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うむ…正解だ…

今日は用事で高槻に行ってましたが…

すっごく雪が降ってました。


大阪で雪が積もる光景を見られるなんて、久しぶりでした。

そして、めっちゃ寒かったです。

「え~、ではこの問題を……高宮、解いてみてくれ」

「はい、分かりました」


週の始めである月曜が終わり…

翌日の火曜日の、涼羽のクラスの授業。

現在は数学の授業の真っ最中である。


教室の前にある黒板に書き込まれた問題の解答役に涼羽を選んだ数学担当の教師。

どの教科も満遍なく成績良好で、授業態度も非常に真面目な涼羽がこうして解答役に当てられることは、ごく当たり前の光景となっている。


多少、得意不得意のばらつきがあるものの、トータルで見れば涼羽よりも成績のいい美鈴が当てられることも結構あるのだが…

どちらかといえば文系よりな美鈴は、実は理数系をあまり得意としていない。


それでも、クラスの平均よりは十分にいいのだが。


なので、理数系に関しては涼羽の方が成績がよく…

理数系の授業では涼羽の方が当てられることが多いのだ。


ただし、あくまで全体の比率で見れば涼羽と美鈴の二人が、解答役として抜擢されることが多いというだけで…

当然ながら、他の生徒達にもそれなりに満遍なく当てるようには、なっている。


そして、教師から解答役に指名された涼羽が自分の席から立ち上がると…

まるで臆する様子もなく、堂々と黒板の前まで進んでいき…

右手に持ったチョークで、目の前の問題に対する解答を、すらすらと書き込んでいく。


ちなみに、この数学の授業においては、他の生徒が『あれ?』と思うくらいに、涼羽の指名率が高い。

他の生徒も多少、といった感じで当てられたりはするものの…

基本的に週の全ての数学の授業のうち、全ての解答機会の半数以上が涼羽に当てられている。


涼羽の方は、なんだか自分が当てられることが多いな、というくらいの認識しかないため…

特におかしいと思うこともなく、ただ淡々と前に出て黒板に解答を書き込むだけではある。


この数学担当の教師が、高確率で涼羽を指名する理由は、もちろん普段の授業態度と、教科ごとのばらつきがなく、満遍なく良好な成績にもあるのだが…

一番の理由は、また別にあったりする。


「(…ああ~…今日も涼羽ちゃん、本当に可愛いな~…)」


実はこの数学教師、周囲にはひたすら隠し通しているものの…

かなり重度のオタクであったりする。


アニメ、ライトノベル、マンガ、ゲーム…

とにもかくにもプライベートは二次元に捧げている、まさに典型的なオタクだ。


今となっては非常に数ある、好みの属性…

その中でも、彼が特に萌えている属性が、『男の娘』だったりする。


それも、一般の人が見れば間違いなくドン引きするほどの入れ込みようで。


年齢はまだ三十台になったばかりで、長身痩躯で容姿の方も整っており…

地味に校内の女子生徒にも高い人気を誇っているのだが…


女性に対する反応が非常に淡白で、周囲から見れば、異性に興味がないんだろうか?と思われているほど。


その素っ気無さがいい!という女子が非常に多く、かえって積極的にアピールする女子が増えているのだが…

肝心の本人は残念ながら、二次元にしか興味がないという始末。


それも、一番の属性が『男の娘』なのだから。


しかし、一時期からその可愛らしい、童顔な美少女顔を露にしてきた涼羽を見た瞬間…


