもらい…

涼羽が、妹である羽月のもとへと、ぱたぱたと足音を立てながら、そばまで近づいてくる。


「羽月、大丈夫?」


心なしか、怯えているようにも見える妹に優しく声をかけ…

安心させるかのように、その頭をなでる涼羽。


大好きで大好きで…

この世で一番信頼できる兄がそばにきてくれて、本当に安心したのか…

その小さな身体を、べったりと兄の身体に寄せて…

幼子が、母親に甘えるかのように、兄に甘えてくる羽月。


「どうしたの?羽月?」

「……やなの……」

「?」

「…お兄ちゃんが、他の子に優しくしてるの、本当にやなの…」

「…羽月…」

「…お兄ちゃんは、わたしだけのお兄ちゃんなんだもん…」

「………」


その幼げな容姿に相応な、甘えん坊な妹の姿。

その小さな身体に不釣合いな、目一杯の独占欲に、身を任せながら。

まるで、ここの園児達から取り返そうとせんがごとく、兄、涼羽のことを抱きしめて離さない羽月。


これには、さすがに涼羽の顔にも、困った感じの苦笑が浮かんでしまう。


「…羽月は、本当に甘えん坊さんだね…」


わがままに駄々をこねるわが子を、目一杯の愛情で包み込む母親のように…

自分にべったりと抱きついてくる妹を優しく抱きしめ…

その頭を、優しくなで始める涼羽。


どこまでも甘えん坊でお兄ちゃん子な妹に困りつつも…

結局は、こんな風に甘えてくれることに幸せを感じてしまう。


まさに、その心境がそのまま浮かんでいるかのような、笑顔を見せている。


「あらあら、本当に涼羽ちゃんのことが大好きなんだね~」

「ええ…もうここまで来る最中も、まるで恋人同士のようでしたから…」

「涼羽ちゃんも、妹ちゃんのことが可愛いみたいだね~…」

「涼羽ちゃん、本当にいいお兄ちゃんしてるみたいですからね」

「…え?」


この秋月保育園で、いつもの固有結界を見せる高宮兄妹を見て…

思い思いの言葉を並べていく珠江と彩。


そして、彩がさりげなく響かせた、『お兄ちゃん』という言葉に…

一瞬、何を言っているのか分からない、と言わんばかりの、ぎこちない反応を見せる珠江。


そんな珠江に、してやったりな表情を見せる彩。


「…涼羽ちゃん本人に聞きました。涼羽ちゃん、本当は男の子なんですね」

「…あ、あの~…そ、それは…」


涼羽が本当は男の子であることを、彩が知ったと告げられ…

そのことに対して、どう取り繕おうか考えながらも、言葉が出てこない珠江。


さすがに、ここまで美少女保母さんだという触れ込みが多くなっている今の状況で…

今更、涼羽が男だとバレるのは非常にマズいという考えが、先に出てしまう珠江。


もともとは、自分が面白がって最初に女装させて、女の子としてお披露目をしてしまったのが原因なのだから…

そのことに関しては、自分が責任を取らないといけない、とは思ってはいたものの…


いざ、こうしてその場面を迎えると、何をどうしていいのか分からず、おたおたとしてしまう。


そんな珠江に対し、まるで怒った様子も見せず…

むしろ、何をそんなに慌てているの、と言わんばかりの笑顔で、珠江を見つめる彩。


「…大丈夫ですよ、市川先生」

「?え?」

「私、涼羽ちゃんが男の子なのを隠されてたこと、別に怒ったりしてるわけじゃないですから」

「??え??え??」

「そもそも、涼羽ちゃんが男の子だって知ったのも…涼羽ちゃんが学校帰りで男子の制服着てたのと…あの妹ちゃんが、涼羽ちゃんのことを『お兄ちゃん』って呼んでたから、気になって本人に聞いてみたからなんですよ」

「!そ、そうだったんですか…」

「…正直、本当に驚きましたよ。だって、あんなにも可愛くて、どこからどう見ても美少女な涼羽ちゃんが、男の子だなんて…一体、何の冗談なの、って思っちゃいましたから」

「で、ですよね…」

「でも、涼羽ちゃん…私に自分が男の子だって告げてから…懸命にこの保育園のこと…園長先生や、市川先生のこと…かばってましたよ」

「!!」

「悪いのは全部自分だから…だから、秋月保育園の人を責めないで下さい、って…必死になって、私に懇願してきてましたから…」

「りょ、涼羽ちゃん…」

「…正直、怒るよりも、本当にこの子が男の子なの、っていう思いで一杯だったんですけど…そこに、あんなにも健気に保育園を護ろうとするその姿…それを見てたら…この子が男の子か女の子か、なんて、どうでもよくなっちゃいました」

「………」

「それに、涼羽ちゃんが、うちの娘をあんなにもいい方向に導いてくれてるのは、まぎれもない事実なんですから…そんな子が、くだらない悪さをするために、性別を偽ってここで働くなんて、絶対にするわけがない、って…なんか、そんな確信まで持てちゃって…」