彼の心は、文字通り射抜かれてしまうこととなった。


二次元にしか存在しないと思われていた、男の娘という存在…

自宅の中は、男の娘もののグッズや本などで埋め尽くされてしまっているほどに恋焦がれていた、男の娘という存在…

どんなに似合っていても、やはり現実では不自然な感じは隠し切れないと嘆いていた…

そんな時だった。


まるで、二次元から飛び出してきたかのような、至高の男の娘に出会ったのは。


異性装特有の不自然さがまるでなく…

むしろ、普段から着ている男子生徒用の制服に違和感を感じてしまうほどの…

どこからどう見ても、極上の美少女にしか見えないほどの男の娘。


クラスの女子達にひたすら可愛がられて、恥じらいに頬を染める姿…

幼い子供を優しく包み込んでいるときの、女神のような笑顔…

授業を受けている時の、真面目な表情…


どれを見ても、文句のつけようがないほどの男の娘。


こうして、解答役に指名して、自分のそばにまで涼羽が来てくれる…

その時が、彼にとっての至福の時となってしまっている。


「(いつ見ても可愛い顔…それに、つやっつやの綺麗で長い髪…抱きしめたら折れちゃいそうな華奢な身体…しかも、相変わらずのいい匂い…)」


意外とクラス内でも気づかれていないことなのだが…

彼は、他の生徒を指名する時は、その時々で生徒の右側にいたり、左側にいたりと、法則性がなかったりする。

だが、涼羽を指名した時は、必ず涼羽の左側にいるのだ。


涼羽が黒板の前に立っている時だけは、彼が生徒の右側に立つことは決してないのだ。


理由はもちろん、涼羽の露になっている顔の左半分…

それを、思う存分に堪能したいがゆえ。


右側だと、その顔を前髪がカーテンのように覆ってしまっているため…

涼羽の可愛らしさ満点の顔を思う存分に堪能できないからだ。


しかし、それでいて彼の顔は能面のように無表情であり…

傍から見れば、非常にクールで理知的で、落ち着いた印象しかない。


だが、その心の中では、決してこの世にはいないと思われていた至高の男の娘である涼羽に対し…

まさに狂喜乱舞といえるほどに、激しくざわめかせている。


加えて、涼羽を指名する時はこっそりと…

その時点では習っていないはずの、難しい問題を出して、答えられないで悩んでいる姿を見ようとしたり…

さらには、非常に勉強熱心で真面目な涼羽が、分からなかったことを自分に聞きに来ることを期待したりするのだ。


今、黒板に書いてある問題も、それに該当する問題である。


「(ふふふ…今回のは特に難しい問題だからな…いくら成績優秀な涼羽ちゃんでも、解けまい…)」


これまで、そんな意図で出してきた、高難易度な問題は…

本格的にプログラミングにのめり込んでいっていることもあって、より理数系に対する学力が向上している涼羽によって、割とあっさりと解かれてしまっている。


その度に、表面上は素っ気無く、『よくできた』と褒めたりはするものの…

内心ではかなり悔しがったりしている。


それなら、素直に本人に、『どこか分からないところはないか?』と、さりげなく聞いてみればいいのだが…

それはそれで、相手が至高の男の娘であるため…

傍から見ていたい、というファン心理が強すぎて、かえって個人的に声をかけられない状態になってしまっている。


なので、こうして難問を出しては涼羽に解かせようとし…

分からなければ、自分のところに聞きに来るように、といって…

涼羽とのマンツーマンでの質疑応答の機会を得ようとすることに…

今現在非常にやっきになっている、三十台独身の数学教師なのである。


そして、今回は自信ありの難問だったのだが…


当の涼羽は特に悩む素振りも見せず、かりかりとリズミカルにチョークを動かし…

順調に問題を解いて、解答を黒板に書き込んでいっている。


「(ま、まさか!?これも、そんなにあっさりと解かれてしまうのか!?)」


表面上の表情にまるで変化はないものの…

内心、非常に驚いている数学教師。


というものの、今回出した問題は、全国的にもかなりの偏差値を誇る大学の入試問題から抜粋した…

こんな、一般レベルの公立の高校の授業ではまず出てこない、難問中の難問だったからだ。


といっても、高校数学の基礎ができていれば、決して解けない問題ではないのだが…

その解にたどり着くまでのプロセスは、完全に個人の数学力がものを言う。

つまり、そのプロセスを知らない状態でその解にたどり着くのは至難の業であり…

それができるということは、相当な数学センスがある、ということになる。


趣味的にとはいえ、プログラミングに取り組むことで…

知らず知らずのうちに、本質的な問題解決能力が格段に向上している今の涼羽。


それが、この難問すらも解ける要因となっている、といえよう。


「(か、解答は…!あ、合ってる!…な、なんて子なんだ…この子は…)」


解を導き出すまでのプロセスは、一般的なものとは違うものの…

それでも、正解の範疇に収まるプロセスとなっている。


むしろ、より洗練されて無駄が省かれていて…

涼羽のプロセスの方が解答としては最適、と言えるほどのものとなっている。


自分がそんな高難易度の問題に手をかけていることなど、微塵も思うことなく…

少し思案する様子こそあるものの、特に手が止まることなどなく…

ただただ、目の前の黒板に解答を書き込んでいっている。


「(わ〜…涼羽ちゃんすご〜い…あんな難しい問題なのに、すらすら解いちゃってる〜…)」


そんな涼羽を見て、美鈴は驚きと敬服の念しか出てこない状態となっている。

理数系がやや苦手な美鈴にしてみれば、今涼羽が手がけている問題は、一体何が書かれているのかすら、理解が追いついていない状態なのだから。


そんな問題を至極当然のように、すらすらと解いている涼羽が、まるで別次元の存在のように思えてしまう。


「(涼羽ちゃんって、すっごく可愛いだけじゃなくて、頭もすっごくいいんだ〜…)」

「(あんな問題、わたし全然わかんないもん)」

「(すご〜い、涼羽ちゃんって)」


他のクラスメイトの女子達も、美鈴と同じように…

自分達では、書いてあることの意味すら理解できない超難問を、いとも簡単に解いていっている涼羽に、驚きと敬服の念しか出てこないでいる。


「(高宮すげ〜…あいつ、あんなに頭良かったんだな〜)」

「(俺、黒板に何書かれてるのかすら、全然分かんね〜)」

「(あんなに可愛くて頭もいいなんて、ますます好みなんだけどな…)」

「(あ〜…難しい問題すらすら解いてる高宮も可愛いぜ〜…)」

「(なんだよあの後ろ姿…思わず抱きしめたくなるじゃねーかよ)」


普段、涼羽と絡むことができない男子達も、自分達では全く歯が立たない難問を当然のように解いている涼羽に対し、尊敬の念すら現れはじめている。


そして、今となっては完全に涼羽の可愛さに落ちてしまっている煩悩派の男子達は、涼羽の頭の良さよりも、一生懸命に手を伸ばして黒板に解答を書き込んでいるその後ろ姿に、ひたすら可愛らしさを覚え、それを目一杯堪能してしまっている。