「………」

「ですから…安心してください、市川先生」

「唐沢さん…」

「涼羽ちゃんが男の子だってことは、私、誰にも言いませんから」

「!あ、ありがとうございます!」

「ふふ…お礼なら、私よりも涼羽ちゃんに言ってあげてくださいね。だって、涼羽ちゃんがここに来てから、この保育園の雰囲気、もっとよくなっているんですから」

「!そうですね…」


園児の保護者である彩に、涼羽の本当の性別を知られ、どうしようと思っていたところに…

まさかその当人である涼羽が、その身を挺して、この保育園のことを護っていてくれた、ということを聞かされた珠江。


あれは、最初に涼羽の容姿を見て、悪ノリで女の子の格好をさせてしまった自分の責任なのに…

にも関わらず、保育園のこと、園長先生のこと…

そして、何よりもそんなことを強要してしまった自分のことをかばってくれるなんて。


そして、この保育園にとってはお客様である彩に、ここまでの信頼を抱かせていて…

決して、くだらない理由で、性別を偽ったりなんてしないと、確信を持って言ってもらえるなんて…


高宮 涼羽という存在が、この保育園にとってどれほど得難い存在であるのか…

そして、どれほどに愛すべき存在であるのか…


それを、まさに痛感させられることとなった珠江。


「涼羽ちゃん!」


もういてもたってもいられなくなったのか…

兄である涼羽にべったりと甘えたままの羽月もろとも、涼羽を抱きしめてしまう珠江。


「!わ!た、珠江さん?」

「むぎゅ…」


そんな珠江に、驚きの表情を見せながら、珠江の方へと視線を向ける涼羽。

羽月の方は、いきなり抱きしめられる力が強くなってしまい、兄の胸に顔を押し付ける形となってしまって…

思わず、苦しそうな声を上げてしまう。


「涼羽ちゃん…あんた、本当にいい子だね~」

「?え?」

「あんたを女の子として、お披露目しちゃったのは、このあたしなのに…」

「??」

「いいかい?涼羽ちゃん」

「は、はい?」

「あんたが男の子だってこと、もし、今後他の保護者の方にバレたりしたら、その時は絶対にあたしの名前を出すんだよ」

「!な、何を…」

「あたしゃ本当にダメな先輩だよ…あんたみたいな子に、あたしのしたことの責任を負わせることになりそうだったなんて…」

「た、珠江さん…」

「本当にごめんねえ、涼羽ちゃん」

「そ、そんな…これは、僕の…」

「それから、ありがとうねえ…そこまでして、この保育園のこと、護ってくれてたなんて…本当にありがとう」

「い、いえ…そんな…」


本当にストレートに、感謝の思いをぶつけてくる珠江に照れくさくなってしまったのか…

その顔を真っ赤に染めて、俯いてしまう涼羽。


そんな涼羽がまた可愛いのか、その頭を優しくなで始める珠江。


「もう…どれだけ可愛かったら気が済むんだい…あんたって子は…」

「た、珠江さん…」

「いいかい…あんたは本当は男の子なのに、女の子としてお披露目しちゃったのは、このあたしなんだよ?だから、もし次にこんなことがあったら、絶対にあたしの名前を出しな!」

「………」

「このことは、あたしが責任取るから…いや、取らないといけないからね」

「そ、それは…」

「いいかい?あたしから見れば、あんたは子供なんだから…子供に責任取らせる親になんて、あたしゃなりたくはないからね!」

「!…」

「分かった?涼羽ちゃん?」

「は、はい…」

「うんうん、よろしい」


ここの園児の保護者である彩の口から、涼羽がどれほどにいい子で、どれほどに信頼できる人間なのかを、聞かせてもらえた珠江。


そんな涼羽に、自分のしたことの責任を負わせるなどということ…

それを、もう少しでしてしまうところだったということ…


自分よりもずっと年下の、まだまだ子供と言える年代の涼羽が、そこまでしてこの保育園をかばってくれていたのに、自分は一体何をしていたのだと、まさに頭を殴られたかのような衝撃を受けた珠江。


それは、実際に彩の口から、涼羽の本当の性別を告げられた時の、自分の反応が、全てを物語っていた。


だからこそ、もう二度とこんなことにはならない、いや、させないように、という…

まさに、珠江の決意表明として、涼羽に伝えることとなった。


「うふふ…涼羽ちゃんは本当にいい子だから、私も大好きなんです」


そんな涼羽と珠江のやりとりを見ていた彩が、自分もと言わんばかりに…

涼羽のそばに寄ってきて、珠江と挟み込むかのように、涼羽のことを抱きしめる。


「!か、唐沢さん…」

「涼羽ちゃん、これからも、彩華のことよろしくね」

「!は、はい」

「ふふ、涼羽ちゃん本当にいい子いい子」


娘のことをお願いする自分の声に、素直に返事を返してくれる涼羽がまた可愛くて…

珠江と同じように、優しく涼羽の頭をなで始める彩。


結局、珠江と彩の二人に目一杯可愛がられることとなり…

しばらくの間、顔を真っ赤にしながら、じっと耐えることしかできない涼羽なので、あった。

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