「…できました」


全ての解答を黒板に書き込み終えた涼羽。

チョークを持った右手の動きを止め…

持ったチョークを黒板の下側にあるチョーク入れの中へと戻す。


「これで、よろしいでしょうか?先生?」


そして、その小柄で華奢な身体を全て、数学教師の方へと向けると…

自分よりも頭一つは高い、数学教師を見上げて、自分の解答が合っているかどうかの確認を求める声をあげる。


自分の胸あたりの位置からまっすぐに見上げてくる涼羽の真面目な表情。


「(あ〜…なんて可愛いんだ…涼羽ちゃん…真面目な顔も可愛すぎて、先生はどうにかなってしまいそうだよ…)」


周囲に誰もいなければ、間違いなく涼羽のことを抱きしめて、思いっきり可愛がってしまっていただろう。


そんな思いをギリギリのところで抑え込み…

周囲が普段から目の当たりにしている、淡々としていて、抑揚のない表情を、目の前の涼羽に向ける。


「…ふむ…途中の過程も素晴らしい…うむ、正解だ」


文句のつけようもない、素晴らしい涼羽の解答に、惜しみなく賞賛を送る数学教師。


表情こそは変わらないものの、その声にはどことなく喜びのようなものを感じさせる。


「ありがとうございます、先生」


そんな声を聞いて、真面目一辺倒だった涼羽の表情がふんわりと柔らかくなり…

ぱあっと花が咲き開かんばかりの笑顔を、惜しげも無く披露してしまう。


「!!……」


それを見た誰もが、思わず目を奪われる笑顔をいきなり向けられて、数学教師のクールな表情が、わずかながら歪んでしまう。


「(く、く〜〜〜っ!)」


自身の中から、激しく噴火するマグマのごとく込み上がってくる衝動を必死で堪える数学教師。


その作業に必死になってしまい、まるでフリーズしたコンピュータのように、動きが止まってしまう。


「?どうかしましたか?先生?」


そんな数学教師の状態に気がついたのか…

今度は、幼さの色濃い、きょとんとした表情を向けながら、心配するような声をかける。


その表情もまた、涼羽の可愛らしさを強調するものとなっている。


「!!……」


必死になって込み上がる衝動を無理やりにでも抑え込もうと、涼羽から視線を顔ごと逸らしてしまう。


「(な…なんという可愛らしさ…ここが…ここが学校じゃなく、誰もいない自分の部屋だったら!!)」


もう、目の前の可愛いの化身を抱き締めたくて…

思いっきり可愛がってあげたくなる衝動を必死で堪えている状態となっている。


これ以上、涼羽の可愛らしさを目の当たりにしていたら、とてもこの衝動を抑えられないと断言できてしまう。


「?先生?大丈夫ですか?」


明らかに様子のおかしい数学教師を前に、心配になった涼羽が、自分から逸らされたその顔を覗き込むように…

上目遣いで、不安げな表情で…

じっと見つめてくる。


「!!(こ、これ以上先生を惑わせないでくれ!!涼羽ちゃん!!そんなにも可愛い顔を見せられたら、先生は…先生は…)」


あまりにも可愛すぎる涼羽に対し…

今必死で堪えているものが、もうどうすることもできない状態にまで、なりつつある。


しかし、自分の本来の性質を何が何でも公の場に晒したくないがゆえに、その強靭な理性で、無理やりにその衝動をねじ伏せようとする。


「だ…大丈夫…先生は大丈夫だ…」

「え?でも…」

「大丈夫だから…高宮は自分の席に戻りなさい…」

「は、はい…」


自分から顔を逸らして、必死に何かを堪えているような姿では、説得力も何もないのだが…

それでも、当の本人が大丈夫だと言っている以上はどうしようもないので…

怪訝に思いながらも、自分の席に戻っていく涼羽。


「(ああ…涼羽ちゃんが可愛すぎて生きてるのがつらい…)」


すました表情の裏側では、可愛いの化身と言えるほどに可愛すぎる涼羽を思う存分堪能できたことで、表情にすれば非常にだらしないデレデレとした思いに、浸っている。


「(あいつ…俺らの可愛い高宮を独り占めしやがって…)」

「(どんだけいい思いしてんだよ一人で…何高宮に心配してもらってんだっつーの)」

「(くっそが…俺も高宮にあんな風に心配してもらいて〜…)」


そんな二人のやりとりを見せつけられて、すっかり涼羽のファンとなってしまっている男子生徒達は、当然面白くなくなってしまう。


ひたすら一人で、可愛すぎる涼羽を独り占めしていた数学教師に対して、嫉妬満開の悪感情を向けることとなってしまう。


「(あの問題、難しかったけど、その分すっごくやりがいがあったなあ…あの先生の授業、面白いなあ…)」


自分のことで周囲に多くの感情が蠢いていることなど、まるで気づくことなどなく…


常に自分にとってやりがいのある問題を出してくれる数学教師の授業を心から楽しんでいる涼羽なので、あった。

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